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いつまでに対処すれば良いのか、なぜ新規ビジネスが必要なのか

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「あなたのいうことは分かるが、いつまでに対処すればいいのでしょうか。」

「システムインテグレーション崩壊」の話をすると、こんな質問を頂くことがあります。しかし、現実を直視すれば、その答えは明白です。

いま、多くのSI事業者は、「需要が逼迫していても単金が上がらない」という現実に直面しています。そればかりか、このような状況であっても、単金は抑えられる傾向にあります。

少しでもコストを下げたいと考えるユーザー企業や元請け会社、新たな付加価値を示せず単金の値上げを言い出しにくい下請け会社。そんな構図の中で、短金相場は上がりません。また、新たな採用もままならない中で、社員の高齢化が進んでいます。そうなれば、給与の上昇は避けられません。

今後、工数需要がなくならないと仮定しても、この状況が続く限りは、売上は次第に限界コストに近づくことになります。そうなれば、仕事はあっても利益の出ない「雇用維持のためだけのビジネス」を続けてゆくしかありません。

それでもいいというのであれば、「まだしばらくは大丈夫」と申し上げることができます。しかし、成長したいと考えるのなら、すぐにでも対処しなければならない状況にあるのです。

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「ならば、今までやって来たことを地道に成長させることで対処できないのでしょうか。」

このような気持ちをもたれる方も少なくないと思いますが、それは容易なことではないと考えています。

なぜなら、「グローバル競争との対峙」、「競争原理の変化」、「異業種との競合」が、これまでのビジネスの延長だけでは、成長の維持を難しくしようとしているからです。

グローバル競争との対峙

2013年、OECDが発表した労働生産性調査によれば、我が国の労働生産性は、加盟34カ国中21位で、一位のルクセンブルクの約5割、3位の米国の約6割程度しかありません。つまり、投入した労働力に対して得られる価値が諸外国に比べて極めて少ないという現実です。先日のブログでも紹介したとおり、我が国の生産年齢人口の減少は、「労働力の喪失」を招きつつあります。また、ビジネスのグローバル化は、必然的に海外との競合を招きます。

>>迫り来る「システムインテグレーション崩壊」の予兆

オフショア開発やクラウドは、まさにこの現実を突きつけています。このようなグローバルとの競合は避けることはできません。そのためにも、これまでとは異なるビジネスのシナリオが必要となるのです。

競争原理の変化

1970年から1980年代の日本の労働生産性は世界一位でした。しかし、現在は先に示したとおりです。この現実は、日本企業のビジネス・モデルそのものが劣化傾向にあることを物語っています。つまり、高度成長期から行われているビジネス・モデルではどれだけ努力しても、負荷価値を生み出すことが困難になってきているという事実があるのです。

かつて我が国は、「いいものを、安く、大量に作ること」すなわち「費用対効果」を追求することで、高度経済成長を成し遂げてきました。しかし、モノは広く行き渡り、単純な費用対効果では、モノを買わなくなってしまったのです。また、経済成長と共に労働単価が上昇したことで「費用対効果」さえも出せなくなってしまい、モノ作りは労働単価の安い新興国へシフトしてしまいました。

情報システムもこのようなユーザー企業の状況と同期しています。つまり、コスト削減や期間短縮を目的としたシステム開発は、ほぼ一巡してしまい、需要は減少しています。ここでも、単純な費用対効果が、需要に結びつかない現実に直面しているのです。一方で、ユーザー企業のビジネス・モデルの変革や競争力の強化にITをどのように活かすかが求められるようになってきたのです。

この要請にSIビジネスも応えてゆかなければなりません。しかし、他社との差別化もままならず、工数を提供するだけのビジネスに依存していては、この要請に応えられないことは言うまでもありません。

異業種との競合

航空会社が、お客様に提供する価値を「近くの空港から遠くの空港へ移動すること」だと考えれば、競合は他の航空会社です。しかし、「地理的に遠く離れた場所へ移動すること」だと定義すれば、新幹線や高速バスも競合になります。さらに「地理的に遠く離れた場所とコミュニケーションすること」だとすれば、テレビ会議システムが競合になり、「地理的に離れた場所にあるものを手に入れること」とすれば、インターネット通販も競合となります。

また、人工知能やロボットの進化は、これまで人間にしかできないと思われていた仕事を代替してゆくでしょう。たとえば、無人で走る自動走行車は、タクシーやトラックの競合となるでしょう。また、プログラム開発やシステムの運用も人工知能やクラウドに置き換えられてゆきます。つまり、これまで競合を意識してこなかった相手が、テクノロジーの進化と共に新たな競合として市場を奪い合うことになるのです。もはや競合は同業だけではないのです。

「自分達のビジネス価値は何か」を改めて問い直す必要があります。その上で、新たな競合をも意識した競争のシナリオを描く必要があるのです。

「グローバル競争との対峙」、「競争原理の変化」、「異業種との競合」に対処するには、もはや工数積算型のビジネスでは限界があります。だから新たなビジネスへの取り組みが求められているのです

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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

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