歴史から振り返るITトレンドの未来
新入社員研修で、ITトレンドの話をするときの最初のページを作りました。やはり最初に伝えるべきは、過去から今に至る大きなITの歴史的変遷だろうと思っています。
- 1960年代〜 メインフレームの登場と集中処理/業務効率や生産性の向上
- 1980年代〜 PCの登場によるクライアントサーバーの普及・分散処理/適用業務領域と利用者の拡大
- 1990年代〜 インターネットの登場による接続の広がりと拡大/企業や地域を越えた業務の連携や調整の実現
- 2000年代〜 ITのカンブリア大爆発・モバイル、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボットなどの登場と普及/テクノロジーのアンビエント化、日常への浸透
コンピューターがビジネスの現場に登場するのは、1950年代です。1964年のIBM System/360、今で言うメインフレームの登場で、コンピューターは、多くの企業で使われるようになりました。1980年代に入り、PCの登場やオフコン・ミニコンといった小型コンピューターの台頭で業務への適用領域と利用者が一気に拡大します。その後、1990年代、インターネットの登場は、システムが低コストで相互に接続する世界を作り上げてゆきます。その結果、企業や地域を越えた大規模な業務の統合や調整が実現するようになったのです。そして、21世紀を迎え、クラウドの時代へとつながってゆきます。
この辺りから、時代は、大きな転換点を迎えはじめました。インターネットの普及とクラウドの登場は、どこにいてもネットに接続さえすれば、様々なサービスを享受できる世界を実現しました。その結果、コンピューターの利用者は、これまでとは桁違いに拡大し、コンピューターの処理能力もこれまでとは桁違いの加速度で拡大するようになったのです。これをWebスケールといいます。また、2007年のiPhoneの登場と期を同じくして登場するTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、このWebスケールの拡大をさらに加速し、膨大なデータを生みだしました。ビッグデータ時代の到来です。
Webスケールなインターネットとクラウド、そこから生みだされたビッグデータは、IoTの普及と共にさらに拡大する勢いです。このような基盤を支えに人工知能やロボットが、私たちの日常を大きく変えようとしているのです。
私は、この10年がそれ以前とは大きく様相の異なる出来事が起こっているのではないかと考えています。「ITのカンブリア大爆発」と私は呼んでいます。
「カンブリア大爆発」とは、およそ5億5000万年前に、それまで数十数種しかなかった生物種が突如1万種にも爆発的に増加した出来事です。様々な形態を持った生物が生まれ、食うか食われるかの競争と淘汰を繰り返しながら生物の多様性が育まれ、生態系築かれてゆきました。今の時代は、そんな時代の延長線上にあると言われています。
「ITのカンブリア大爆発」は、人工知能やロボットと言ったスマートマシーンの進化が引き金となるでしょう。そこには、これまでのテクノロジーの脈略からは、大きく逸脱した新しい常識が生まれつつあります。その最も大きな特徴は、日常の中にごく自然に入り込んで、気がつけば全てが人工知能やロボットを使っている時代を迎えつつあると言うことです。
人工知能と言えば、WatsonやSiriなどのいかにも人工知能と思えるようなサービス、ロボットといえば、アシモやペッパーなどのヒューマノイドを思い浮かべるかもしれません。しかし、誰もが普段使っているコンパクトデジカメは高度な画像認識機能を持ち人の顔や動きを見分けて、人が意識しなくても美しい写真を撮ってくれます。自動車も自動運転とは行かなくても人の動きや突然の障害物を見つけて自動的にブレーキをかけてくれます。また、ルンバなどのお掃除ロボットや実用化が間近な自動走行車や配送のためのロボットなど、多くの日常に関わるモノが人工知能とロボットの機能を持つようになってきたのです。それらが、インターネットに繋がり、巨大な知的ネットワークが生まれようとしています。
そこには、これまでとは明らかに異なるIT活用の新たな可能性がどんどんと生まれてくるでしょう。そして、競争と淘汰を繰り返し、ITの新たなエコシステム=生態系を形成してゆくことになるのだろうと思っています。
私たちは、このような歴史の脈絡の中に生きているのです。ITが、未来にこれまでにも増して、大きな影響を持つ世の中になること。そして、その中で、未来を作る大きな役割を担おうとしていること。この現実を新入社員にもしっかりと理解させ、この世界で働くことの意義も合わせて、彼らに考えさせなくてはなりません。
昔も今も大切なことは、後になって気付くものです。だからこそ、歴史から未来を考えることの大切さを伝えなくてはなりません。大切なことを気付く力を持った人たちを育てることが、会社の次の世代を築き成長させる原動力になるのです。
そんな新入社員のための「最新ITトレンド研修」教材を掲載しましたので、よろしければご覧下さい。また、講師のための「新入社員のための最新ITトレンドの教え方」と理解度テストも掲載致しましたので合わせてご覧下さい。
新入社員を迎えたいま、是非そんな機会を作ってみては如何でしょう。
残席僅少になりました。
ITソリューション塾・第19期を募集しています。
- クラウドと仮想化の違いを説明できますか?
- IoTとビッグデータの関係を説明できますか?
- DevOps、アジャイル開発ってなんですか?なぜそんなに注目されているんですか?
ITに関わる皆さんにそんな「常識としてのIT」身につけて頂く研修です。
- 期間:2015年2015年5月21日(木)〜7月22日(水) 毎週2時間x10回
- 場所:市ヶ谷・東京
- 講義資料(パワーポイント:約500ページ)はロイヤリティフリーにてダウンロード
第19期は、基幹業務での利用が加速するクラウドの新たな位置付け、IoTやアナリティクスについて、これまで以上に掘り下げてみようと思います。また、ビジネス戦略の策定やIT人材のあり方や育成についても考えます。
また、DevOpsやアジャイルはもはや外せないテーマです。実践ノウハウにまで踏み込んで、専門家による特別講演を予定しています。セキュリティは、「起こさないための対策」と「起こってからの対策」を体系化して解説します。前者はテクノロジーや業務運用、後者は法律専門家や広報ということになるでしょう。
セクシーな提案書の作り方、顧客満足の科学など、お客様との応対力を高める実践ノウハウも解説します。
定員は75名を予定しています。現在60名ほどのお申し込みを頂いております。まもなく定員を超えることが予想されますので、まだ未定の場合でもご意向だけメールにてお知らせ頂ければ、参加枠を確保させて頂きます。
詳細な日程や内容につきましては、こちらをご覧下さい。
「ITの最新トレンドとビジネス戦略」【2015年3月版】 リリース
全て無料でご覧頂けます。今回の改訂の目玉は、以下の3点です。
*「コレ1枚で分かる最新ITトレンド」を全面改定。
IoTの位置づけを見直し、Cyber Physical Systemsについての記述を追加しました。
最新の解説もダウンロードできます。
*IoTの記述を追加し、より分かりやすいものにしました。
IoTとソフトウェア制御の関係やIoTデバイスのスタックにつ
*「アナルティクスとビジネスインテリジェンス」
こんな方に読んでいただきたい!
- IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
- IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
- IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
- 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
- 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。
「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン