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話題のIT(主にソーシャルメディア)関連の記事を深掘りしてゆきます

リスク低減の観点でTwitterアカウントの運用を考える

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 2011年9月24日18時58分 読売オンラインに「馬淵氏、復興増税を容認…代表選での反対撤回」と題する記事が掲載されました。記事タイトルを読むと,「これまで復興増税に反対であった馬淵議員が変節した」と受け取れます。注目を浴びることが求められるニュースメディアでは,読者が関心を寄せる見出しをつける所業は世の習いです。その後,ご本人が変節を否定しています。その前後でのソーシャルメディア上での反応は象徴的でした。いわゆる,大炎上とまでは話題は広がりませんでしたが,発信源が明確な事例であるので,深彫りしてみました。

 時系列にイベントを整理すると以下のようになります。

・24日18時58分 読売オンラインが記事を投稿する
・24日19時08分 読売オンライン記事のURLを含む最初のツイートが投稿される
・24日22時49分 馬淵氏、本人アカウントから変節を否定するツイートを投稿する
・25日13時52分 馬淵氏、ブログで「持論は変わらず」記事を投稿する



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図 読売オンライン記事の引用件数・内訳の推移(topsy)

 図は,記事がTwitterで引用された件数の時間推移(約24時間)とその発言内容を仕分けしたグラフです。topsyで抽出した該当するURLが内容に記載されている207件のツイートを対象にしています。
図のとおり,読売オンラインの記事投稿直後19時台は、記事をそのままリツイートするケースが多いのですが,記事投稿から1時間を経過した20時台には,馬淵氏の変節を批判する意見を述べた記事が大勢を占めます。

民主党政調会長代理櫻井充「代表選で、野田総理を皆んなで選んだのだから、総理が増税と決断すれば、それに異を唱えるのは良くない。」という言葉に従順な馬淵?その程度の持論信念だったんですかね!

といった批判意見が多く見られます。
しかし,22時49分に馬淵氏が,次の変節を否定するツイートを発信することで,様相は様変わりします。

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図 馬淵氏の否定ツイート

 この発言を契機に,批判記事は減少傾向に転じ,逆に記事や読売新聞を批判するツイートが大幅に増加しています。とりわけ,元衆議院議員でエール大学助教授の齋藤淳氏が発言した、次のツイート

大手メディアによる誤報の一例。本人否定ツイート。 QT 馬淵元国交相が持論撤回、復興増税を容認 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110924-OYT1T00624.htm?from=tw via @yomiuri_online

は多くのバイラルを生み出していました。
 多くの人々の就寝時間となる25日1時ごろから,一旦沈静化します。そして,起床時間の午前7時台から再び話題は拡散し,学生・会社員が就学・始業時刻となる9時台には落ち着きます。
 その後,馬淵氏が本件に関するブログ記事を13時53分に投稿されました。読売オンラインの記事を引用するツイートの反応は薄いですが,ブログ記事は100件近いリツイートがなされています。これらのツイートには,馬淵氏に対してネガティブな意見はありません。逆に,応援するメッセージも多数確認できました。
 そして,記事配信から24時間経過した25日19時頃には,話題として取り上げられることも少なくなりました。

 2ちゃんねるの動きも、追ってみました。本件に関するスレッドは,私が確認できた範囲で2件立ちましたが,それほど話題は広がらず,現在に至っています。比較的活性化している方のスレッド

【民主党】 馬淵元国交相が持論撤回、復興増税を容認 「党は増税主張した野田首相を選んだ。受け入れざるを得ない」

での流れを見てみると,

・24日19時〜22時 馬淵氏に対するネガティブな意見が多数。100件/時間程度の投稿が継続
・24日23時〜25日1時 何度か本人が否定していることが投稿され,馬淵氏に対するネガティブ意見は若干減少するも100件/時間程度の投稿が継続
・25日1時〜 民主党に対する批判が主になり,10件/時間程度に大幅に減少。沈静化。

