環境と平和を17ゴールからつなげるダイアローグは熱かった
お台場のBMW GROUP Tokyo Bayで開催、若者のダボス会議と呼ばれるワン・ヤング・ワールド(OYW)の「Tokyo Caucus 2020」。2日目の午後は環境と平和という、心と身体を包み込む2セッションを取材しました。
「サステナビリティ・リーダーシップ ~若いリーダーとSDGsを包み込む」セッション
変えるべきはプロセスよりも人
オンライン視聴者の大半を占める学生にむけて、Global Perspectives共同創業者 ギャヴィン・ディクション氏が司会進行。日本コカ·コーラ株式会社 代表取締役社長ホルヘ・ガルドゥニョ氏がけん引する心と身体のリフレッシュメントや、インクルージョンに資源、コミュニティを取り入れる包括的な環境アプローチを紹介。大切なのはプロセスや製品以上に人、企業は地域と協力してより大きなインパクトを生み出せると伝えました。
パネルディスカッションに先立ち、日本コカ·コーラ株式会社 広報・パブリックアフェアーズ&サステナビリティ本部副社長・田中 美代子氏が登壇。創業134年のコカ・コーラの歩み、世界をリフレッシュして変化を起こすよう、様々な関係者を巻きこみながら環境負荷を軽減する活動を紹介しました。
パネルディスカッションは、日本コカ·コーラ 田中氏に加えユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング・ダイレクター 中川 晋太郎氏、MS&ADインシュアランスグループホールディングス 総合企画部サステナビリティ推進室課長 浦嶋 裕子氏、株式会社TBM コーポレート・コミュニケーション本部 サスティナビリティ・アクセラレーター 羽鳥 徳郎氏、それにファシリテーターとしてGlobal Perspectivesディクション氏が登壇しました。
ウェルカム、若きリーダーたち
ユニリーバ中川氏はオンライン参加。ヘアケアから食品まで幅広い商材を扱うユニリーバにおいて、顧客とつながりを強化し、ビジネスにより社会貢献を実践する取り組みを解説しました。MS&AD 浦嶋氏は、サステナビリティを統括する立場としてさまざまな関係者とのコミュニケーションを重視。調査研究の経験を活かして環境持続性の課題に訴求しています。TBM 羽鳥氏は、スタートアップから働きかけるリソース配分最適化のため、資源のライフサイクルを精査し、サステナビリティを促進するアクセラレーターを務めます。
環境問題が災害を生む負の連鎖を止めるための取り組みとして、MS&ADでは日常業務およびビジネス戦略プロセスの両面から環境変化を最小化する研究を推進。「環境への取り組み、そのコミュニケーションはリスク管理」と述べます。ユニリーバではその幅広い業態それぞれにおいて、環境対策の効果を上げながら業界全体をけん引、それがムーブメントを作ると話します。
TBMでは、石灰石を原材料とするLIMEX素材により水資源を保全、製品開発を通した環境保護を実践。また、インターンシップ生など外部、若者の視点を取り入れながら、社内全体が環境志向になるための文化を醸成することの大切さを述べました。
飲料容器の軽量化による環境保護を先駆けるコカ・コーラを含め、あらゆるビジネスの根底で環境への取り組みが土台となっているのです。
日本から世界へ、地球から未来へ
地球全体におよぶ環境問題。一方で、日本ならではの特性もあります。日本コカ・コーラの田中氏は、「家庭でペットボトルのラベルをはがし、洗って、リサイクルする。日本で当たり前のことがグローバルでは"えっ、一般家庭でこんなにきれいにペットボトルをリサイクルするのか、信じられない!"という反応」と述べ、世界に誇れる日本の消費者行動に光を当てました。
一方、「とはいえ、まだまだリサイクルボックスにペットボトル以外のゴミが入っているのが現状。40%の人が、リサイクルボックスをゴミ箱と思っている」と指摘。「リサイクルボックスに入れてよいのはペットボトルだけ」と理解促進を求めました。
ユニリーバ 中川氏は、「ビジネスと環境は、鶏と卵の関係。事業に責任を持つことが、ポジティブなループを生む」と断言。MS&AD中川氏は「環境のための専門部署が必要なわけではない。気候変動、天然資源、すべてが環境リスク。想像力を働かせて声を上げよう」と提唱。
これから就職する学生へのメッセージとしてコカ・コーラ田中氏は「コカ・コーラではビジネスを通して世界規模で環境に貢献できる。一方で、個人の消費行動を通しても、環境保全は推進できる」「自分にとってのサステナビリティアジェンダを追求して」と呼びかけました。
TBM 羽鳥氏は「LIMEXを検索してください。アツい人材を絶賛募集中です」と笑顔でアピール。
一同、次世代のサステナブルなリーダーに声援を送りました。
「分断のない社会をつくる ~ 平和はあなたから」セッション
平和はゴールでなく歩み
日本でSDGsというと、環境を語る場面をよく目にします。一方で、平和といえば戦争の対のイメージ、75年前の第二次世界大戦を想起しがち。しかしいずれも、社会と地球、命に不可欠な要素。そう気づかせてもらえる場が他にあっただろうか、と心揺さぶるセッションでした。
