研修をエンターティメントにできなければ講師の価値はない
最近、世界的規模でインターネットを使って無料のオンライン授業を公開する「大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course、通称ムーク)が大きな話題を呼んでいる。参加大学や利用者は拡大を続けおり、その関心は一般にも広がってきた。海外での急速なMOOCの進展に対応し、我が国でも、2013年2月に、東京大学が、同年5月に、京都大学が参加を表明している。また、スクーのようなジャンルを問わないWeb講義も登場した。このような取り組みは、いずれ企業研修でも広まってゆくだろう。
それでもわざわざ時間を割き、お金を出してまで研修に参加するのは、「絞り込み」と「演技」に価値を求めるからだ。
「絞り込み」とは、何が枝葉で、何が幹かを整理し直し、それをわかりやすいチャートや言葉で伝えてくれることを言う。
限られた時間の中で、何が重要で、それがどういう意味を持つか、どのように実践や日常に役立つかを端的に示してくれることだ。書籍では、どうしても網羅的となり、このような絞り込みは、読者に任されてしまう。そこを変わってやってくれることに価値がある。
一方、ネットの情報は、いくらでも無料で手に入るが、偏りがあるものが多い。また、あまりにもありすぎて、必要とする情報を絞り込むことがは、容易ではない。また、特定の製品やサービスに特化した内容であったり、特定の価値観や経験でバイアスが掛かっていたりもする。そういう情報を俯瞰して「絞り込み」、整理して説明を受けられるのも講義の価値だろう。
テキストや資料を記述の通り伝える講義では、本や資料を自分で読むことに変わりはない。もちろん講師のバイアスは避けられないが、その視点も含めて「絞り込み」された情報を受け取ることが、講義には求められている。
そんな「絞り込み」のうまさを評価する基準は、「わかりやすさ」だ。つまり、受講者の興味や関心、仕事の背景などを忖度し、その場に合わせた物語を仕立て上げて伝えるかどうかで「わかりやすい」かどうかは決まる。
教えられたことは、物語の文脈がなければ、記憶に定着しない。例えば、辞書のように言葉の解説を語られても、「わかりにくい」と感じるのはそのためだ。その場にふさわしい物語は、既に受講者自身の中にある体験とつながっており、それは記憶のアンカーとなる。これに引っかけて語ることが、「わかりやすさ」を感じさせ、記憶への定着を促す。このような「わかりやすい」講義を設計しなければいけない。
もうひとつの「演技」は、エンターティメントとしての研修を演出できることを言う。
私は、講義で受講者を眠らしてしまうことの8割りは講師の責任だと思っている。話が面白くない、あるいは、受講者との対話を怠り、こちらの話を変化させていないから居眠りを誘うのだ。
対話と言っても、質疑応答やディスカッションのことではない。講義をしていると、驚くほど受講者の様子が分かる。つまらなそうだ、疲れてきた、どうもうまく理解できていないようだ、などと受講者の感情が見える。そういうことに対処することも講師の役割だ。講師の中には、そんなことにはお構いなしに自分の知っていることを蕩々と話される方もいるが、それでは、相手に伝わっているのかどうかが分からない。
「そんなことは、受講する側に意欲があれば、問題にはならない。受講者に意欲がないことのほうが問題だ。」
こんな意見もある。そのとおりだと思う。しかし、研修は、はある意味、接客業だ。そう言う人をもその気にさせて、楽しませてこそ仕事である。接客の善し悪しが収益に直結していることを忘れてはならない。
情報は巷にあふれ、本当に学びたい人にとっては、いくらでも情報源がある。そして、それら情報の多くは、ネットを介し、無償で手に入る。お金を払ってまで講義に出ようということは、内容以上に「講義という時間」を買おうという方だ。その期待に応えなければいけない。つまり、その場を楽しみ、短時間で効率よく知識を定着させたいのだ。これが、研修ビジネスの顧客価値(value proposition)ではないか。そう考えれば、講師は、「絞り込み」と「演技」を追求すべきだ。それができるからお金を頂けることを忘れないようにしたいものだ。
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