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ケロロ軍曹に学ぶ企業Twitterアカウントの運用術

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■PSPシュタゲのアカウントが炎上

 先週末「PSPシュタゲ」のアカウントが,その発言がきっかけで削除に追い込まれる事件がありました。
 「シュタゲ」とは,『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)というゲームタイトルの通称です。最近のゲームランキングでも2位に入る人気タイトルです(ファミ通調べ)。このゲームは,Xbox360版が2009年,PC阪が2010年に販売開始されていましたが,この度PSP阪の販売が開始されました。販売元は,PSP版に限って角川書店。角川書店はシュタゲPSP版用のプロモーション用Twitterアカウント@psp_sg(以下,旧アカウントと記します)を用意しました。このアカウントでは,シュタインゲートに関してつぶやいているアカウントを自発的に見つけだして,メンション(非公式リツイート)を投げかける活動をしていました。そのメンションの内容は,次のようなものです。(@psp_sg(旧アカウント)からのツイートは「RT」以降のツイートを引用して、「RT」より前のコメントを追記して発信されています。)

まずはPSP版からお願いしまっす! RT @XXXXXX: iPhone、iPad、iPodでシュタゲかぁ、ぜひみんなやってほしいな〜 (・◡・)
iOSも楽しみですが、ネタバレされる前にまずPSP版をプレイするという選択も? RT @XXXXXX: 原作未プレイゆえ、シュタゲのiOS移植が本当に楽しみです。
GKならばまずは先週発売のPSP版を! RT @XXXXXX: シュタゲ、iPhone版が出るそうだね。これで360を買わずにすみそうだね。なにしろ僕は生粋のGK(注1)なのでね……!ふはは!痴漢も妊娠もホビロン(注2)!

など,PSP版以外を検討しているユーザーに対して,積極的にPSP阪の利用を提案しています。PSP版のプロモーション用アカウントですから,気持ちはよくわかります。しかし,次のツイートが決定打となり,炎上を引き起こしました。

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図 炎上を起こしたPSPシュタゲアカウント(旧アカウント)のツイート


 ツイート中「シュタゲ比翼恋理のダーリン」とはシュタゲのXbox360専用スピンオフ作品です。問題はこの一言

「ハードが微妙なせいではないかと」

 これは,Xbox360が微妙なハードであると言っているのと同じです。ネガティブキャンペーンとも捉えられます。実際,多くの人がそのように解釈したのでしょう。これまでの,あからさまなPSP版誘導もあって,シュタゲファンからは怒りのツイートが大量に発生しました。たちまち,2ちゃんねるでも大きな話題となりました。問い合わせは,Twitterアカウントの運用に関わっていない開発元の社長にも届きます。開発元の社長は事実関係を確認し,「角川書店に確認したところ,あくまでもPSP版に限定した視点から、つぶやいてくれるアカウント」であると,@sg_pspに慮る発言をします。
 一連の状況をうけて,直ちに@sg_psp(以下,旧アカウントと記します)は,謝罪ツイート共にアカウントを閉鎖されました。その後,新たに@ks_sg(以下,新アカウントと記します)というアカウントを立ち上げました。最初のツイートは,

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図 新たに作成されたシュタゲPSPアカウント(新アカウント)のツイート


 その後も,@ks_sg(新アカウント)からは開発元社長に気遣うツイートが続きます。その間,アカウントを削除しただけでは,シュタゲファンの怒りは収まらず,@ks_sg(新アカウント)に対しても,@sg_psp(旧アカウント)の発言に対する批判コメントがたくさん寄せられました。

■ケロロ軍曹が動いた

 このような状況の中,同じ角川書店のアカウント,ケロロプロジェクト広報アカウント(@keroro_PR,以下ケロロアカウント)が次のツイートを発信しました。

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図 ケロロアカウントのツイート


 このように,同じ会社の公式アカウントに対して,その対応を厳しく嗜める発言をメンション(オンライン上のすべての人が読むことができるツイート)でメッセージを伝えたました。この発言により潮目は代わり,沈静化に向かいます。
 発言には3つのメッセージが込められていると思います。

 まず、いやな思いをされている、すべての機種のユーザーさんに謝る事からではありませんか?  
    →製造元の社長のことを気遣っている新アカウントに対して,ユーザーに眼を向けるように軌道修正を求める。


もちろん簡単に許していただけるとは思いません
    →ユーザーの怒りが,この発言や謝罪だけで収まるものではないことを理解している謙虚な気持を伝える。


同じ公式として、残念ですよ
    →角川書店内部にも,今回のことを酷いと思っている者がいることをユーザーに伝える。


 通常であれば,当事者にこっそりと耳打ちして,内々に軌道修正したり,謝罪の方法を打合せたりすることが考えられます。しかしながら,ケロロアカウントは,それをしませんでした。ツイートしてネット上に発言を公開しました。ご本人に確認したわけではありませんが,恐らく自らの意思で,正しいと思うことを発言されたのではないでしょうか?少なくともガイドラインなどで,対応方法を事前に準備できる類の行動でありません。上長に承認を得て発言したものでもないでしょう。
 ユーザーの怒りは完全に収まった訳ではありませんが,その発言に対して「自浄作用がある組織」「ゲームユーザーの気持ちが解る方が社内にいる」といった好意的な発言・行動を賞賛する発言が相当数確認できました。

■HEROを活かすルールづくり

 今回のケースは,企業アカウントの運用準備に問題があったことは否めないでしょう。旧アカウント(@sg_psp)の担当者に,他社・他人を誹謗・中傷しないように指導し,実践状況を確認するルール(ガイドライン)が必要でした。そしてもうひとつ,企業として準備できることがあります。
 ケロロアカウント担当者の行動を支援することです。
 この行動がなければ,ネガティブな話題だけが拡散するなか,謝罪しながら,沈静化する時を待つだけだったでしょう。

ハーバードビジネスレビュー4月号の「ソーシャルメディアで武装する組織」には,このような行動を企業が制度としてバックアップすることが提案されています。

「権限を与えられ,問題解決に資源を持つ社員」を HERO(High Empowered Resourceful Operative)

と定義し,彼らが積極的に活動できる環境を用意することが大切であることを訴えています。オンライン上で,的確な判断と行動ができる社員に最大限の裁量を与え,会社がバックアップする制度(HERO契約)を用意することを提案しています。

HEROにもいろいろなタイプがあると考えられますが,例えば,

・ネット上で大勢の人とコミュニケーションを積極的にとっている。
・新しいサービスにも常に関心があり,実際に利用してみるリタラシーも実行力もある。
・困ったことを相談したら,惜しげもなく自らの知見をもとに丁寧に答えてくれる。

そんな人が,身の回りにいませんか?
あなたの会社のソーシャルメディア運営のキーマンになるかもしれません。

<ご参考>

ゲーム関連のCGMは,大変多くの俗称や隠語が使われます。ゲームに疎い私には,当初難解な文章を理解するのに,随分手間取りました。恐らく,私同様理解出来ない方も少なからずおられると思いますので,文中に出現した俗称について、補足しておきます。

(注1)GK:ソニー(SCE)社員の俗称。2ちゃんねるで主に使われている用語。転じてソニー(SCE)を狂信的に支持するユーザーの俗称としても使われている (はてなキーワード

(注2)ホビロン:「んとにっくりするほど論外(ろんがい)」の略(ニコニコ大百科

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