ソーシャルメディアとの連携を狙った動画プロモーション
最近、ソーシャルメディアと簡単に連携できる機能をユーザーに提供した、新しい動画プロモーションの事例を目にする。ただし、ソーシャルメディアと連携するといっても、大そうな仕掛けが必要なわけではない。動画再生プレイヤーの下か横にtwitter、facebook、mixiのアイコンを表示させ、そのアイコンから直接サービスにリンクすることができる機能を提供するという非常に簡単なものである。ちょっと前からあるにはあったのだが、ここ最近頻繁に目にするようになった。
たとえば、下の図のユナイテッドアローズのキャプチャー画面を参照してほしい。左から順番にmixi、facebook、twitterのアイコンが並んでいるのがわかるだろう。そして、それぞれのアイコンは、各サービスと直接連携できるようになっている。
つまり、動画を視聴し終わったユーザが、mixiのアイコンをクリックすればmixiのサービス内にチェックすることができるし、facebookのアイコンをクリックすれば「いいね!」のコメントをfacebook内に書き込むことができるというわけだ。もちろん、twitterのアイコンをクリックすれば動画再生ページのURLをツイートすることもできる。
「なんだ、たったそれだけのこと?」と思われるかもしれないが、たったこれだけのことがユーザにしてみればもの凄く便利なのである。もしもこれらのアイコンがない状態で、このユナイテッドアローズの動画を知り合いに広めるとすると、次のような作業が必要になってくる。
①ウェブサイトのURLをコピーする
②コピーしたURLをbittyで短縮する
③短縮したURLを再度コピーする
④コピーしたURLをペーストしてツイートする
少なくとも最低3つのサービスを行き来しなければならないわけで、一度にたくさんの内容をツイートしたい時などは結構面倒である。
そういう意味では、ソーシャルメディアと連携可能なアイコンが存在することの有難味は、実際にソーシャルメディアを利用しているユーザでないとわからないのかもしれない。アイコンのクリック一発で投稿できる機能は、ソーシャルメディアを頻繁に利用しているユーザにとって、もはや欠かすことができない機能の一つになっている。
そもそも、動画とソーシャルメディアを簡単に連携させることができる機能にどんな意味があるのか。それは、動画とソーシャルメディアと簡単に連携させることで、ウェブサイト上で配信している動画のバイラル(感染)効果を期待しているからである。できるだけ大勢のコンシューマに動画を見てもらうために、ソーシャルメディアを最大限活用するという動画プロモーション戦略である。
ただし、ここで注意しておきたいことが一つある。それは、動画とソーシャルメディアを連携させるというこの手法は、あくまでもバイラルすることを期待しているにすぎないという点である。バイラルすることを明確な目的にしているバイラルムービーとは全く異質なものだという点は良く理解しておく必要がある。
というのも、ソーシャルメディアと連携することでバイラルを期待される動画は、制作の時点からバイラルすることを確固たる目的として制作されたバイラルムービーと違って、内容自体にバイラルする力がない場合が多いからである。というよりも、バイラルすることを意識して制作されたムービーではないと言った方が正しいだろう。
バイラルムービーではなくても、ソーシャルメディアの力を活用してバイラル効果を期待する。これが、動画とソーシャルメディアを簡単に連携させることの一番の狙いだ。ちょっと前までだったら、バイラルムービーの一番相応しいステージと言えばYouTube以外には考えられなかった。ところが、ソーシャルメディアの登場が、その固定観念を大きく変えてしまった。
バイラルムービーのステージはもはやYouTubeだけではない。工夫次第では、企業のウェブサイトもバイラルムービーのステージなりえることを、ソーシャルメディアは教えてくれたといえるだろう。