連載 Salesforceカスタマイズ事例 2
前回はカスタムオブジェクトの作成を省略した為に起こった問題を書きましたが、今回も同じように、カスタムオブジェクトをもう一つ作成すれば問題が起きなかった事例を書きます。
B社は会員制金融関係情報提供会社です。会員登録はWebページから行われますが、会員には法人と個人がいます。すなわち、この会社にはB to BとB to Cの両方のビジネスモデルが必要です。
Salesforceは基本的にB to Bのビジネスモデルで成り立っており、B to Cのビジネスモデルは提供されていません。前回は、salesforceでは、「商談」は一種類しか提供されていない為に起きた問題を書きましたが、今回もSalesforceが前提としているモデルとの相違から起きた問題という意味で同じです。
法人が、Webページから会員申し込みを行うと、Web to Leadの機能によって自動的にSalesforceの「リード」にデータが登録されます。「取引の開始」ボタンを押すことによって、自動的に「取引先」に会社名、住所、電話番号等の顧客属性情報が移行され、後の処理に利用されます。
個人が、Webページから会員申し込みを行うと、カスタムオブジェクトとして作成された「個人リード」に自動的にデータが登録されます。「取引の開始」ボタンを押すと、自動的に「取引先」に名前、住所、電話番号等の顧客属性情報が移行される筈ですが、住所等のいくつかのデータが移行されずに消えてしまうという現象が起きていました。
この会社では、仕方がないのでコピー&ペーストでリード情報から「取引先」情報を作成していました。ところが登録件数が増えてきた為、もう耐えられなくなり約2年弱前にカスタマイズを依頼したSalesforceコンサルティングパートナーに何度も連絡しましたが対応してくれませんでした。カスタマイズの検収をきちんと行えば気が付く問題ですがどうしたのでしょうね。Saleforce社の担当営業に聞いても、的外れな回答しか得られず、もうこれ以上は対応できませんと言われたそうです。
なぜデータが消えてしまうか?
住所データの例で説明しますと、カスタムオブジェクトのデータ項目には、なぜかデータ形式として住所型がありません。仕方がないのでテキスト型で作成されていましたが、標準オブジェクトの「取引先」の住所のデータ形式は住所型です。「取引の開始」ボタンを押しても、データ型が合わないデータは移行されずに消えてしまいます。
カスタムオブジェクトで「個人取引先」を作成し、住所項目はテキスト型で作成すれば起きなかった問題です。
カスタマイズを請け負った会社は、100社近くのカスタマイズ実績を誇るところですが、担当エンジニアは、データ型が異なる場合に起きる問題を知らずに、テストも十分に行わなかったことから起こった悲劇と想像されます。
カスタマイズを依頼するパートナーの選択をする際に、Saleforceの経験と知識を、実績だけに頼って判断した為に起きた問題といえます。実績に頼らざるを得ないのも致し方ありませんが、せめて受け入れ検収だけはしっかりと行うべきです。
Salesforceを導入する企業は、ITの専門家がいない小規模企業が圧倒的に多いと思われますが、どの会社にも起き得る問題ですね。