「成長」「生産性」「個性」「シンプルさ」が肝、人間らしいリーダーシップ
この6月は様々な国際団体の年次総会や、リーダーシップイベントが続いている。先日はMedia Lab Summer Camp 2021で敬愛するMITメディアラボ教授、副所長 石井裕 氏のメッセージ「出杭力」「道程力」「造山力」に心が洗われた。昨日は、筆者がIABC日本支部理事ならびにIABC APAC地域本部メンバーシップマーケティング局長に就任したばかりのIABC APAC年次総会があり、倫理規定の強化や、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の啓発強化、2025年までの組織戦略骨子などについて議論した。同時に、ロンドンの Management Today's Leadership Lessonsのバーチャルイベントにも招待されて、様々な出会いにワクワクしている。明日には自身が登壇する「新D&I広報入門」講座も控えている。
この四半世紀ほど日本、アメリカ、アジア、ヨーロッパのIT企業とPR、ビジネスコミュニケーションの仕事をしていると、国ごとの違いと共通点、その両方が個性を成していて面白い。そこで、IT企業経営のベテランであり人生の先輩でもあるヴィ―ム・ソフトウェア株式会社執行役員社長古舘正清氏と、今年2月にVeeamのAPJ(アジア太平洋および日本)
開口一番「人生山あり谷あり、一歩進んで二歩下がるでしょう」といきなり浪花節のような言葉を聞かせてくれたのはピレイ氏。シンガポール在住で、オーストラリアで学位を取り、その後ニューヨークなどでも仕事をして3年前にVeeamに参加した、まさにグローバル人材だ。
VeeamのAPJ(アジア太平洋および日本)
世界的なパンデミックを表現する方法は百人百様とはいえ、私たちの生活に大きな影響を与えているのは事実。オーストラリアでは、昨年6月の国立大学の調査により、国民の2人に1人がストレスを感じていると発表された。新型コロナウイルスによって従業員のストレスは高まり、疲労や不安に駆られてやる気を失っている傾向が報告されている。
このコロナ禍で、ビジネスの勢いを維持し、チームの士気を高く保つカギは、ビジネスリーダーの手腕による。ではビジネスリーダーが成功に向けてチームをまとめる際のポイントとは、何だろう。要は「成長」「生産性」「個性」「シンプルさ」の4つだ。
ヴィ―ム・ソフトウェア株式会社執行役員社長古舘正清氏
「成長」のマインドセットを持つ
ただビジネスを継続するのではなく、「ビジネスを成長させる機会」に注力すること。例えばお客様は、効率性の改善を必要としているのかも知れない。従業員であれば、急速に変化する状況に適応するためのツールやトレーニングが必要だろう。あらゆる企業がビジネスモデルの見直しを余儀なくされている状況下で、従業員のスキルアップは要望ではなく、むしろ不可欠。だからこそリーダーは、ビジネスの成長戦略を策定し浸透させるために、ビジネスのフロントに立つ従業員、お客様、パートナーからの声を聞く謙虚さが必要なのだ。
時間ではなく「生産性」に注目する
コロナで移動が制限される中、時間ではなく「生産性」を重視せざるを得なくなっている。これは、柔軟な働き方がこれからも続くことを意味している。オーストラリア不動産協会(Property Council of Australia)の調査によると、オーストラリア国内の従業員のオフィス回帰は着実に進んでいる一方で、「従業員がより柔軟な働き方を望んでいること」からコロナ前のフル稼働に戻ることはないだろうと報告されている。これは日本も同様だろう。
企業は、柔軟な働き方を実現するだけでなく、従業員の生産性を可能な限りサポートしなければならない。社内会議の数を減らす、新入社員にはサポート役(バディ)をつける、仕事の成功を褒めてインセンティブをつける、といった日常の基本から見直しが必要になっているのだ。
コントロールではなく「個性」でリードする
リーダーはただの役職ではない、人間だ。メンバーをコントロールするのではなく、個性を重視し、モチベーションを上げるリーダーシップがますます重要になっている。顔を合わせる機会が限られている中、一人ひとりの価値観に寄り添い、理想や基準を示すリーダーこそ、チーム全体に良い影響を与えることができる。あなたというリーダーの人間性をチームに理解してもらえれば、職場でより良い人間関係を築くチャンスが増えるのだ。
キープ・イット・シンプル
コミュニケーションがうまくいった時のことを思い出してみよう。多くの場合、「シンプルさ」が成功を左右する。頭が良さそうに難しい話をすることは、自分のエゴを高めたり、場合によっては良い印象につながるかも知れないが、あいにく「分かりやすさ」や「理解」にはほぼつながらない。働く人は実に多様だ。だれもが時差や文化、言語を超えて仕事をすることが増えている。だからこそ「メッセージをシンプルに伝える」ことはとても重要なのだ。
2021年の現状を受け入れ、より良い1年にするためには、大志を抱き未来志向であろう。
過去のことを考えすぎ、反省し過ぎるのは逆効果だ。
詩人のT.S.エリオットが述べた「昨年の言葉は昨年の言語であり、来年の言葉は別の意味を待っている」は名言だ。
今こそ、リセットし、前に進み、今に秘められた力と可能性を発揮する時。ビジネスリーダーはその先頭に立つべきなのだ。