死後も生き続けるブログ
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たったひとつの記事にコメントが65,700件以上もついているブログがあります.最終更新日は,2008年12月5日.およそ2年も前に更新が途絶えたブログです.故飯島愛さんの「ポルノ・ホスピタル」の最後の投稿のタイトルは「凄い人だったよ」,内容は2行の短い文章と2枚の写真だけです.
図 故飯島愛さんのブログ・ページ
亡くなられた当時,当社の事務所が亡くなられた現場に近かったこともあり,当日のけたたましい報道関係のヘリコプターの音が今も思い出されます.
10月31日が飯島さんの誕生日ということもあり「誕生日おめでとう」のコメントが続きます.
コメントを更に遡って読み進むと,
「愛ちゃんに会いたいよ」
「あいちん。今日も見守っててね~!!」
など,まるで墓標に向かって呟いているような言葉が並びます.故人が多くの人の心の拠り所であることが伺えます.
コメントを書いた人同士の交流もあるようです.読んでいるだけで,とてもあたたかい気持ちになるのは,私だけではないでしょう.飯島さんのブログ投稿を読んでゆけば,いつでも生前の足跡をたどることもできます.遺族や関係者の方にとっても,ファンにとっても故人を偲ぶ貴重な場所(ページ)でしょう.
このブログは「Amebaブログ」で掲載されています.
「Amebaブログ」の利用規約を確認すると,第7条(退会)2項は,
「会員が死亡した場合」
会員の承諾を得ずに,弊社(サイバーエージェント)の裁量によりただちに当該会員を退会させることができるものとします.
と有ります.つまり,このブログはいつ閉鎖せれてもよい規約になっています.
そこで,いつまで公開し続けるのか,運営会社であるサイバーエージェントさんに問い合わせてみました.丁寧にお答え下さいました.回答は,以下のようでした.
◯質問「ブログ作者がなくなった場合,どのように対応されていますか?」
・一般の利用者の場合,生死の確認する術がないので,遺族からの閉鎖の要望がないかぎりは,そのまま公開し続けています.
・タレントさんの場合は,所属事務所と話しあって対応を決めています.
◯質問「どうして飯島さんのブログを公開し続けているのでしょうか?」
・飯島さんの場合は,当時既に事務所をお辞めになっていたので,遺族に相談をして対応を決めています.
・ご遺族の方から閉鎖の要望は頂戴していませんので,今のところ閉鎖の予定はありません.
◯質問「利用者が死亡することにより,閉鎖する/閉鎖しないでトラブルは起きていませんか?」
・このようなケースは年に2〜3件程度です.今のところ問題になったことはありません.
◯質問「生前に死後のブログの取扱ルールを設ける計画はありますか?」
・話題にのぼることはありますが,現状は具体的な計画はありません.
・但し,今後数十年という年月を考えれば,検討をしておくべき事柄だと認識しています.
といった内容でした.
国内のソーシャルメディアサービスでは,GREEがその利用規約において,第7条(退会)3項において
「ユーザーが死亡した時点でユーザーは本サービスを退会したものとし、生存中ユーザーが有していたグリーに対する権利および義務は当該ユーザーに一身専属に帰属し、相続されないものとします。」
としています.国内では死亡したユーザーのコンテンツをサービス運営会社が削除できる規約に定義することで,トラブルを避けることを思慮しているステイタスにありそうです.
米国のサービスでは運用段階に入っています.Facebookは昨年,死亡した利用者のアカウントを「Memorized Profile」という状態を用意しました.追悼アカウントと称する方もいらっしゃいます.このほか,ツイッターもポリシーを準備しています.faebookとの比較記事がcnetに掲載されています.参考ください.Facebookの「Memorized Profile」について紹介しましょう.その機能は以下のようなものです.
・故人の掲示板には,誰でもコメントを投稿できる.
・故人のアカウントへのログインは,誰もできなくなる.
・プロフィールの閲覧は,友人だけが可能になる.
・検索をして故人がヒットするのは,友人だけに限定される.
Memorized Profileの申込フォームをみてもましょう.
図 Memorized Profileの申込フォーム
内容は、memorialize機能の説明と注意書きの後,
・氏名やアカウント情報
・relationship of the person(故人との関係)
・requested action(memorializeかremoveかの選択希望)
・Proof of death(死亡の証明)
を記載すれば申請できるようです.
これらの機能を実現した経緯にはFacebookのCSO(Chief Security Officer)Max Kelly氏のブログに説明されています.親しい同僚が自転車事故でなくなったことがきっかけだそうです.親近者のアカウントの取り扱いをイメージして機能を検討しているだけあって,利用者の立場にたった設定がなされています.
しかし,まだまだ検討しなければならない厄介なポイントが残されています.例えば,
・申告者の信頼性
イタズラによる虚偽申告はもとより,ある友人が真面目に申告した場合でも、遺族や他の友人の間で意見の対立が生じるケースもあるでしょう.こんな面倒なことには,誰もが関与したくないと考えることでしょう.
・ユーザーの死亡の認定
サイバーエージェントの担当者の方も仰っていましたが,サービス運営会社には死亡を確認する術がありません.整備するには相応の開発コスト・運用コストが掛かることは間違いありません.誤って認定してしまったら,面倒なことになることも必定です.
・ページの運用方針
心ない人が遺族が不快に思うコメントや,故人を侮辱するコメント等を書き込んだ場合,誰がどのような判断基準で削除するのか決めておかなければなりません.本当のお墓であれば,墓守役の遺族の方が掃除もされるでしょう.同様な役割を担う人,あるいは組織を決めておく必要があります.
- <参考>
ソーシャルメディアの死後アカウントのマネージメントサービスを提供するlegacylocker.comでは,Sign Up時に,2名の承認者を登録します.登録時には両名に,承認者に選ばれた旨を伝える電子メールが配信されます.サービス会社は承認者両名が死亡を承認した場合に,死亡と認定することとしています.
故人のために,自発的に上の対応に取り組む遺族や友人がいるケースは圧倒的に少数だと思われます.このままの状況で放置しておけば,「無縁仏」ならぬ「無縁アカウント」が膨大に生まれることは必至です.問題を解決するには,ユーザーが生前に方針を表明する所謂「遺言」が欠かせないと思われます.
「遺言」には次のような項目を用意しておけば,良いのではないでしょうか.
■ソーシャルメディア・アカウントに関する「遺言」の内容
・死亡の承認者の指名
主治医や配偶者など近しい家族を指名する.複数名指名すれば,信頼性を高めることができます.
・墓守の指名
コメントの削除やコンテンツの追加(三周忌法要の様子を掲載する等)する権限やページ自体の閉鎖権限も与えておきます.
・利用しているソーシャルメディアとそのアカウント
これらのアカウントについて、削除/追悼アカウントなど,希望する位置づけを指定.
遺族がコンテンツをダウンロードすることの了解
ページを閲覧できる範囲などのアクセスコントロール設定
などの方針を決定しておきます.
遺言が効力を発揮するには,遺言自体の信ぴょう性を確保したり,サービス提供会社間の協調が不可欠です.
本物の遺言信託サービスを提供している弁護士や信託会社がサービスメニューのひとつとすることも,普及の後押しになるでしょう.
サービス提供会社においては,利用者のサービスレベル向上のひとつとして捉えるとともに,少数ですが限定された目的とはっきりとした指向性を持ったユーザーが確実に訪れるページ(コンテンツ)を獲得できる機会でもあります.
そのように捉えれていただければ,前向きに考えてもらえるようにも思えますが,いかがでしょうか?