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問われる情報システム部門の存在意義と求められる施策(1/2)

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今日と明日の2回に分けて、情報システム部門の向かうべき方向について考えてみたい。

「情報システムは『必要悪』である」とする認識が、未だ我が国の企業経営者には根強くあるようだ。「業務で必要なことは理解できるが、必要最低限であればそれでいい。技術が進歩しているんだから、工夫次第でもっと安くなるはず。」そんな意識があるのかもしれない。その証拠に、情報システム予算は常に削減の対象だ。

情報システム部門は、常にコスト削減の圧力にさらされ、その努力を強いられている。一方で、情報システムはなくてはならない業務のインフラとして、安定稼働は当然であって、ひとたびトラブルなど起きようものなら、手抜きや怠慢と言われかねない。

このような状況であるにもかかわらず、グローバル化、ビジネス・スピードの加速、法律や規制の変更など、これまでにも増して情報システムの需要は拡大し迅速な対応が求められている。ただ、その予算は、情報システム部門の予算でやりくりしなければならない場合も多い。

彼等は、残業や休出も厭わず働いている。また、増えない予算の中でコストを切り詰め、浮いたお金を使って、このような経営や業務のニーズに応えるべく血のにじむ自助努力を重ねている。

経営者は口をそろえてIT活用の重要性を語る。そして、情報システム部門のより一層の経営への貢献を期待する旨の発言をする。しかし、このような状況では、情報システム部門のモチベーションを高めるどころか、維持することさえ難しい状況へと追い込んでいる。

経営と情報システム部門の間に横たわるこのような意識の乖離の根底には、「情報システムは高すぎるのではないか」という疑心暗鬼が、あるからかもしれない。

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ユーザーに見えるのは、結果として提供される無形のサービスだ。その背後にある情報システムの実態に、どのようなお金がかかっているかが見えない。それが理解されないままに、「なぜこんなに高い経費をかけなければならないのか。もっと工夫すれば安くできるのではないか。」といった疑問が払拭されないことが、問題の本質にあるのではないか。

理解する努力をしない経営や業務部門が悪いのか、うまく説明できない情報システム部門が悪いのか・・・結局は、お互いがお互いを理解しようとせずに、経営や業務部門は、「ITのことは難しいので専門家である情報システムにまかせているから」といい、情報システム部門は「経営や業務のことはかれらの責任であり、我々は彼等からの要求にきちんと応えるだけ」と、自分たちの領域を出ようとしない。

情報システム部門が、業務や経営に関わる発言をすると、経営や業務の管理者から、こちらの話に余計な口をはさむなと言われ、あるいは、ならばいまの予算の範囲で、何とかやってくれと求められ、ますます内向き思考を深めてゆく。このような内向きかつ縮小均衡の関係が、情報システム価値工場を阻害している。

世界規模でCIOの課題を調査したガートナーのレポートがある。これを見ると、我が国の現状は、グローバルな競争に取り残される可能性を示唆している。次のような一節がある。

「世界のCIOが重視するIT戦略は、1位が「ビジネス・ソリューションを提供する」・・・中略・・・となっています。なお、「ビジネス・ソリューションを提供する」は、日本では10位以下のランキング圏外となり、世界と日本の差が見られます。」

ここでいう「ビジネス・ソリューション」とは、情報システム施策を意味するものではない。売上や利益に貢献するためのソリューション、すなわち、ビジネス・モデルや業務・経営のプロセスに関わる戦略や施策を意味している。つまり、日本では情報システム部門が関与してはいけない(?)領域に積極的に関与してゆくことを、世界のCIOは強く意識しているということになる。

世界の企業は経営や業務の課題を、ITを使って解決するだけではなく、事業の拡大や市場の創出にITを積極的に活用することで、自らの成長と競争力を高めてゆこうとしている。一方で、日本の企業は、コスト削減を努力し、業務や経営に余計な口出しをしないことで、自らの存在を縮小均衡で維持しようとしている。

このようなことが今後も続くとすれば、ビジネスのグローバル化が加速するなかで、日本の企業は国際的な競争力を失ってゆくことになるのではないかと危惧せざるを得ない。

この変化に、経営や業務部門も、いずれは意識し始めるはずだ。そのとき、その対応を情報システム部門に求めても、彼等にその意識がなく、スキルも体制も整っていなかったとすれば、「そんな情報システム部門はいらない」となるだろう。もし彼等がそのことに気づくことなく、これまで通りのIT施策を続けようとするならば、事態はもっと深刻なことになるかもしれない。

この変化に情報システム部門は、どのように対処するか。そのためには、「守りのIT」と「攻めのIT」を明確にし、メリハリをつけた施策を打ち出すべきだろう。

明日は、「守りのIT」と「攻めのIT」について、整理する。

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ITのトレンドとビジネス戦略について、集大成したプレゼンテーションです。毎月1回、「テクノロジー編」と「戦略編」に分けて更新・掲載しています。

【2015年1月版】より「テクノロジー編」と「戦略編」の2つのプレゼンテーションに分けて掲載致します。

「テクノロジー編」(182ページ)

  • ストーリー展開を一部変更しました。
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    • Webスケールとクラウドコンピューティングについて追加しました。
    • パブリック・クラウドとマルチクラウドの関係について追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」の追加修正。
    • M2MとIoTの歴史的発展系と両者の違いについて追加しました。
    • ドイツのIndustry 4.0について追加しました。

「ビジネス戦略編」(49ページ)

  • ストーリー展開を一部変更しました。
  • 2015年問題の本質というテーマでプレゼンテーションを掲載致しました。
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