サービスの価値がモノの価値を支配する時代
「皆さんの会社の複合機と競合会社の複合機では何が違うのでしょう。どこが競合優位なところなのでしょうか。」
オフィス製品をとりあつかう大手メーカーの営業研修で、こんな質問をしてみました。しかし、その違いを明確に説明できる人はいませんでした。その後、競合会社の営業研修でも同じ質問をしてみました。しかし、ここでも返ってきた答えも同じようなものでした。
機能・性能は頂点に達し、その違いを説明することが困難なほどに、ともに高い完成度です。もはや「もう十分」の域を超えたところでの競争になってしまいます。こうなると価格競争しかありません。「コモディティ化」とは、まさにこのような状況を指す言葉です。
モノで差別化が図れないのであれば、サービスで差別化を図るしかありません。ITビジネスの多くは、いまこの命題を抱えています。
世の中に同様のモノが少なく、それらの完成度も過渡期にあるときは、モノの機能・性能が、価値を評価する基準となります。サービスはモノに付帯するおまけでしかなく、競合優位を左右するものでありません。モノが顧客価値を支配している段階です。
ところが、モノの性能や機能の完成度が高まり、「もう十分」となると、差別化の基準はサービスに移行します。つまり、サービスが顧客価値を支配することになります。つまり、サービスに差別化可能な価値を作り込まなければ、競合優位を見出すことはできないことになります。
だからといってモノの機能・性能という価値が重要性を失うわけではありません。それは「前提」として不可欠な存在であり続けます。ですから、モノを提供するための高い技術力の必要性がなくなるわけではないのです。しかし、それ自身が、差別化の決定的要件にはなりえないのです。
そうなると、モノとサービスを一体として、顧客価値の創造と差別化を図ってゆくことが必要となります。
Appleが、iPhone/iPadとともに展開している楽曲のダウンロードサービスであるiTunes Music Storeや定額配信サービスのApple Musicは、モノとサービスを一体ととらえたビジネスの典型と言えるケースです。むしろ「サービス支配」のビジネスといってもいいでしょう。この視点は、これからのITビジネスを考える上で、不可欠な発想です。
「お客様は誰か、その課題は何か、どすれば、その課題を解決できるか」
そのために「何ができるか」ではなく、「何をすべきか」を考えることです。そして、その実現のために必要なモノやサービスの組み合わせを考えます。
コモディティ化の現実に対処し、競合優位を見出すためには、「サービス支配」の視点に立って、ビジネスを捉えることが必要です。
お客様が必要としていることは、モノを手に入れることではなく課題を解決することです。あるいは、ニーズを満たすことです。どんなサービスが魅力的であるのかと考えなくてはなりません。そして、それが十分に魅力的であるとすれば、その実現に必要なモノは、一定水準の機能や性能を備えてさえいれば、結果として採用していただけるはずです。
モノを売るのでは顧客価値を生みだすサービスを売る。結果として、モノが売れる。そんな視点がこれからますます大切になってくるでしょう。
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