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ユーザにとっての使い勝手のよいITについて考える

SaaSによるメーカの試練

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電気、ガス、水道、IT・・・のようにコモディティ化した情報システムはSaaSの形式で利用料モデルへの移行が進むという考え方が叫ばれていますが、ひとくくりにITといってもどこまでがコモディティ化(必需品)となっているのかは、難しいところではないかと思います。

つまり、電気や水道を使わないで生活することは困難ですが、どこまで情報システムを使わないとどこまで企業活動に影響がでてくるのかという点です。受発注や請求管理のような基幹システムは確かにないとダメだと思いますが、現状見渡して見れば、使われていないシステムは多くあるのではないでしょうか。

情報システム以外でもそうですが、利用者が商品やサービスを購入する場合、将来にわたってもたらされる自分への利益を期待して対価を支払うことが基本だと思います。しかし、本当にその対価が得られるかどうか、・・・得られない場合も少なくありません。家や車など資産価値が高いものは売却することもあると思いますが、なかなか難しいものもあります。

私は家電が好きなのですが、購入する時には、いろいろパンフレットを見て、必要だろうと思って上位の機種を選定することも少なくありません。振り返ってみると、最近買った一眼カメラはほとんどバックの中に眠ってますし、使う場合もシャッターを押す、見る、保存する位しか使いません。多分、機能の10%位しか使っていないんじゃないかと思います。今、再考できるとすると、いくつか下のランクのものを選択する可能性もあります。

ITでも、よく聞くのは、お金がかかっているので、使いにくいけど使わないといけない・・・。買ったけどほとんど使っていない、一部機能しか使っていないなどなど。従来ITも初期投資が必須だったので、投資を回収するためには多少の我慢をすることも必要でしょうし、場合によっては使わないままということにもなりかねません。

上記の状況がSaaSへ移行すると、ユーザにとっては、初期投資が不要になりますし、途中で解約する、オプションの契約を解除する、ユーザ数を削減するなど、柔軟に対応ができます。従来からすると、将来の価値を期待して初期投資するリスクが軽減されることになりますが、その一方でSaaS(システムサービス)を提供するベンダー側には、開発費用の回収が遅くなる、途中で解約されるリスクを常に背負いながら投資判断が必要になるなどの対応が必要になります。

本来使われないものにお金を払っていたユーザ、そこである程度の収益を得ていたベンダーの構造が変化することで、システムを開発するベンダーには試練となり淘汰が進むことになるんだと思います。

そういう私もSaaSサービスを提供しているので、上記のことを重く受け止めながらサービスを提供しています。パッケージを販売した経験はないのですが、SaaSはユーザの声が直に届きますので、その点では、使われないシステムになる前に、使われるように改善することができるメリットも強く感じているこの頃です。

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