オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

歴史は繰り返す:ChatGPTの発表から見える新たな競争の幕開け

»

2023117日、OpenAIの開発者向けカンファレンスDevDayで、ChatGPTに関連したアップデートが発表されました。詳細については、こちらがわかりやすいのではないかと思います。また、今年の9月、OpenAICEOであるアルトマンは、元Appleの伝説的デザイナーであるジョナサン・アイブに対して、AIデバイスの開発プロジェクトへの参加を求めたという噂が流れました

この一連の動きを見ていると「歴史は繰り返す」という言葉を思い起こさずにはいられません。

スクリーンショット 2023-11-09 8.46.43.png

1990年代の初めにインターネットが登場し、世界が隅々までネットワークでつながる社会が到来しました。そんなネットワークを行き交うデータを広範かつ大規模に取得することが、社会における覇権を握る決め手となる時代を迎えたのです。そのことをいち早く悟ったのが、Microsoftです。

Microsoftは、1981年にMS-DOSをリリースして以降、PC OSで大きなシェアを握りました。まだこの時代は、PCをネットワークに接続することは特別であり、限られたユーザーがパソコン通信で情報をやり取りするに留まっていました。1990年代に入りインターネットの時代が到来すると、Microsoftは、1995年、Windows95とともにWebブラウザーInternet Explorer(IE)をリリース、PC OSの圧倒的なシェアを基盤にインターネットの窓口、すなわちユーザーがデータをやり取りする玄関(ポータル)/ゲートウェイを掌握したのです。

その後、1998年、Googleがブラウザーで使う検索エンジンの提供を始め、データの玄関をMicrosoftにただ乗りするカタチで手に入れました。

Googleは、2005年、Webブラウザー上でアプリケーションを実行できるAjaxを使ってGoogle Mapをリリース、その後、様々なAjaxアプリケーションがリリースされるようになり、OSに依存せずにアプリケーションが利用できる可能性が示されました。

当時、Microsoftは、PCにインストールするOSであるWindowsOfficeが大きな収益源でした。OSにも依存せず、インストールの必要もないアプリの普及は大きな脅威だったわけです。そのため、アプリケーション実行環境としての自社Webブラウザー IEの性能向上には、不熱心でした。

そんな状況に業を煮やしたGoogleは、2008年に独自のブラウザーであるChromeをリリース、その軽快さやアプリケーション実行環境としての性能の高さにより、IEのシェアを脅かす事態となったのです。また、2010年、Chromeを動かすことに特化したChrome OSをリリース、Google Appsと呼ばれるオフィス・アプリケーション(いまのGoogle Suite)の充実にも取り組みました。結果として、Webブラウザー、検索エンジン、オフィス・アプリケーション、エンドユーザーデバイスといったネットを流れるデータの玄関に於いて、Googleは大きなシェアを持つようになったのです。

2007年、AppleiPhoneをリリースしました。電話機として、あるいは、音楽プレーヤーとして使える「携帯できるインターネット常時接続パソコン=スマートフォン」として、それを持ち歩く人のデーターのやり取りの玄関となるデバイスとなりました。2008年、Googleは自社が買収した企業の開発したスマートフォンOSAndoroidをオープンソースとして提供、自社のWebブラウザー、検索エンジンと抱き合わせて、この玄関を押さえる施策に出ました。Google2013年に自社開発のスマートフォン Pixleをリリースし、この戦略をさらに加速させています。

その後スマートフォンは、アプリケーション・マーケットであるApp StoreGoogle Playを介して、無料や安価でアプリを導入できる仕組みを提供し、多様なカタチでユーザーの行動データを取得できる手段を手に入れたわけです。

また、2014年、Amazonが、音声という身近なユーザー・インターフェイスでネットのサービスを利用できるゲートウェイ端末 Alexaをリリースしました。これは、今ひとつ普及はしなかったのですが、これも玄関を抑える戦略の1つです。また、2015年、Appleは、Apple Watchを発表し、ユーザーのきめ細かな行動データや身体データを取得する手段を手にしました。

冒頭でも述べたように、「ネットワークを行き交うデータを広範かつ大規模に取得することが、社会における覇権を握る決め手となる時代」を迎え、「データ取得のフロントエンド」を手に入れることは、大きな戦略的な価値を持つわけです。OpenAIの今回の発表は、まさにこの歴史のトレンドを踏襲してたいます。

つまり、ユーザーが様々なデータを提供し、ネットからデータを受け取るフロントエンドを抑えることで、ユーザーに関わるデータを手に入れ、デジタル経済圏の玄関となり、社会における覇権を握ろうというわけです。

OpenAIのアップデートやAIデバイスの開発、そこに、Microsoftが莫大な資金援助を行い、自社製品への組み込みを積極的に進めている一連の動きは、まさに、「データ取得のフロントエンド」における圧倒的な地位を手に入れようとするものです。

ツールとしての機能や性能、利便性という視点だけではなく、「歴史は繰り返す」という視点からこの一連の動きを捉えると、違った見え方ができるのではありませんか。

11月11日(土) 10:00〜八ヶ岳移住セミナー「地方移住の前にお試しでワーケーションを体験しよう」

八ヶ岳移住-4.png

是非、この機会に、8MATOを体験して下さい。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

IMG_4293.jpegbanne_rpamphlet.png

書籍案内 【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

ITのいまの常識がこの1冊で手に入る,ロングセラーの最新版

「クラウドとかAIとかだって説明できないのに,メタバースだとかWeb3.0だとか,もう意味がわからない」
「ITの常識力が必要だ! と言われても,どうやって身につければいいの?」
「DXに取り組めと言われても,これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに,何が違うのかわからない」

こんな自分を憂い,何とかしなければと,焦っている方も多いはず。

そんなあなたの不安を解消するために,ITの「時流」と「本質」を1冊にまとめました! 「そもそもデジタル化,DXってどういう意味?」といった基礎の基礎からはじめ,「クラウド」「5G」などもはや知らないでは済まされないトピック,さらには「NFT」「Web3.0」といった最先端の話題までをしっかり解説。また改訂4版では,サイバー攻撃の猛威やリモートワークの拡大に伴い関心が高まる「セキュリティ」について,新たな章を設けわかりやすく解説しています。技術の背景や価値,そのつながりまで,コレ1冊で総づかみ!

【特典1】掲載の図版はすべてPowerPointデータでダウンロード,ロイヤリティフリーで利用できます。社内の企画書やお客様への提案書,研修教材などにご活用ください!

【特典2】本書で扱うには少々専門的な,ITインフラやシステム開発に関わるキーワードについての解説も,PDFでダウンロードできます!

【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
Comment(0)