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【ソーシャルメディア運用インタビュー】ベルリッツ・ジャパン

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 昨年、楽天とファーストリテイリングが、社内公用語を英語にすると宣言しました。英語の公用語化には賛否な意見がありますが、多くのビジネスマンにとって、外国語習得は切実な課題となっています。実際、TOEICの受験者数は増加基調にあり、2010年には国内で170万人を超える人が受験しています。このような市場背景をうけ、英会話学校でも多様なニーズに応えるべく、様々な試みがなされています。その一校、ベルリッツ・ジャパンでは、ソーシャルメディアを積極的に活用し、ユニークなサービスを展開しています。

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図 ベルリッツの交通広告

 Facebookページでは、ビジネスに役立ちそうなイラスト付きの例文が、たくさん掲載されています。
 Twitterの公式アカウントでは、「例文」と「説明」が交互にツイートされています。時折、情報提供やフォロワーとの対話もなされており、英会話を学ぶ方にとって、ためになるサービスが提供されています。このようにソーシャルメディアを積極的に活用されているベルリッツさんの運営担当者(いわゆる「中の人」)にインタビューをさせていただきました。運営実態等をお伺いしましたので、その内容をご紹介したいと思います。

 尚、当社(ループス・コミュニケーションズ)はベルリッツさんのソーシャルメディア運用に関するコンサルテーションサービスを提供させていただいております。

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■ベルリッツのソーシャルメディア活用状況(2011/5/19現在)

・Twitterアカウント(@Berliz_Japan) 2010/10開始 フォロワー数 2,184名
・Facebookページ(BerlitzJapan) 2010/12開始 ファン数 1,710名


■インタビュー先
  マーケテイング部 井幡貴司さん
  マーケティング部 鈴木伸明さん

■インタビュー内容(以下、敬称略)

Q:ベルリッツの事業環境について教えてください。

鈴木:
 英会話スクールというイメージが強い弊社ですが、ここ数年は「語学」の領域だけに留まらず、「グローバルに活躍できる人材を育成する」という視点での事業拡大を進めています。昨年、楽天やファーストリテイリングなど日本のトップ企業が英語の社内公用語化を打ち出しました。その背景には企業戦略としてのグローバル化があります。ビジネス英会話へのニーズの高まりは勿論、そういったグローバルビジネスを成功させるためのスキルにもますます注目が集まっている状況です。

Q:ソーシャルメディアを運用するきっかけを教えてください。

鈴木:
 当社のサービスは、ネットが普及する前から、クチコミによって広がってきた経緯がありますので、その重要性はもともと認識していました。また、これまでベルリッツでは30~40代のビジネスパーソンがメインのお客様でしたが、企業のグローバル化の流れの中で、大学生や若いビジネスパーソンの方にも必須スキルとして語学が必要になっています。ソーシャルメディアはそういった方々へ認知を広げるためにもよいと考えました。
そのような背景の中、2010年秋から「ちゃんとした英語を。仕事ですから。」という新しい広告メッセージを開発しました。交通広告メインで展開を開始しましたが、ネット上のリテンションを向上させることも不可欠でした。急速に普及したソーシャルメディアの効果的な活用を検討するなか、先ずは利用者の急増しているTwitterを活用することにしました。


Q:Twitterでは、どのようなコンテンツを提供されましたか?
鈴木:
 「ちゃんとした英語を。」と謳っているからには、「ちゃんとした英語を学べる」ことを訴求することにしました。先ずは、誤った表現のある英語を例題としてWEBサイト上に載せ、その間違いをTwitterでつぶやいてもらうことで認知を広げることを試みました。しかし、ソーシャルメディアへの最初のトライアルということもあり、なかなか思うようにはならず、フォロワーも300人程度にしかなりませんでした。問題自体が難しかったのだと思います。
 現在は、主に「例文」と「説明」をツイートするようにしています。これは、当社が従来よりメールマガジンで提供している無料コンテンツWordMaster(R)(ビジネスや日常会話で使えるフレーズ・例文を紹介するサービス)を活用しています。FacebookのWallでも同じコンテンツをベースに展開しています。

Q:サービスを開始して変わったことはありますか?

井幡:
 TwitterやFacebookを始めることで、それぞれのフォロワー、ファンが増える代わりに、Word Master(R)のメールマガジン会員が離脱するのではないかと考えていました。しかし実際には、メールマガジン会員自体も増加しました。また、交通広告とFacebookページを連携することで、それぞれの魅力を一層アピールできた思います。複数のメディアを連携させながら活用することで、相乗効果が得られたように思います。
 リテンションの向上だけでなく、運用面でも効果がありました。東日本大震災直後に開講時間の変更等をTwitterで配信することで、迅速にその内容をお客様にお伝えすることが出来ました。Twitterの公式アカウントを運用していなければ、連絡により多くの時間と手間を要していたと思います。


