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【図解】コレ1枚で分かるIoTと「モノのサービス化」

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現実社会の行動や出来事をデータ化する仕組みとして、IoTに注目が集まっている。では、集めたデータは、どのような価値を生みだそうとしているのだろうか。そのひとつが、「モノのサービス化」だ。

モノのサービス化の前提として、「モノのSD化」がある。SD(Software Defined)とは、「ソフトウェアで定義された」あるいは、「ソフトウェアで規定する」という意味だ。以下の図をご覧いだきたい。

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1953年に就航した旅客機ダグラスDC7のコックピットは、様々なメーターや操縦桿、レバーやスイッチなどに埋もれている。これらのハードウェアは、エンジンや燃料タンクのセンサーに直接繋がってそのデータを表示したり、昇降舵やフラップを直接動かしたりと、人間が直接的に航空機の状態を監視し、操作している。当然、性能の改善のためのハードウェアの交換や故障の修理などに、物理的作業を必要とした。

一方、2011年に就航したボーイング787は、操縦や操作の多くを、ソフトウェアを介在して行う。例えば、運航に関わる様々なデータは、一旦ソフトウェアで処理され、自動で必要な操作を行ったり、そのときに必要な情報を整理、選択して液晶画面に表示させたりしている。操縦桿もフライ・バイ・ワイヤーといって、人間の操作した動きをセンサーで読み取り電気的な信号に置き換えている。これにより、人間の操作を補完し、様々な機器との協調・連携を自動化して、最適な飛行を実現している。つまり、航空機というハードウェアは、ソフトウェアによって操作されているわけだ。

これは、ソフトウェアが、航空機というハードウェアの機能や性能を規定し、操作性や燃費効率を左右しているということでもある。つまり、モノの機能や性能のかなりの部分が、ソフトウェアによって定義あるいは規定されているということでもある。

この方法により、ソフトウェアに手を加えることで機能や性能、操作性を改善したり、燃費を向上させたりが可能になる。また、遠隔地からの保守点検、あるいはソフトウェアによる自己点検や修復などの自律化機能を持たせ人間の介在無しに保守作業を行うことも可能になる。これが、「モノのSD化」だ。この取り組みは、航空機だけではなくその他のモノにも拡がりつつある。

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「モノのSD化」によって、モノ作りは、「性能や機能の優れたモノを作ること」をめざすことから、「常に最適なモノを使い続けてもらうこと」をめざすようになる。つまり、作った後のことまで考え、それを支えてゆくモノ作りが、求められるようになる。つまり、モノのサービス化というパラダイムシフトが、起ころうとしている。

「モノを使うこと」の最適化を実現するためには、モノの状況をデータとして捉える仕組みが必要となる。これが、IoT(Internet of Things)だ。

ものに組み込まれたセンサーが、モノの様々な状況をデータ化し、ネットワークを介してメーカーに送る。メーカーは、それを解析し、状況を把握して、モノに組み込まれたソフトウェアを改修し、再びモノに組み込まれたソフトウェアを更新することで、機能や性能、操作性を改善する。また、集められたデータは、より優れた製品を開発するための情報としても用いられることになる。ハードウェアは、そんなソフトウェアとの関係を前提に機能や性能を作ってゆかなければならない。

さらに得られたデータから新たなサービスを生みだすことができる。例えば、ジェットエンジンの運行情報をデータとして収集し、その解析データを使って燃費効率の高い飛行方法を指導するコンサルティングサービスやPBL(Performance Based Logistics)といわれる個々の作業や部品の調達に対価を支払うのではなく、可動率の確保や修理時間の短縮といった成果(パフォーマンス)に対価を支払うサービスなどが登場している。また、自動販売機に気象センサーやカメラ、人感センサーを付け、それらを分析して、きめ細かな地域別の気象情報を提供したり、マーケティング情報を提供したりする情報サービスなどだ。製品そのものの付加価値を高めるだけではなく、集めたデータを使った新たなビジネスの展開へと可能性が広がる。

ものを作り提供することから使い続けてもらうことへ、さらには、データそのものを価値として顧客に提供することへ。このような一連の取り組みが、「モノのサービス化」だ。

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*テクノロジー編(265ページ)

・「歴史から振り返るITのトレンド」のチャートと解説を追加しました。
・IoTとビッグデータについて、内容を見做し、ストーリーの変更とチャートの追加・変更を行いました。
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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

>> 詳しくはこちらをご覧下さい。

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