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SI事業者のための新規事業の進め方 2/3

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昨日は、「何をするかを決める」について考えた。今日は、その商品やサービスをお金を払ってでも手に入れたいと思っていだくためには、どうすれば良いかを考える。

2.「強み」と「核心的価値」を明らかにする

まずは自分たちの「強み」を明確にしなければならない。「強み」とは、顧客価値を実現する上で、「自分たちにできて、他社にできないこと」だ。次のようなものは「強み」にはならない。

  • 長年の現場経験があり、現場実践の蓄積がある。
  • こんな機能がある、こんな性能がある。
  • 絶対に諦めないことを信条としている。

例えそれが事実だとしても、他社も同じことが言えるのであれば、それは強みとは言えない。また、自分たちの信条や事例を伴わない実績は、主観的評価であり、だれもが認める客観的な評価にはならない。

  • 20年間、ECサイトの構築に特化して業務実績を積み重ね、プラットフォーム、デザイン、決済、カタログ制作などの一切の機能を提供でき、札幌、仙台、東京、大阪、福岡に直営オフラインショップを展開し、デモや顧客の反応を直接聞ける仕組みを持っている唯一の企業。
  • 中核となる技術は特許を取得しており、他社が同様のサービスを提供することはできない。

このような言葉が、「強み」となる。ただし、それは「顧客価値を実現する」という目的において発揮される強みだ。特許を取っていても、それが顧客価値に結びつかなければ、何の意味もない。これが明確になっていなければ、容易に競合他社に代替されることになる。

次に、「お客様は何にお金を払うのか」を明らかにする必要がある。例えば、 スターバックスは、次の言葉をミッションとして掲げている。

自分の居場所のように感じてもらえれば、そこはお客様にとって、くつろぎの空間になります。ゆったりと、時にはスピーディーに、思い思いの時間を楽しんでもらいましょう。人とのふれあいを通じて。

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このミッションを実現するために、お客様が快適に過ごせるように、心地よいBGMを流し、テーブルや壁などのインテリア・デザインにも配慮されている。さらにWi-Fiや電源が無料で使えるのでPC作業など仕事でも使えるし、友人とのおしゃべりにも使え、一人で静かに本を読むこともできる。彼らは、このような居心地の良い空間をサードプレイス(第3の場所)と呼んでいる。ファースト・プレイスを家、セカンド・プレイスを職場や学校、そしてその二つの中間地点の場所であるサード・プレイスだ。お客様は、この「サード・プレイス」という価値に対価を払う。

サード・プレイスという概念は、社会学者のレイ・オールデンバーグ(Ray Oldenburg)の著書「The Great Good Place」にて提唱されている。

都市には都市居住者にとって生活上欠かせない「二つの居場所」に加え、居心地の良い三番目 の場所「サード・プレイス」が必要であり、「サード・プレイス」の在り方が都市の魅力を大きく左右する。 生活上欠かせない「二つの居場所」とは、ファスト・プレイス(第一の居場所)である家、セカンド・プ レイス(第二の居場所)である職場や学校である。「二つの居場所」の重要性は、全ての国・都市で 十分に認識されており、整備も進んでいる。しかし、「サード・プレイス」の必要性とその在り方は国に よって大きな差がある。アメリカの都市は西欧の歴史ある都市と比べると、この「サード・プレイス」が 見劣りし、これこそアメリカの都市魅力の弱点である。フランスやイタリアの「カフェ」、イギリスの「パ ブ」は西欧の「サード・プレイス」の代表事例である。西欧のカフェやパブには、アメリカの飲食施設 には存在しない"ゆとり、活気、コミュニティ"があり、市民の多くがそこを「憩いと交流の場」、即ち「サード・プレイス」として毎日のように利用している。この「サード・プレイス」の概念を表すキーワードとし ては「スロー」が相応しい。

お客様は、このサード・プレイスという「中核的価値」に対価を払う。もちろんコーヒーがまずくてはいけない。美味しい軽食やスイーツを提供することも必要だろう。しかし、コーヒーや軽食は、サード・プレイスという「居心地の良さ」の演出するための「付帯的価値」だ。

先に決めた「あるべき姿」を実現するために提供する商品やサービスが、お客様にとって対価を払うに値する「中核的価値」を提供しているだろうか。このことを問う必要がある。そして、「これならば、是非お金を払ってでも使いたい」と思えるものになっているかを徹底して議論し、もしそうでないとすれば、改めて「あるべき姿」と「実現する手段」を見直す必要がある。そして、再び「強み」を再確認する。これを繰り返すことで、お客様に受け入れていただける製品やサービスが明らかになる。

明日は、「実現するために必要となる条件や前提は何か」を考えてみよう。【続く】

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  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
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