 現在は,スレッドタイトルとは余り関係なさそうな話題が,投稿さています。Twitterに比べ沈静するのが早く,ターゲットは馬淵氏から民主党に変わりましたが,終始批判的な発言が多いことが目につきます。また、本人否定後の矛先は読売新聞には,向かいませんでした。
 このような様子から,炎上時の対応に次のようなことに配慮すれば,リスクを低減することに役立と思われます。

・なるべく早期に当事者から謝罪・コメントを発する

 馬淵氏本人のTwitterアカウントでの否定発言は新聞記事投稿の4時間後,ブログでは19時間が経過しています。それぞれの後に,投稿者に対して好意的な発言が増大する,或いは否定的な発言が減少する傾向があります。大勢が疑問をいだいている1時間以内に否定ツイートができていれば,批判的な発言をより多く抑えられていたことでしょう。その間,記事タイトルが事実を歪めている旨の発言も見受けられましたが,大勢を変える力はありません。やはり,当事者が,しっかり発言することが大切です。Twitterは,ブログに比べ短文であるが故,文案の作成,推敲の時間などが大幅に圧縮でき,投稿までの準備が簡単で済みます。しかしながら,伝播するフォロワーがいなければ,効果は僅少となります。炎上対策のためにも,Twitterで多くのフォロワーを得ていることは効果的です。
 ちなみに,馬淵氏を非難したツイートの3割程度は,否定ツイート以降に削除されています。

・インフルエンサーの擁護発言を得る

 前出の斎藤氏の発言が,沈静化の助けになりました。斎藤氏のフォロワーは約12,500人。フォロワー数だけを比較すると,より多いアカウントは多数存在します。恐らく,氏のフォロワーには,その意見を聞きたいと考える「活性化している真のフォロワー」が多いのではないかと思われます。インフルエンス力を測定する指標Kloutスコアは73です。(Kloutについては、こちらの記事で紹介していますので参考ください。)
 しかし,いかに擁護発言を得たいとしても,所謂提灯記事を書いてもらっても,生活者は即座に見抜きます。意図的な誘導を画策するのではなく,常日頃から好意的なファンを増やし,良好な関係を醸成しておくことが大切です。

・朝7時より前に発信する

 Twitterでも2ちゃんねるでも,午前1時を過ぎると投稿が極端に減少します。そして,7時を境に,増大してゆきます。同じ話題も,この時間帯は一旦停滞します。このタイミングで,じっくり推敲したブログや謝罪文などの文章を投稿すれば,理解を得やすいと思われます。ブログ更新もこのタイミングまでに行えれば,よりリテンションが高まり,ファンを増やすことができたのではないでしょうか。なかなかつらい時間帯ですが,有事に対処できる準備と覚悟は持っておきたいものです。

 高知さんさんテレビが9/6 8:31から約2時間半番組が視聴できない放送事故を起こしました。相当な放送事故だと思われますが,少なくとも首都圏の一般生活者の間では,さしたる話題には,なりませんでした。高知さんさんテレビのツイッターアカウントでは視聴者からの指摘に対して,謝罪ツイートを発信したのが9:27と1時間後でした。また,視聴者からの「受信できなくなっていること、HPにも掲載してください。」というメッセージを受けて9:51にHP掲載を始めています。

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図 視聴者の指摘に反応する高知さんさんテレビのTwitterアカウント

本来,視聴者からの指摘で対処することではありませんが,Twitterの運営をしていなければ,もっと対処が遅れていたかもしれません。

最近、Twitterは「バカ発見機」などとも揶揄されますが,運用次第でリスク低減の手段としても大いに役立ちますね。



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ループスのFacebookページをリニューアルオープンしまし​た。


日本語の「ループス」も含めたページ名にしたこと、これまで未対​応だったチェックイン機能のスポットに対応したこと、主にこれら​2点を旧ページ「Looops」から改善しています。

この新ページ限定のコンテンツ・最新情報も発信していく予定です​。引き続き応援いただければと思います。
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