最も仕事の効率が上がるのはやはり職場である
何度か書いているが、このところワークスタイル変革の相談をうけることが増えてきている。私の専門とするグループウェアやポータル、検索、モバイルといったITを活用して社員の働き方を変えようという試みだ。これらには、ワークライフバランスやダイバーシティといった社会的要請への対応という面もあって、大企業だけでなくベンチャー企業や官公庁でもワークスタイル変革への取り込みが増えている。
さてワークスタイル変革というと、もっぱら働く場所と時間について融通性をもたせるフレシキブルワークスタイルのことばかりに注目が行きがちである。具体的には、在宅勤務やサテライトオフィス、外出先でのモバイルワークといったワークスタイルの導入こそがワークスタイル変革の目的でありゴールだという誤解である。これは、働く場所と時間の融通性が目に見えやすく説明もしやすいことからくる誤解であるが、本来ワークスタイル変革の目的やゴールは、生産性向上や従業員満足度の向上に設定されるべきであり在宅勤務やモバイルワークはその手段に過ぎないはずである。
実は職場環境の融通性については従業員の生産性向上には繋がらないという専門家の意見も以前ネットで流れたことがある。実際に米国ヤフーでは、CEOが在宅勤務禁止令を発令している。また従業員満足度の面でも、フレシキブルワークスタイルを導入した場合、対象となる従業員はともかく対象外の従業員の満足度が逆に低下してしまったという事例もある。(過去記事:「在宅勤務導入時には電話の取次ぎ対応が重要」参照)
私自身も経験上、自宅やモバイルでの作業は職場でのそれよりも生産性が低いと感じている。自宅の作業では、子供など家族から作業の邪魔は入るし仕事以外の誘惑も多い。モバイルワークでは、必要な資料や情報へのアクセスが不十分で使えるIT機器の性能も貧弱なため、結局仕上げは職場で、ということにな事が多い。いやもちろん、ひらめきの発露や緊急事態への対応、会議記録の作成や打合せ時の顧客からの相談への対応など、職場以外で処理したほうが効率的な仕事もある。ただ、一般的にはそれらは本来の仕事量全体からすると一部であり、やはり大半の仕事は職場で行う方が効率的である。実際、職場というものは、長い歴史をかけて仕事をする為に最適化され続けてきた空間なわけで、それよりも効率的な空間というのはそうは無いと思うのだ。
さて、そんなことを思う私が先週参加したセミナーで、サイボウズの野水さんがウルトラワークという制度を紹介してくれた。野水さんも私と同じく仕事の効率が最も高いのはオフィスと断ったうえで、サイボウズのウルトラワークスタイルという制度では、「仕事をやる場所」「仕事をやる時間」について各個人の選択制とて、その選択にあわせて報酬を変えるという答えのひとつを提示してくれた。これにより、会社に来ない、短い時間しか仕事をしないという各個人の選択肢に対しての他の社員から不満が減るという。大変に面白く、そしてとても現代的で有意義な制度だと思う。
サイボウズではこれ以外にも様々な取り組みによって「100人いたら100通りの働き方」の実現を目指しているそうだ。セミナーの最後の方では、これらの取り組みによって実際に効果が上がりすぎて従業員の離職率が激減して社員が辞めなくなったというボヤキが出るほどに、サイボウズの従業員満足度は高いそうだ。