■ 入れ歯を作り直さずに症状を解決した90代の患者さんの話。
口をへの字に曲げた仏頂面で入っていらした90代男性Sさん。
「だいぶ、やさぐれた(なげやりになった)時期がありまして ......。」
付き添いのご家族の話を伺うと、そんな気持ちになるのも仕方のない状況でした。
いつものように近所のクリニックへ診察に行ったSさん。
診察と薬だけで帰るつもりだったのですが ......。
定期的に撮るレントゲンを見た医師からは、いつもの柔和な笑顔が消えていました。
心臓が倍の大きさになっている。
急性心不全です。
即、入院。
処置が早かったため命に別状なかったものの、昨今のコロナウィルス対策のため家族との面会はできず。
Sさんは1か月も家族に放っておかれたと思い込んでいました。
さらに追い打ちをかけたのが入れ歯です。
入院中に体重が減ってスッキリとした体形になったものの、痩せたために下アゴの総入れ歯があわなくなってしまいました。
入院患者さんのために訪問診療でいらした歯科の先生はSさんの口内を見て「新しく作るしかありません」の一点張り。
しかし40年以上も入れ歯を使い続けてきたSさんはよく知っていました。
新しく入れ歯を作ることが必ずしも解決にならないことを。
もちろん訪問歯科の先生も患者さんのために一生懸命に考えて提案した治療方針とは思いますが、Sさんは治療をお断りしました。
そして退院後にふたたび当院にいらっしゃいました。
上の入れ歯は当院で治療していたからです。
コロナの影響で長期入院される前から当医院で治療を受けていたSさんの治療方針は決まっていました。
実は以前も長年使っていた入れ歯が歯グキと合わなくなったことがありました。
そのときティッシュコンディショナーという歯科専用の安定材を使った治療を行っています。
次回は下の入れ歯も同様の処置をする予定だったのですが長期入院されてしまったのでそのままになっていました。
そんなこともあってSさんは退院後にご家族と来院してくれました。
今回の治療は、Sさんの歯グキの様子と嚙み合わせたときの力のかかり具合を考慮して、ペースト状のティッシュコンディショナーを最適な状態になるように調合して入れ歯に塗布。
その場で装着してもらい硬化を待ちます。
ほんの10分ほどで治療は完了です。
歯グキとピッタリ合った入れ歯を入れたSさんは来院前とは段違いの装着感に満足されたようで「こういう治療をしてくれる先生に出会えて本当によかった」と言ってくださり、ご家族と一緒に笑顔で手を振って帰られました。
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