未来のCIOはどこから来るのか
ルドルフ・ジュリアーニ氏が初めてニューヨーク市長となり、運営担当副市長(企業のCOOに相当か?)を任命するときの話。市の運営に通じたポール・クロッティでなく、自分のビジョンを理解している(が市政の経験には乏しい)ピーター・パワーズを起用した理由を述べて曰く、
市政の知識がありすぎたら、新しい方法を模索する創造性が発揮できないと、わたしは確信していた。豊富な知識が重要になるのは、方針が定まって実行に移されるときなのだ。
― ルドルフ・ジュリアーニ 『リーダーシップ』 p135
ジュリアーニ氏は法曹界から政治家に転じた方。それなのに最初から政治家らしい発想を発揮していたことにハッとしました。また著者本人をはじめ、大胆なキャリアチェンジをしていく人が随所に登場します。足場を固めなきゃなあと考えていた僕に、いやいやまだいけると思わせてしまう、危険な本でもありました。
政治家と官僚。CEOとCOO。ジェネラリストとスペシャリスト。ITの世界では前者、言ってみれば「ITジェネラリスト」とでもいうべき役割が育ちにくいような印象を持っています。Gartnerは、ITプロフェッショナルよ"Versatilist"(バーサタイリスト。多能職と訳しておきます)たれと、一見無理難題を言っていますが、これはITスペシャリストに対して「ITジェネラリストを目指してよ!」というラブコールであると理解しています(詳しくはG社の1000ドルのレポート数本を参照のこと。ちなみに僕は未読)。
…ただ『プロダクトマネジャーの教科書』を読んで以来、未来のITジェネラリストは従来のパス(「下流」から「上流」へという、例のアレ)の外から来るのかもしれないなあ、とも思っています。職務定義がVersatile化するのはITの人だけではなさそうだ、ということをこの本で実感したからです。
IT担当の経営幹部に求められるのはITの知識ではなくITマネジメント。アウトソーシングが進むにつれ、ますますそうなる。そこで出てくるのが、鍛え抜かれたジェネラリスト。こういう人たちが勢い余って(?)企業の情報通信システムのマネジメントに通じて、CIOとなる。うん、ありそうな気がする。
(参考)
「なぜ、専門性だけでは十分でないのか」 - 自分戦略を考えるヒント
『プロダクトマネジャーの教科書』 - NextBook書評
"Gartner Says Technical Aptitude No Longer Enough To Secure Future for IT Professionals"