企業内人力検索・Q&Aコミュニティ について(2)
前回の続き。
Q&Aコミュニティの導入を薦める際に顧客からよく問われる質問にはパターンがある。その中で最初に出る質問が、
- 質問が出ますか?
- 質問に回答を書き込みますか?
という質問である。
実際に質問が出ないケース、あるいは質問が出なくなるという失敗事例は時々ある。Q&Aコミュニティの導入の最初の段階でユーザにはシステムの操作方法の簡単な説明だけを行い、まっさらのシステムを用意しただけケースでは、ほとんど質問が出なかった。後でこの理由をアンケートやヒアリングで聞いたところ回答の中に「どんな質問をすればよいのかがわからなかった」「質問しようと思ったがここでそんなことを聞いてよいか不安になった」というものが含まれていた。
このような初期利用時の意識の壁を乗り越えさせる手段としては、使い古された手だがやはり導入前にあらかじめサンプル的にいくつかの質問と回答を用意しておくことやしばらくは"さくら”を使って質問を恣意的に発生させる方法が有効だ。
また最初は質問が出ていたのにもかかわらず徐々に質問が出なくなったある会社では、利用に伴い「Q&Aシステムで質問することは皆の前で自分が知識が無いことを公にする恥ずかしい行為」という雰囲気ができ、最終的には「Q&Aシステムを使う人は仕事ができない人」というレッテルが貼られるようになって衰退したそうである。
これは導入前にきちんとシステムの意義や狙いを説明しなかったことと、Q&A利用者に組織としてのお墨付きやインセンティブを与えなかったことによる。こちらの対応策は初期段階で役員などが積極的に業務に直接関係の無い質問をしたり、質問と回答のやり取りに対してきちんと評価をするといいった施策になる。他にもシステム面で質問者は名前を表示しない匿名にし回答者のみを実名とするという方法もある。
さて、質問に対して実際に回答がきちんと出るのかという疑問だが、前回にも書いたように案外と回答は出るものだ。やはり実際に困っている人を助けようというのは人間の本能に近いものがあり、同じ釜の飯を食う人間として無視をするというような人は少ない。自分が答えられないまでもヒントを与えるなどの回答を寄せる人は案外多く、我々の経験から言っても質問に対する回答率が7割とか8割以上になることは多い。
ただしこれも若干場の雰囲気に作用される要素があり、回答率が5割をきると皆が「回答しなくても良いのだ」のような怠け癖というかフリーライダー的が意識出てくる。したがって事務局は回答が出ない場合には自らの人脈で回答者を捜し、内線電話などで回答してくれるように要請するというフォローを行う必要がある。
あと我々が運用面まで踏み込んで支援した例であった実話であるが、
- くだらない質問やレベルの低い質問が出たらどうするか
というのが難しい。このくだらない質問が出たときの対応は大切である。そのままにしておくと例の「質問しているやつは無能」というムードが台頭するし、削除してしまうと「気楽な質問をしてはいけないのだ」という敷居が高くなってしまうからだ。我々はこうした場合には、「くだらない質問をするのはたいてい新人などの若い人です。その場合は、そのちょっと先輩の2~3年目に回答をさせてください」とアドバイスしている。
誰だって若いときには、だれもが知っているようなことを先輩に聞いた経験はあるはずである。その時の思いをまだ忘れていない世代が回答するのが適切だ。回答をするというのは、自分の頭の中にある知識を体系化して説明するということであり、この面でも2~3年目に回答をさせることは訓練として意義がある。案外と幹部には、くだらない当たり前だと思うような質問が実は現場では誰もそれに正確に答えられなかったという笑えない例もあるから、くだらない質問やレベルの低い質問を馬鹿にしてはいけない。
さてQ&Aコミュニティの導入時によく聞かれるもう一方の質問に、
- 質問が出すぎてその対応に忙殺されることになりませんか?
というのもある。私の経験から言ってこうなったことは、まだ一度もない。ちなみに質問が出すぎるという状態は、多分組織としては非常に危うい状態で、それは社内においてマニュアルや補足説明用の文書の整備が不充分であることを示す。もし瞬間的にも質問が爆発するほど出たのならば、早急にマニュアルの整備を行ったほうが良い。
- 社内Q&Aコミュニティの質問と回答の数が少なすぎて盛り上がらないのですが?
という質問もある。社内Q&Aコミュニティで交わされるQ&Aの数はどれくらいが適度かというのに明確な答えは無いが、私の経験から言うと多い場合で1日に2~3個、少ない場合で1週間に数個程度のQ&Aに収斂するケースが多くまさにこのあたりで落ち着くのがちょうど良いと思っている。