SI事業者のための新規事業の進め方 1/3
新規事業開発の進め方について、三回に分けて考えて見よう。これは、あるSI事業者で取り組んでいるアプローチを参考にまとめたシナリオだ。人月積算型の仕事が大半を占める中、新たな収益基盤を模索してはじめた取り組みである。基本的には、次の5つのステップで進めている。
- 何をするかを決める
- 「強み」と「核心的価値」を明らかにする
- 試してみる、確認してみる
- ストーリーを描く
- まずは収益を上げる
1.何をするかを決める
「このビジネスの対象となる市場規模は、500億円あります。仮に、このうちの5%を獲得できたとしたら、25億円のビジネスが期待できます。」
よくある話だ。この会社も当初はそんなストーリーを描いていた。しかし、そもそも、これから新しくはじめようとしている事業に「市場規模」など想定できるはずはない。また、5%を獲得できるロジックがないのに、結果を期待できる道理はない。
自分達に都合の良い市場を創造し、そこでこちらの思惑通り行動してくれる顧客を創造し、それらを理由づける都合の良い統計と解釈を持ち込んで、経営者が納得させるためだけの事業計画書を創造する。そんな3つの「創造(=想像)」を積み上げても、うまくいくはずがない。
このようなことになる最大の原因は、「成功する事業計画を作る」ということが、目標になってしまうからだ。大切なことは、事業計画を作ることではなく、事業を成功させることである。そのために、何をするかをかんがえなくてはいけない。
このような「創造力」に無駄な時間を使わないためには、現場の一線で働いている人たち、特に「文句の多い、できる連中」を何人か集め、彼らの肌感覚で、「どんなことができるようになれば、お客様はよろこんでくれるだろうか」を徹底して、洗い出すことだ。お客様が見えている、あるいは、一緒に苦労している連中だからこそ、わかる感覚がある。まずは、それを明らかにすることだ。
ただ、気をつけなければいけないのは、「欲しい(Wants)」にそのまま応えるのではなく、その背後にある「必要(Needs)」を考えなくてはいけないことだ。例えば、お客様からPC x 100台の見積依頼を頂いたとしよう。これは、「欲しい(Wants)」だ。ここで、「なぜPC x 100台なのか?」をお客様に尋ねると、その目的、すなわち、「新商品の発売に合わせて、受注受付のコールセンター要員を100人増やすので、そのためにPC x 100台が『必要』」がわかる。つまり、「欲しい」は、「PC x 100台」であり、「必要」は、「増加する受注に対応すること」となる。
この「必要」こそが、お客様の目的であり、実現したい「あるべき姿」ということになる。もしその実現のためにPC x100台よりもっと有効な手段があれば、そちらを選択したいと思うはずだ。
まずはこの「必要」を明確にすることだ。その上で「欲しい」すなわち手段を改めて考えてみる。例えば、CRMを導入して応対時間を半減できれば、追加要員は半減でき、PCは50台で済み、人件費という固定費を半減できるばかりか、オフィススペースや設備投資も半減できる。あるいは、業務内容に踏み込んで考え、ビジネス・プロセスを見直すことで、全てをWebでの手続きに変えれば、人件費も設備投資も不要になる。こうやって、「必要」を満たす最適な手段を考えてゆかなくてはいけない。
また、それが、いまの自分達だけでできるかどうかは考えないことだ。それよりも、これなら受け入れてくれるはずだという仮説を持つことが優先される。
何をするかの前に、何を結果として実現するのか、つまりは、如何なるお客様の「必要」または、「あるべき姿」を実現するか明確にするかだ。どういう「顧客価値を実現するか」を明確にすることともいえる。それを実現する手段として何が最適な選択となるか。こういうことを考えることが、最初のステップとなるだろう。
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目次
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- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン