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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

スマートデバイスの活用による現場主義への原点回帰

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 ワークスタイル変革の実現手法のひとつにスマートデバイスの導入と活用がある。通信機能とカメラを兼ね備えたスマートデバイスをデスクの近くから持ちだして、本当の現場に持ち込むことでワークスタイル変革を実現した好事例がどんどん増えている。

 工事の現場では既に図面をタブレットで現場に持ちだすだけでなく、施工結果をタブレットで撮影して報告書の雛形に自動的に埋め込んでいき事務所に戻った時点でもうあらかた報告書が出来上がるといった、一連の業務の中にスマートデバイスをそのまま組み込んだ事例が多くの建設会社からでている。
 面白いと思ったのはこの夏に清水建設が菱友システムズと発表した「画像モニタリングシステム」だ。現場でタブレットの撮影機能を使用してコンクリートの画像を撮影して送ると、別の場所にいる専門技術者が画像をチェックしてひび割れや剥落等の変状を点検するというもの。不足する熟練技術者の課題を解決するとともに移動という無駄なコストを削減できる一石二鳥のアイデアだ。

 他にも、小売店の店頭。店頭のディスプレイの出来・不出来は売り上げに直結する大切な要素であるが、こうした店頭ディスプレイ(VMD)の手本を本部から画像で店頭に送った場合、従来はバックヤードのPCで見て(あるいは印刷して)その後に店頭で作業を行うしかなかった。これをタブレットなどの端末を直接その場へ持ち込んで作業ができるようにし、さらにはそこで作成したVMDをそのまま端末で写真を撮って本部へ報告するようにして、一連の作業をその場で完結した事例がある。また、タブレットやスマートフォンの携帯性を生かして、検品の際にB品と言われる不良品を発見した場合、そのまま写真を撮って本部や他の店舗へ報告・共有するという活用法もある。尚この際には、端末のバーコード読み取り機能を使って商品名や型番を自動で読み取るようにして、入力の手間を省くとともにコード番号の誤入力も防ぐという、一石二鳥三鳥を狙うこともできる。

 介護や看護の現場でも傷の具合を写真で送るという使い方だけでなく、手が離せない作業を行っているときに端末の音声認識や録音機能を使って記録を取るといった使い方へと発展している。

 事務や企画といったホワイトカラーと違って現場で実際に作業を行うような職種の場合、実はこれまでPCの利用はある意味現場の効率化の敵だった。店長がバックヤードのPCの前に籠ってメールの処理に追われて接客や店員教育ができなくなるとか、現場監督が事務所に戻って膨大な事務作業に追われるという嘆きは、担当者側からも経営者側からも訪問の際に毎度毎度に聞かされたものだ。

 タブレットのような大画面でカメラと通信機能を持ったタッチパネルや音声でも操作できる高性能端末は、こうした現場で確かにPCを補完し置き換えていくだろう。そしてそれは、店長や現場監督がもう一度現場に立ち戻る良い機会になるはずだ。

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