司会進行を務めるOYWアンバサダー 長川 美里氏(社会教育団体Wake Up Japan理事)は冒頭、「日本は平和と思うかもしれない」と前置き。2010年、日本・中国・韓国国連協会主催の第4回日中韓ユース・
「平和はゴールではない。平和はプロセス、社会の過程です」と繰り返し、「自分が、次世代が生きていきたい社会を作ろう」とピースメイキングへの道を示しました。
Wake Up Japan
https://wakeupjapan.jimdofree.com/
続いて平和活動家 森下 雄一郎氏(The World HEIWA代表)が登壇。
世界屈指の米プロバスケット選手という稀有な経歴を持つ森下氏。2009年の引退後、子どもの夢や地域リーダーを育む活動を始め、世界平和の道に進みます。「平和を求める声は国を変える」と述べ、広島、長崎の被爆者の声を届ける世界の旅の過程を紹介しました。
森下氏は昨年から、アフリカを端緒に現在はヨーロッパまで、世界100カ国を旅しながら平和への声を上げています。老若男女、肌の色も住む環境もさまざまな人たちと集い、笑顔で「ヘ・イ・ワー!」という歓声を届ける姿は胸を打ち、涙があふれます。
森下氏は質問を繰り返します「あなたにとって平和とは何ですか?」。
世界で出会う人々に見る、人間の共通点。それは「やさしさ」。
一人ひとりの平和が世界を平和にする。
「平和はあなたが人にあげるもの」と伝えます。
The World HEIWAホームページ
https://www.send-to2050.com/top
平和な世界は一人ひとりの原体験から
パネルディスカッションでは、登壇者がそれぞれの原体験に触れました。
ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役 関根 健次氏は、大学卒業後の旅行で世界観、平和観が大きく変わりました。紛争地の公園で一緒にサッカーをした14歳の少年に「将来の夢は?」と聞いたところ返事は「できるだけたくさんの人を殺すこと...」。少年は4歳のとき、目の前で叔母を殺され、怒りを抱いて生きていました。それに衝撃を受け、4歳にして友人の交通事故死を目撃した自身の心の傷を重ね合わせ、絶対にこんな悲劇を無くしたい、と誓います。18年前、26歳で起業し、「子どもが子どもらしい夢を持っていられる世界へ」と訴えます。
紛争解決、平和構築には、募金や献金には限界がある、と関根氏は指摘します。経済的な持続性と、世界情勢に関する情報の少なさ、国内情報の極端な偏りを問題視。自らメディアに乗り出し、映画配給事業を開始。なぜなら映画は人の心を動かし、平和へのアクションにつながるからです。現在は、オーストリア人の目で日本を旅し、フードロスを美味しく楽しく解決する「もったいないキッチン」を上映中です。
もったいないキッチン
https://www.mottainai-kitchen.net/
特定非営利活動法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン 代表理事 中島早苗の原体験も20代の出来事でした。
1997年、米カリフォルニア州で働いていた当時25歳の中島氏は、12歳のカナダ人クレイグ少年の記事を目にします。はるか遠くパキスタンで12歳少年が虐待、射殺された事件に憤慨したクレイグ少年は、自ら「フリー・ザ・チルドレン(FTC)」を立ち上げ、世界の子どもの人権を守る活動を始めます。
これに心を打たれた中島氏は、自身の海外出張で発展途上国の子どもの貧困を目の当たりにし、胸を痛めます。そして日本でも、教師による生徒への暴力行使があたり前であることを思い出し、立ち上がります。「わたしは日本人です。12歳の起業、FTCの活動に心を打たれ、募金したいのです」とクレイグ少年にメール送信。そこからFTCのパートナー団体として、1999年にフリー・ザ・チルドレン・ジャパンを立ち上げました。
FTCにおける子どもが子どもを応援する国際協力は、子ども自身が変化を起こす担い手、世界は変えられる、と力強いメッセージを発信し続けています。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
学部生時代、北朝鮮に3回渡航した京都大学大学院人間・環境学研究科 共生文明学専攻 竹田 響氏は、文化人類学の観点から「あの土地、国は恐い」という先入観を指摘します。中東ならテロ、北朝鮮なら核など、イメージが先行し恐怖を醸成する。しかし人は人、出会う人は友人になります。そして、歴史認識が異なることも身をもって知ります。
「日本の平和、ではなく日本の周り、隣人の平和を構築しよう」「平和を享受するだけでなく、平和を提供しよう。受け身からアクションへ」と竹田氏は訴えます。
パネリストはそれぞれ、「日本は平和構築への努力が足りたい」「情報、知識が足りない。日本の外のことを知らない」と指摘。
「コロナは、考える時間をもたらしている」「インターネットでも人とつながれる。世界は自分から、今日から変えられる」と若者を励ましました。