【ブックトーク】その、圧倒的なリアリティ。 / 『竹林はるか遠く』
本日は、69回目の終戦記念日にあたります。「歴史は繰り返す、70年周期で」なんてのを『日米開戦の真実』や『2022 - これから10年、活躍できる人の条件』などで目にしたのも、もう数年前。その時から考えてみても、確実に時代が変わりつつある、そんな空気を感じることが増えてきています。日本の周辺でも特定の2か国ほどが蠢動していますが、新しい形での帝国主義が現出しようとしている、そんな風に考えさせられることもしばしば。
そんな中「戦争」という行為に対してストンと落ちるフレーズを思い出させてくれるのが、こちらになります。
『竹林はるか遠く』(ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ/ハート出版)
“戦争とは恐怖そのもので、勝負はなく互いに「負け」”
これに尽きると思います、ただこの一言に尽きると。圧倒的な組織的な暴力の前では個人は無力で、翻弄されて、理不尽に“奪われていく”、、そして関わった人は誰もが、何かしらを“失っていく”。それが故に、戦争に“勝者”というものは存在しないのではないかと、そんなことを真摯に伝えてくれていると思います。
著者・ヨーコさんは、終戦後の満州からの引き揚げを経験し、日本に戻ってからも苦労をしながら学問を続け、後にアメリカ人と結婚・渡米されています。そんなヨーコさんご自身の戦争体験を元に1986年に書かれたもので、アメリカの学校では副読本にもなっているそうです。戦争の悲惨さを圧倒的なリアリティで伝えてくれていると、感じます。
日本人の陰湿さも、朝鮮人の暖かさも、
朝鮮人の残虐さも、日本人の高潔さも、
その全てが綯い交ぜになって、人間の本質が紡がれている、その醜さと高潔さと同時に向き合ってもいる、そんな印象が残りました。戦争は極限状態の連続ですが、人はその極限状態でこそ、民族・思想などとは無関係な“生の本質”をあらわすのでしょうか。といいながらも、共産主義勢力のエゲツなさは一貫していますが、、ソ連も共産支那も変わらずに。
ん、こちらであれば、小中学生にもフラットに読ませられると思います。戦争の悲惨さと陰鬱さ、その中でも失われない人間の尊厳などなど、、そして、こういった書籍を副読本として使うアメリカの懐の深さはさすがだな、とも。
いつの日か息子が読むように本棚に並べておこうと、そんな一冊です。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『日米開戦の真実』(佐藤優/小学館文庫)
『2022-これから10年、活躍できる人の条件』(神田昌典/PHPビジネス新書)
『海賊とよばれた男』(百田尚樹/講談社)
『祖父たちの零戦』(神立尚紀/講談社文庫)
『「武士道」解題』(李登輝/小学館文庫)
【補足】
だからこそ「戦争にならないように外交を行い、国力を高める」のであって、それは決して「相手の意のままに土下座する」こととは同じではありますまい。譲歩をしてばかりだと、相手に侵略のための“戦争”を起こさせる動機にもつながる、その現実は見誤ってはいけないと思います。
そういった意味で、抑止力を高めることにもなる「集団的自衛権」は歓迎ですし、ここ最近(2012-2014)の、「自由と繁栄の弧」や「セキュリティ・ダイヤモンド」からつながっている「積極的平和外交」については、個人的には非常に高評価だったりします。