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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

コンペ形式が優勝劣敗の社会を呼ぶ

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 格差社会が話題になって久しい。そしてこの流れが、我々情報サービス業界にも押し寄せていることを強く感じる。なんとなく強い会社がますます強く、弱い会社はどんどんそのポジションを落として言っているように感じるのだ。

 この原因のひとつに、企業のシステム調達のやり方が変わってきたことの影響があると思う。一昔前と違って、システムの調達時にコンペ形式をとったり必ず合い見積もりをとる会社がこのところ増えている。ユーザ側としては、コストを下げるという目的だけでなくよりオープンで分かりやすい調達を目指すと言うことでこういう方式をとるようだ。複数の選択肢を比較するというやり方は、良い方法として異論は無い。

※但し、コンペにあたって安易に比較表を作成するのは要注意だ。この安易な比較表作成への警鐘については、ITmediaエグゼクティブで私の主催するクローズド・コミュニティ「情報系システムのあるべき姿を考える」に書いたので興味がある方は是非参照いただきたい。

 さて以前どこかで読んだコラムにあった内容なのだが、こうしたコンペや合い見積もり形式は格差を助長する要因だといわれる。なぜならコンペ形式になった場合、比較対象の選択肢には数値的評価が与えられ、基本的にはその中で最も高得点を得たものが採用される。この結果、例えば数値的評価が51対49であっても、最終的な受注額100は51点を取ったベンダー側の総取りとなる。したがってもしこの数値評価が必ず正しく採点されるとすると、たった2点上回っているベンダーが、ほとんど全ての調達で勝利することになる。実際には評価項目は調達ごとに変化するので全勝とまでは行かないまでも、実力差はほんのちょっとなのに受注や売上の金額に大差がつきやすくなるのである。
 
 以前の日本で多かった系列や過去の取引実績だけを参考にしていた調達では、このようなちょっとした実力差で結果に大きな差が出にくかった。多少実力で劣っていても系列ということで受注が獲得でき、その後でライバルを研究することで実力差を埋める努力ができた。こうして実力差を縮めれば、次の調達では若干実力が落ちていても過去の取引の経緯ということで再受注を獲得。こういう環境下であれば、実力が51対49であれば、シェアも概ねそれに近い数字に収束しそうだ。

 最近の情報サービス業界をみると、まさに得意な分野はどんどん勝てるが苦手な分野ではさっぱりという傾向がどんどん強まっているように感じるのだ。ベンダーには厳しい時代になったということだ。でも逆に言えば、本当に優れていれば製品やサービスがどんどん採用されるチャンスの多い時代だともいえる。

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