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営業は売り込みもお願いも必要ない

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「社長からIoTでプロジェクトを立ち上げるように指示されたのですが、何から手をつけていいのか、ほとほと困っています。」

こんな相談を持ちかけられたら、あなたはどう応えるだろう。彼らは何をしていいのか分からないままに、まずはIoTについてのネットの記事や書籍を探り、研修に参加し講演を聞き、「調査」と称する時間を費やしているかも知れない。

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DX推進室やデジタル・ビジネス開発室などの組織を作り、その取り組みを加速しようとしている企業もある。覚悟を社内外に示すというのは、意味のあることだが、早々に成果をあげることが期待され、「何をどうすればいいんだ?」と、こちらもまた調査と検討に時間を費やしているところも少なくないようだ。

このような状況に陥っている人たちに共通しているのは、事業課題を明らかにすることなくテクノロジーを使うことが目的となってしまっていることだ。テクノロジーがもたらす社会やビジネスへのインパクト、これに対処するための課題の明確化、さらには時代に即した新しいビジネスの創出などを検討し、これからの事業のあるべき姿を描くべきであるが、そのような議論に至ることなく、既存の業務に当てはめて、その範囲で使えるところを探すことに終始していることも多い。

一歩進めて、既存の業務で使えそうなところを見つけて使ってはみたものの、特定の工程には効果はあったが、全体から見れば、現状とたいして変わらないという結論に達し、「使ってみた」という成果だけが残ることもある。これでは、事業の成果に結びつくことはない。では、どのように取り組めばいいのだろう。

まずは、お客様と何を解決したいのか、何を実現したいのかをしっかり議論することだ。例えば、この課題が解決できれば、競合他社に対して圧倒的な優位に立てる。あるいは、この工程をなくすことができれば、原価を3割削減できる。そうすれば、利益を大幅に改善し、市場のシェアも1割は伸びるだろう。「なんとしてもそうしたい」、あるいは「そうしなければならない」を現場の意志として明確にすることだ。これを実現することが顧客価値である。

IoTで何かできないのか?」をそのまま実行してはいけない。「IoTで何かできないのか?」という問いかけを、いま抱える事業課題の解決や将来起こりうる事態への対処、新たな競争優位の創出と結びつけ、それを解決あるいは実現する手段のひとつとしてIoTを捉えることからはじめることだろう。つまり、「IoTで何かできないのか?」を次のように読み替えてみることだ。

  • 事業の存続や成長にとっていま何が課題なのか、これから何が課題になるのか
  • この課題を解消するためにすべきことは何か
  • 有効な手段は何か、IoTはその有効な手段になり得るか

例えば、人材の不足、競争の激化、変化の速さといった直面する課題を解決しようとしたとき、過去の経験や方法論にとらわれず、「いまできるベストなやり方は何か」を追求した結果、「IoT」が最適解であるとすれば、それがIoTで取り組むテーマとなる。しかし、他の手段が有効であるとすれば、なにもむりやりIoTで取り組む必要はない。

IoTかどうかはどうでもいい。大切なことは、事業の成果に結びつくかどうかであり、IoTを使うことではない。そこが入れ替わってしまうと不幸な結末を招くことになる。営業はこのような議論をリードできなくてはならない。

営業として、このような役割を果たすためには、自分の分野を狭めてはいけない。事業や経営、テクノロジーの全般に渡って、広い知見を持つことだ。もちろん、自分たちの得意や専門分野が不要になるわけではない。ただ、自社の製品やサービスについての知識だけではなく、経営や事業について、そしてテクノロジーのもたらす価値について、クロスオーバーに相談できる存在にならなければ、提案の入口は作れない。

お客様に寄り添い、お客様の目線で物事を捉えることだ。そして、何が一番正しいことかをお客様と一緒に探し出すことだ。そして、自分たちにできるかできないかではなく、お客様が何をすべきかを明らかにすることだ。

それらを全て自分たちだけでまかなうことなどできない。だから、オープンに広く緩い連係を維持し、いざとなれば必要なスキルをダイナミックに結集できるオープン・イノベーションに取り組む必要もある。また、広く人脈を持つことも大きな助けになる。

もちろん、新しい技術だけでは、お客様の求める価値を提供できない。これまでに培った技術やノウハウをも組み合わせてこそ、お客様の期待に応えることができる。

お客様はシステムを作ってもらうことや製品を導入してくれることを期待しているのではなく、ビジネスの成果に貢献してもらうことを期待している。営業は、その期待に応えなくてはならない。

それにもかかわらず、自分たちの抱える製品や得意とするテクノロジーだけを語り、あるいは旧態依然とした知識や方法論を前提にテクノロジーの未来を語れないとすれば、お客様は相談しようなんて思わない。自分たちのビジネスの未来とそこに至る物語を語れない相手に何を相談すればいいのだろう。

そんなお客様の期待に応える心構えと備えはできているだろうか。お客様のDXへの期待に応えたいのなら、営業は、この課題に向きあわなくてはならない。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

12月9日(金)9:30〜 トライアルオープン

オープンを盛り上げてくれるいい対談となりました。録画を公開しましたので、よろしければ、ご覧下さい。

リモートワークやリゾートワーク、メタバース時代の働き方などについて、及川卓也さんと白川克さんと話をしました。とても学びの多い対談になりました。

録画を公開しています。よろしければ、ご覧下さい。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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