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「お客様のDXの実現に邁進する」など口が裂けても言うべきではない

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このチャートは及川卓也氏の著書「ソフトウェア・ファースト」に掲載されたチャートを参考に作成したものだ。

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このチャートにある「デジタイゼーション」とは、デジタル技術を利用してビジネス・プロセスを変換し、効率化やコストの削減、あるいは付加価値の向上を実現する場合に使われる。例えば、アナログ放送をデジタル放送に変換すれば、周波数帯域を効率よく使えるようになり、限られた電波資源を有効に使えるようになります。紙の書籍を電子書籍に変換すれば、いつでも好きなときに書籍を購入でき、かさばらず沢山の書籍を鞄に入れておくことができる。手作業で行っていたWeb画面からExcelへのコピペ作業をRPAに置き換えれば、作業工数の大幅な削減と人手不足の解消に役立つ。

このようにデジタル・テクノロジーを使って効率化や合理化に寄与する場合に使われる言葉だ。

一方、「デジタライゼーション」は、デジタル技術を利用してビジネス・モデルを変革し、新たな利益や価値を生みだす機会を創出する場合に使われる。例えば、自動車をインターネットにつなぎ稼働状況を公開すれば、必要な時に空いている自動車をスマートフォンから選び利用できるカーシェアリングになる。それが自動運転のクルマであれば、取りに行かなくても自ら迎えに来てくれるので、自動車を所有する必要がなくなる。月額定額(サブスクリプション)で利用できるようになれば、多くの人たちは自動車を所有することを辞めてしまうだろう。そうなれば、自動車会社はメーカーからサービス会社へと変わらざるを得ず、ビジネスモデルが大きく変わってしまう。

このように、デジタル・テクノロジーを使ってビジネス・モデルを変革し、これまでに無い新しい価値を生みだす場合に使われる言葉だ。

しかし、「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」だけでは、DXは実現せず、それにふさわしいヒトや組織の変革を伴わなくてはならない。

つまり、DXに取り組むとは、まずは自分たちの足下の仕事の進め方や働き方、経営オペレーションを見直し、徹底してムダを排除して、デジタル・プロセスに置き換えることが最初のステップとなる。PPAP(Zip暗号化されたファイルを添付して送ること)やハンコ文化、儀式と化した会議をなくすことであり、徹底したペーパーレス化やリモートワークを、デジタルを駆使して可能にすることから始める必要がある。もちろん、それを許容する文化や人事評価制度なども変える必要があるだろう。

そんな「デジタイゼーション」なくして、「デジタライゼーション」はなく、DXなどあり得ない。ましてや自分たちの「デジタイゼーション」さえまともにできない企業が、他社である「お客様のDXの実現に邁進する」など、口が裂けても言うべきではない。

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いまの需要を支えるのは既存業務やシステムの「改善・最適化」であることを心得ておくべきだ。それをDXという流行言葉で抽象化し、あたかも時代の先端にいるかのような自己欺瞞を放置すべきではない。

なにも「改善・最適化」を否定するわけではなく、そこには確実に需要もあり、自分たちの事業を維持するためにも価値ある取り組みだ。ただそのことと、「デジタライゼーション」やDXを同義に語ることは、厳に慎むべきだろう。

いずれにしても、「お客様のDXの実現に邁進します」などと勇ましい看板を掲げる前に、まずは自分たちの足下の「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」にとりくむとともに、自分たちの取り組みを「改善・最適化」として明確に位置付け、それを極めてはどうか。お客様はそれを必要としており、確実に需要はあります。ただ、DXは別の話であることをわきまえておく必要がある。

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