Facebookで変わる署名活動
■松本 元復興相の暴言とソーシャルメディアの反応
松本 元復興相は,就任9日での退任となりました。原因は,配慮を欠いた発言です。元復興相のメディアに対する恫喝発言のせいか,一部のマスメディアを除き報道を躊躇したことを指摘している記事もあります。このような経緯もあり,マスメディアより早くに,ソーシャルメディア上で大変な話題となりました。2ch,Twitterなどでも,辞任を求める声が多数見られました。ソーシャルメディアごとに,この事件のことがどのように語られているかを,大雑把にまとめますと,次のようでした。
・2ch
勢いランキングでは,7/5 10:30現在でトップ10位までは全て,この話題でした。関連スレッドが乱立状態です。論調としては,発言に対する不快感や非常識さに対する反発に混じり,擁護する発言や茶化したものが混在しています。辞任会見以降は,少なからず擁護発言が増加。日本人の判官びいき的な側面が垣間見れました。
・youtube
宮城県知事との会談内容を伝えるニュース映像がたった2日で100万回を越えて再生されています。映像を見て,元復興相の高圧的な姿勢を実感できた方も少なくないでしょう。
図 問題となった対談映像
コメントも5,200件を超えています。総じて怒り・辞任を求めるのコメントが並びます。動画がテーマでの投稿ですので,話題が集中しやすい傾向が見て取れます。
・Twitter
topsyで調べると「asahi.com(朝日新聞社):松本復興相、岩手・宮城両知事にきわどい発言連発 - 政治」記事URLを含んだツイートが4,600件を越えています。元復興相を擁護し,宮城県知事の態度を批判した梶川ゆきこ民主党議員に関してのニュース記事URLを含むツイートが2,700件を超えたりしています。拡散力は健在です。また、関連しそうなキーワードで検索すると元復興相を擁護発言をするアカウントも僅かではありますが,確認出来ました。
実際の映像が何時でも確認できるyoutube,強力な伝播力を2ch,Twitterなどのソーシャルメディアも大いに威力を発揮しました。
この他にも,ブログサイトやニュースのまとめサイトなど膨大な量の生活者が発信した情報が飛び交いました。多くの方が,元復興相の発言を不快・非常識とすることに共感を抱いた証左でもあります。即座に退任を求める声も高まり,結果,スピード辞任に繋がりました。一人の声は小さいけれど,それを束ねれば大きな力に繋がることを実感することができた事件です。
■署名活動の限界
生活者個々人の意見をとりまとめ,世の中を変えてゆく手法に,署名活動があります。昔より,発起人組織メンバーが賛同者と対面で直筆署名の名簿を集める手法が定着しています。しかしその名簿には,人間関係やつきあいなどで,実はそれほど賛同していないのに,署名するケースもあるでしょう。
最近ではネット上で活動を支援するサービスもあります。署名TVは,これまでに1,000件を越える署名活動を受け付け,現在100万人を越える署名を集めています。最近では「ホリエモンの仮釈放を要求する署名」を9,000件近く集めています。「mixiの足あと撤回を願う署名」では13,000件を越える署名が集まっています。署名リストをみると,コメントも一緒に投稿できたり,投稿日時のタイムスタンプが一緒に管理できたりします。ネットならではの特徴あるリストが作成できます。しかし,残念ながら名前=「匿名」が過半数を占めているようです。
それぞれに,課題を内包しています。
■Facebookページを利用した追放キャンペーン
そんな中,Facebookページを活用して「松本龍復興相の悪態をFacebookパワーで拡散させよう!キャンペーン」を立ち上げられた方がいらっしゃいます。
図 立ち上がったFacebookページ
立ち上げてから僅か1日で1000人近い「いいね」が集まっています。サムネイル写真には,元復興相の顔写真と「暴言大臣 即刻追放」の赤い文字。wallを読めば,それぞれの記事を投稿した方の今回の事案に対する思い・意見がよく分かります。頼み込まれてお付き合いで署名した方々ではありません。積極的に賛同し,自らの意思で行動した方々です。しかも,本人の実名・プロフィールを明らかにした,「キャンペーンに賛同した署名者のリスト」です。このリストによれば,賛同者の過去の発言、友人関係なども追跡可能です。対面・肉筆の署名活動とは異なる説得力があります。投稿に対する「コメント」や「いいね!」も多く,インプレッション率やフィードバック率も相当の高水準であると思われます。今回の事案に強く共感したコミュニティが生まれています。実際,私も自分のwallで,複数の友人がいいね!を押しているメッセージを見て,このページを知ることになりました。
立ち上げられたメンバーのお一人,中島さんに経緯を伺いました。元復興相の悪態に嘆く,被災地在住の玉川さんのFacebook投稿がきっかけで,中島さんが元復興相へのネガティブ・キャンペーンを呼びかけたところ、Facebook上の友達の一人Niitsuさんが,自主的にFacebookページを立ち上げてくださったということです。中島さんは,玉川さん,Niitsuさんとも面識はありませんが,Facebook上では従来から交流し,信頼しあっていたそうです。このため,突然の提案にもかかわらず,スムーズに作業がすすみ,今回の行動に繋がったということです。
Facebook上で志を同じくした開設メンバーが,生み出したコミュニティ。一晩にして1,000人が賛同し,集い,意見を語り合っています。勿論,このページが決定的な影響を与えた訳ではありませんが,参加者の思いは受け入れられました。
個人的にも,Facebookは共感者を効果的に集める装置として国内でも機能することを、十分に実感できました。
尚,wallの情報を,本当に署名名簿として活用する場合には,コミュニティーに参加していただくときに,「参加いただいた場合には,あなたの情報も名簿として集約し,管轄省庁など関係部門に提出すること」について承諾を得ること必要になります。