インターネットの利用料金体系が変りそうだ
総務省が発表した「インターネット政策懇談会」の最終報告書を読んでみた。この懇談会は、ネットワーク構造や市場環境が大きく変化する中で、インターネットの健全な発展を図るための政策課題を抽出・整理し、今後の政策の方向性を整理することを目的としたものだ。
報告書の前半は我が国におけるインターネットの歴史や特徴などを整理したものだが、後半部分では現在の我が国のインターネットの抱える6つの課題と解決策が提示されていた。けっこう長いので6つの内容を私のほうで適当に要約すると
(1) サービス提供者の提供拠点の国内への誘導
検索エンジンを始め現在海外拠点から国内に向けて提供されているサービスを国内へ誘導する。
これらを国内に誘導できれば国内のネットワーク事業者がより多くの通信料をサービス提供者から受け取れるようになる可能性がある。
(2) サービス停止時に提供主体がとるべき対応を含む契約関係の在り方の検討及び明確化
インターネット上のサービスでは利用者による契約条件確認が曖昧なまま利用開始してしまう例が多い。そしてサービスの停止などが提供者側の都合で突然にされることもある。
こうしたサービス提供が停止されたとしても大きな社会的影響が生じないよう、契約条件の明示方法を整備したり、サービス提供者がサービス停止時に備えて取っておくべき対応などを含む契約関係の在り方について整備を行う。
(3) サービス提供主体の明確化
マッシュアップ等によって一つの画面上で複数のサービス提供者が提供するサービスをあたかも一体のサービスであるかのように組み合わせて見せる形態が発達した。これは利用者にとってサービスの提供主体が誰であるのか、自分の行動が誰に把握されているのかが分かりにくいという側面をもつ。
サービスAPIや端末APIに係る情報の公開や標準化の推進、サービス提供者による個人の属性情報の取得・提供・利用等についての検討を進める。
(4) トラヒック増加への対応
我が国のインターネット上の推計トラヒックはこの3年間で約2倍の伸びを示すほどに急激に増加している。トラヒックの急増への対策として、高速大容量化技術の開発に努める一方で、それ以外の新しい技術やシステムの導入を促進する。
トラヒックの地理的な集中を緩和させる方策(トラヒックの東京一極集中の緩和)として
① ネットワークの位置情報の活用によるP2P アプリケーションの高度化
② インターネットエクスチェンジとインターネットデータセンターやいわゆるキャッシュサーバの一体的な地方展開
③ ネットワークの混雑度に応じて動作するトラヒック感応型P2P
④ オフピーク時に利用者に情報を配達しておくプッシュ型配信
⑤ オフピーク時に情報を事前ダウンロードするシステム 等
トラヒック増加及び利用者間の負担の公平化の観点から、ISP における料金体系の多様化とした以下のような案を検討していく
・利用者向けの一定期間内での最大通信量に応じた料金体系
・定額制+従量制
・(帯域制御の可能性のある)「定額制」+(割高だがその可能性のない)「プレミアム定額制」 等
・ 時間帯別料金体系(ピーク時の利用に割高の料金を設定)
・コンテンツプロバイダー等について、トランジットへの時間帯別料金体系 等
(5) インターネットのIPv6 化への対応
2011 年の初頭までにIPv6 によるサービスの提供の開始が可能となる環境を整備するためについて官民一体となった取組を行う。
特にNGNの問題については報告書はかなりのページを割いて解説をしているがこの件についてはこちらの記事のほうが面白い「インターネットに接続できないNGNっていったい・・・」
(6) 固定ネットワークやモバイル・ネットワークの競合・連携関係に関する更なる検討
固定ネットワークとモバイル・ネットワークの有機的な連携を促進する方策を検討する。
という感じだ。(1)や(5)についてはインターネットを利用するユーザにはあまり影響はないと思う。(2)はユーザ保護という面で嬉しい話。(3)は微妙だけど例えばブログにブログパーツを組み込む事もマッシュアップにあたるから発信時の注意事項といった面でユーザにもいくらか影響がありそうだ。
そして(4)や(6)はネット利用に関する料金体系が今後変化する可能性を示唆している。従量課金が導入されたり固定通信とモバイルのセット契約みたいなものが試される可能性があるということだ。
これからしばらくのあいだインターネット関係で取られる施策はこの懇談会の報告書に盛り込まれた内容にそうと思われる。この報告書の素案が年末年始に提示された時には、主にISP業者からパブリックコメントが寄せられ個人からは少なかったようだが、ユーザサイドとしても意識はしておいたほうが良さそうだ。