Q:現在の運用体制を教えてください。
井幡:
 私とスタッフ2名の合計3名で運用しています。基本的に、スタッフ2名が投稿をして、私(井幡)がフォローする体制です。スタッフ2名のうち、1人は「Twitterなどソーシャルメディアをよく使っていた」者で、もう1人は「英語教材(WordMaster(R))の校正を担当していた、テキストライティングのスキルがある」者です。それそれ、ソーシャルメディアの運用業務に適した経験を持っています。

Q:運用していて困ったこと、気づいたことがあれば教えてください

井幡:
 ソーシャルメディアの運用は、初めてのことなので、炎上のことや困った質問など、随分と心配しました。このため、ガイドラインなど様々な応酬話法を想定して運用開始に臨みました。いざスタートすると、それほど問題は起きませんでした。スタッフも最初は心配しながら運用していましたが、今はよい意味で楽しむこともできるようになってきてます。また、ユーザー目線で違和感のないように調整してます。

Q:どのようなことに気をつけて運営してますか?

井幡:
 英語を勉強したいと志をお持ちの方にはモチベーションを挙げ、苦労している人、挫折しそうな人には励ましのメッセージを伝えられるような発信を心がけています。常にユーザーとのつながりを保つことを念頭に置いています。今すぐにベルリッツのお客様になっていただかなくとも、英語力の強化が必要になったときに、ベルリッツを思い出して、選んでもらえるような関係を築きたいと考えています。 対話については、教室のカウンセラーとお客様のような関係性を想定するように心がけています。

Q:アクティブサポートも実践されていますね?

井幡:
 はい。「ベルリッツ」についてつぶやかれている方や、英語学習で悩んでいる方に、コンタクトしています。この場合、あまりガイドラインには縛られず、ひと対ひとのコミュニケーションを大切にするように心がけています。

Q:他部門との連携によって問題を解決したケースはありますか?

井幡:
 Twitterで「(ある教室で)授業中、隣の音がうるさかった」といったつぶやきを見つけたので、関係する教室に連絡しました。教室側はその状況からお客様を特定できたので、個別に状況の確認や謝罪対応をすることができました。ツイートがなければ、きっと、お客様には不満が残り、運営上の課題も気づかなかったと思います。

Q:運用しての効果は計測されていますか?

鈴木:
 まずは、Twitterならフォロワー数、Facebookならファン数をチェックしていますが、KPIを決めきれていないのが現状です。それらを増やすこと自体が目的ではないと考えているためです。
ツイート内容などをチェックしていると、Twitterがきっかけで教室まで足を運んでくれた方も確認できました。定性的な情報になりますが、「良い方向に向かっている」ことをしっかり記録し、それを活かしていくことを心がけています。

Q:経営層のソーシャルメディアに関する理解はありますか?

井幡:
 はい。社長から私に直接状況を確認されることも珍しくありません。余談ですが、2010年11月に会長がテレビ東京の番組「カンブリア宮殿」に出演したときは、かなりバイラルしたり、ネット上で取り上げられたりしました。ホームページも過去最高のアクセスを記録しました。マスメディアとソーシャルメディアの連携による情報伝播の凄まじさを目の当たりにしました。経営層も、その反応について強い関心を持っていました。

Q:Twitter,Facebook以外のソーシャルメディアの活用展開の予定はありますか?

鈴木:
 各教室のユニークな教師をアピールできるブログは面白いと思います。Ustreamなども可能性があると思います。

Q:今後ソーシャルメディアを展開してゆきたいビジネスプロセスがあれば教えてください。

井幡:
 将来的には各教室のカウンセラーと生徒のコミュニケーション促進に使っていきたいですね。そのためには課題としてマーケティング主導でおこなっているソーシャルメディアの活用を各教室のカウンセラーにも推進できれば、お客様との接点が増え、更にソーシャルメディアをうまく活用していけるのではないかと考えています。

Q:Facebookは海外の利用者が圧倒的に多いのですが、国外での展開は考えられていますか?

鈴木:
 考えていきたいですね。ベルリッツは世界に約70カ国に展開しています。既に130年以上の歴史があり、ベルリッツの受講生、卒業生の方は全世界にたくさんいらっしゃいます。そういった方々はグローバルに活躍する経験やノウハウを持っている方が多いのが特徴です。
 このグローバルネットワークを活用したサービスを提供したいです。例えば、現地にしかない情報をクチコミ提供することが考えられます。
「出張前の人が、出張先の情報を知りたいときに、FacebookのWallに質問を投げ込むと現地の人が答えてくれる。」
そのようなサービスも、当社のヒューマンネットワークをもとに、Facebookを活用すれば十分できると思います。

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インタビューに応じてくださった井幡さん(左)と鈴木さん(右)

■インタビューを終えての感想

 時折冗談を交えて、大変楽しいインタビューができました。インタビューの後、ツイートを読み返せば、お二人の人柄がにじみ出ていることが実感できました。また、既存のコンテンツを効果的にソーシャル化してゆくアプローチはユニークだと思います。とはいえ、ソーシャルメディア活用は、まだまだ緒についたばかりです。今後のサービス展開が楽しみです。

※ 2011/5/24 交通広告のキャプチャ画像及び、それに関連する文章を変更しました。

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