自分も顧客も、同じ速度で歳をとっている
我ながらおめでたいことに、自分で書いた文章にハッとすることがあります。今日ハッとしたのは、午前中に書いていたコラムの中で(自分の頭から)出てきた、
自分も顧客も、同じ速度で歳をとっている
という言葉。
オーナーが自分の着たい服をデザインしている、Aという服屋さんがあって、
年々趣味が変わっていくのが面白いなと思っていました。
普通のブランドは、ターゲット層(と、その層に対してのポジショニング)を特定したら、
それを動かしません。リーバイスのジーンズは常に若者のヒップにこそフィットするように作られます。
顧客の変化に追随することはあります。また反例もありましょうが、
だいたいブランドを作り・維持するためにはターゲットの特定が必要です。
しかしAは、顧客の変化に対応するのではなく、
ただただ来たい服をデザインし、
店に並べ続けた(←この辺はかなり想像で補っています)。
Aのやり方は逆です。
常に、少しずつ変わっていく。
しかも顧客の変化にぴったりと合った速さで。
それなのに、顧客を追い掛けているわけでもありません。なぜそれが可能なのか。当たり前ですが、
「自分も顧客も、同じ速度で歳をとっている」
から。顧客にしてみれば、ブランドを乗り換える必要がない。
オーナーが、常に同世代の感性でデザインしてくれた服が、そこにある。商品のテイストが変化してしまったことをもって
「一貫性を失ってしまい、もったいない」
と感じたわけですが、実は見事な一貫性があったわけです。
オーナーの人生の歩みがそのままブランドである、と言ってもいい。自分が欲しい製品・サービスを発想する。
自分が属するセグメントを、ターゲット顧客に据える。
Aにもまた、「ありのまま」の強さを見た気がしました。(『ありのままを貫くという、企まざる戦略』から)
「それは個人事業だからできる話」
「B2Bでは関係ない」
と評してしまうには惜しい教訓があると感じました。
法人(というか企業)にもライフステージがあります。
顧客にも、自身にも。