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クラウド、SaaSを中心に庶民からの思いを無責任につぶやく

クラウド(雲)のあちら側に光を見たいなぁ

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なんとなく普通に生活をしているだけで仕事でも趣味でもネットのあちら側、つまりクラウドサービスが自分の周辺に氾濫している状況に少し驚いている。あちら側への扉は、PC、携帯、スマートフォンのみならず、様々な機器がネットで繋がりセンサーデータのやり取りが雲を介して盛んに行われている。私がコンビニで大好きな「MINTIAコールドスマッシュ」を購入するだけで、そのPOSデータは世界中のクラウドを行き来することであろう。

アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどのクラウド環境を提供する海外勢は、規模の経済の力を借りながら、確実に寡占化を進めている。国内勢も遅ればせながら、クラウド環境の提供を開始しているが、海外勢のような規模の経済の力を生かせるまでに至っていない。しかしながら、これは一概に日本企業の力不足というわけでもない。米国ではこれら大型データセンター誘致に向けて各州が様々な支援を行っており、日本では想像もできないような数十億円規模の助成金そして税金免除処置など、官民が一体となってクラウドビジネスを世界中に展開する施策が明確にある。

官民一体体制には、一企業では対抗できない。業種は異なるがインフラという意味では、最近の新興国に対する原発失注が参考になる。日本以外は、官主導で頑張っているのに、日本は一企業で戦い負けている。

中国市場で勝てない日本(地球回覧)

2010/02/11, , 日本経済新聞 朝刊, 6ページ,

韓国企業、存在感高まる――海外志向、果敢に投資(ニュースの理由)

2010/02/09, , 日本経済新聞

原発受注、日本、ベトナムでも敗退、軍事協力含め攻勢、ロシアが獲得。

2010/02/09, , 日本経済新聞

日本勢、新興国に苦杯、原発世界商戦、政府支援が不可欠。

2010/02/09, , 日本経済新聞

インフラめぐる競争激化――政府が動く時代に日本は?(中外時評)

2010/02/07, , 日本経済新聞

日立製作所や三菱重工の原発技術は、とても優秀なのに勝てないのである。大統領や総理が営業では勝ち目が無いのも理解できる。

 話をクラウドに戻そう。その結果、国内ベンダーはパブリック・クラウドよりも、以前から提供しているホスティング・サービスに近い、プライベート・クラウド(イントラ・クラウド)に力を入れているのが実情である。乱暴な言い方をあえてするならば、プライベート・クラウドは、従来のホスティングに仮想化技術を適応し、サーバ・リソースの稼働率を上げることによって価格を下げているモデルである。運用も含めたビジネス・プロセスのアウトソーシングサービス(BPO)である点からして、その本質は顧客の囲い込みに他ならない。

 企業の基幹システム(特にミッション・クリティカルと呼ばれる業務)については、パブリック・クラウドを利用することに、まだまだ躊躇することが多いであろう。その面では、この分野をBPOによって囲い込む戦略は、当然の施策である。

 しかし、マクロ経済面から見た場合に、この施策は日本を豊かにすると言えるであろうか。プライベート・クラウドによって、企業の基幹系システムの運用が安価にできるようになると、結果的に基幹系市場が縮小することになる。基幹系市場を拡大するためには、プライベート・クラウド活用によって、今までに無い新たなサービスを創造する必要がある。

例えば、携帯電話の出現は通信市場に大きな変化を生み出した。家庭に1台の固定電話から、一人1台の携帯電話へと変わり、1家庭あたりの通信コストは数倍に膨れた。加えて、新に生み出されたコンテンツビジネスによって、固定電話では考えられないような大きな市場が生み出された。

基幹系システムを支援するプライベート・クラウドでもこのような、夢のある新たなマーケットが生まれるであろうか。残念ながら革新的な新しいビジネスモデルやサービスは、基幹系システムではなく、どちらかと言えば、フロント系に近いところで、生み出されることが圧倒的に多い。つまり、この夢のある革新的サービスは、グローバル・クラウドで対応可能な海外勢の得意とする市場で生まれるということである。現状では、国内クラウドベンダーはその革新的市場の恩恵を得られる状況には無い。

 そうなると、デフレスパイラルに陥りそうなプライベート・クラウド市場は、大きな革新もなく価格競争に陥り、やがてプライベート・クラウドベンダーの淘汰が起こり、市場が混乱するであろう。

 異論・反論も多いと思われるが私自身は、クラウド事業はCO2削減、新市場の創造、その市場での雇用拡大と内需拡大の要であると思っている。戦後の経産省が海外勢と戦ったように、今再び日本が一丸となって、プライドを捨て真摯に市場に向き合うべきである。

「日本は、クラウドをあきらめたのか」と風越次官(http://www.tbs.co.jp/kanryou09/)が怒りそうである。

雨が降らないことを祈る。クラウド(雲)のあちら側に光を見たいなぁ。

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