人間力を鍛える3つの原則
「ネットで、ITソリューション塾を知りまして、途中からではありますが、ぜひ今週から参加させていただきたく、メールいたしました。」
何年か前の話だが、こんなメールを頂いたことがある。そこには、さらに次のようなことが書かれていた。
「わたくし、社会人一年目でXXX(一部上場の大手システムベンダー)の情報・通信システム事業部門に勤務しております。」
つまり、今年入社したばかりの新入社員というわけだ。私は、「まずは、見学にいらっしゃい」と彼をさそい、水曜日の夜に開催されている「ITソリューション塾」に彼はやってきた。
講義が終わり、私は、新人君には、ちょっと難しかったかなぁと思いつつ、どうだったかと尋ねてみると、「難しかったですが、なんとかついてゆけるように頑張ります!」とのこと。なんとも、こちらが励まされる想いだった。
ノーベル文学賞受賞者でアイルランドの詩人であるウィリアム・バトラー・イェーツは次のように語っている。
「教育とは、バケツを水で一杯にすることではなく、火をつけて、燃やしてやることだ」
つまり、教育とは、知識を詰め込むことではなく、学びたいという意欲を持たせてあげることだ言うのだ。蓋し、名言である。
どんなに知識を学ぶ機会を与え、マナーを教えても、本人に探究心や向上心といった「人間力」が備わっていなければ、知識や能力は、営業力には、結びつかない。この人間力をどのように高め、引き出してゆくかが、営業力育成のカギを握っている。
しかし、「人間力」なるものは、抽象的で、主観的なものであり、これを評価することは、容易なことではない。しかし、評価のできないものは、コントロールできず、育成の方法論を議論することもできない。このジレンマに常に行き当たる。
簡単に出せる答えではないが、それを考えること、それ自体に、私たちは、改めて「人間力」の大切さに気付かされる。
では、イェーツが語るように「火をつけて、燃やす」ために、いったい何ができるのだろうか。それには、次の3つ原則があるように思う。
1.知らないこと、足りないことに気付かせる
危機感や不足感を満たそうという欲求は、だれにもある。自分に何が足りないのか、このままでは、自分は成長できない。その思いが強ければ強いほど、炎は大きく燃え上がるはずだ。
自分の能力を客観的な指標で評価し、他者と比較すること。仕事の手順や業績を見える化し、現状を客観視することなどは、気付きを与える一つの手段となるはずだ。また、対話することも大切だ。話し合う中で、自分が整理でき、客観視できる。
2.やらせてみて、体感させる
「このままではまずいぞ」と気付いたとしても、それは、限られた知識や経験の中の「想像」でしかない。本当にそうなのかを検証してみることが必要だ。とにかくやってみる。体感し、「想像」を「実感」に変えることで、初めて人はその知識や能力を手に入れるのだろう。当然失敗もある。その失敗から学ぶことも多い。
3.セーフティ・ネットを用意する
「失敗して当然」を前提としてチャレンジさせる。それが成長の原動力になる。しかし、最近は、過剰なコンプライアンス意識の高まりの中で、「失敗は許されない。あってはいけない」を前提とした組織も多い。確かにコンプライアンスは大切だが、過剰な抑制は、むしろ成長の芽を摘む。それよりも、何かあったら誰かが助けてくれる、相談できる、そんな風通しの良い組織を作ることのほうが、はるかに有効だと思うのです。
このセーフティ・ネットがあれば、失敗も小さなうちに表に出てくる。そして、適切な指導をすれば、それもまた学びの機会になるはずだ。
私たちは、時にして知識やスキルを教え、学ぶことで個人の能力が高まると考えてしまいがちだ。しかし、教え、学ぶことは、目的ではなく手段であるということを思い返す必要がある。
教え、学ぶという手段を通し、自分に何が足りないのかに気付くこと。その不足感と危機感が、「火をつける」ことになるのだろう。そして、学ぶことによって、成長できる実感を、よろこびとして感じることが、真の目的あることに気付かなければならない。そのために「セーフティ・ネット」を設ける必要がある。
件の彼は、誰に言われたわけではなく、自分で自分に火をつけた。なかなかできることではない。その炎を燃やし続け、さらに大きくしてゆくことをお手伝いすることが、私たち大人の役割なのだろう。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン