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時間をかけて積み上げた経験値の不良債権化が加速する/その理由と対処の難しさについて

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自分が社会の負債あるいは不良債権になることになることを恐れている。「心配している」とか「注意している」のではない。「恐れている」のだ。それは、心配しても、注意しても不良債権になる可能性が極めて高いからだ。

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歳を重ねれば、社会的信頼も高まり、権威や実績と言った社会的格付けもこれを後押しするだろう。結果として、自分の発言は影響力を強めていく。その自覚を持たないままに、若い人たちへのよかれと思ってのアドバイスや叱咤激励が、老害やパワハラとなってしまうことがある。もちろん、自分にその自覚などない。これが、「恐れている」理由だ。

「時間をかけて積み上げた経験値」つまり「ベテランならではのスキル」の不良資産化が加速する。

先日のブログで、このように書いたが、AI革命の急速な進行は、何もしなければ、私のようなロートルの不良債権化を加速する。日常やビジネスの前提が、AI前提となりつつあるわけだ。

AIの本質は何かと言えば、膨大な知識やスキルの民主化であろう。特に昨今の生成AIの基盤となっているモデルは、もはや単なる知識やスキルの蓄積ではなく、それらを使った論理的思考さえも可能にしようとしている(ChatGPT 4o1)。ひとりの人間が、一生を費やしてもなしえない知識やスキルを駆使し、高度な「問い」に対して、論理的な裏付けのある回答を提供する。

これこそが、本来の意味での敬意と尊敬を込めた「ロートル(中国語:老頭児)」の役割であったわけだが、もはやこの常識が成り立たない。言わば誰もが、つまり経験を積み上げる時間のない若者でさえも、基本的な常識とスキルを手に入れられる時代となり、かつてのようなロートルの役割は、なくなりつつあるわけだ。

この歴然とした現実を受け止めることには、だれしも抵抗があるだろう。特にロートルにとっては、自分の人生で積み上げてきた経験という年輪は、顔のしわ程度の価値しかないと言うことになるわけだから、これは受け入れがたい。あるいは、AIのいまの常識を知らない人たちにして見れば、気付くことさえ難しいと言うことになる。

少なくとも私は、この現実を受け入れている。だからこそ、「恐れている」のだ。分かっていても、受け入れていても、それを日常の行動に活かしているか問えば、昔ながらの常識を前提とした行動や思考の様式から抜け出せずにいる。「じゃあ変えればいいじゃないか」と言われそうだが、そんな簡単な話しではない。

この状況に、どう向きあい、新しい時代のロートルとして役目を果たしていけるとすれば、それは何をすることなのだろうか。

今週は、そんなことを考えてみようと思う。

まもなく締め切り!
次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)

次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。

特別補講の講師が決まりました。

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企業文化の変革に挑む富士通の取り組み

〜フジトラの実践を通じて見えてきたITビジネスのあるべき姿と課題〜

特別講師:富士通株式会社 執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐 福田 譲 氏

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富士通は、いま「フジトラ(富士通トランスフォーメーション)」に取り組んでいます。フジトラは、ビジネス・モデルや業務プロセスの変革に留まらず、企業文化の変革にも踏み込んだ、会社を作り変えようという取り組みです。道半ばとはいえ、確実に成果が現れつつある一方で、様々な課題にも直面しています。そんなフジトラの実践をリードする福田譲氏に、フジトラの"いま"を"正直に"ご紹介頂きます。

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    •  経営のためのセキュリティの基礎と本質
    •  総括・これからのITビジネス戦略
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これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。
「DXに取り組め!」と言われても、これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに、何が違うのかわからなければ、取り組みようがありません。
「生成AIで業務の効率化を進めよう!」と言われても、"生成AI"で何ですか、なにができるのかもよく分かりません。
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