日産リーフは世界を変えるのか?!(試乗記)
本格的な生産が開始され、12月にはデリバリーが予定されている日産の電気自動車リーフ(LEAF)。
今日は追浜にある日産のテストコース(GRANDRIVE)で、発売前のリーフをドライブすることができました。
GRANDRIVE高速道路、市街路、首都高の段差、うねりのある路面など、通常の自動車利用に近い状況でテストを行うことができる施設で、そのコースは3.7kmもあるんだそうです。
会場に着くと早速、2台のリーフが目に飛び込んできました。
販売されるときには複数のバリエーションがあるようですが、用意されていたデモカーはみんなテーマカラーのブルー。
さらに2台のTIDAが停まっていたのは、ほぼ同じ車格のガソリン車との比較もということのようです。
実際にコースに出る前に、まずはレクチャー。
冒頭は日産で紅一点の執行役員という、市場情報室の星野朝子さんのご挨拶から。Twitterなどでお見かけしている雰囲気よりもっとチャーミングで素敵な方でした!
ちなみに、星野さんのTwitterアカウントは@nattochazukeですね。
また、リーフや電気自動車については、@NISSANEVというアカウントがあります。
レクチャーでは、リーフについて床下にレイアウトされたバッテリーによる運動性能や航続距離を伸ばすための電子制御など、また日産の電気自動車普及に向けての詳しい説明があり、参加者からの質問にも丁寧にお答えいただきました。
ちょっと面白い話だったのは、電気自動車の自動車税は排気量1000cc以下の一番安いカテゴリに含まれるという話。実際には排気量は0ccなので、現行の税制ではそういうことになるのだそうです。
内装も、特に奇をてらうことなくきれいにまとめられています。
メーターやシフトノブ(のようなもの)がちょっと普通の車とは違うかなというくらい。
電気自動車はエンジン音が無いので(モーターの音が多少あるとはいえ、いまどきの低騒音の車に比べてもうんと静か)、ドアミラーの風切り音にも気を配って対策されています。ヘッドライトの形状を工夫してミラーに当たる風を少なくして音が出ないようにしてのだそうです。
これは話には聞いていましたが、実際の車両を見るとギュッと飛びだしたかなり面白いヘッドライトになっています。
座席の下にバッテリーユニットが置かれていることから、リアシートはけっこう高い位置になっています。
とはいえ、大人の男性が座ってもまあまあなんとかなる空間は確保されています。
低重心でボディ剛性も同クラスに較べると40%アップ(バッテリーを搭載するにあたり安全性を高めたことなどが寄与しているそうです)、高速時の騒音も高級車並みに低減されていて、印象としては高級車と遜色ない乗り心地になっているとはいえ、まあそこはCセグメントですから、といったところでしょうか。
タイヤはブリヂストンのエコタイヤ、ECOPIA(205 55 R16)が装着されていました。
実はコレ、市販のECOPIAではなくてリーフ専用に開発された特別なものなんだそうです。
燃費、いや電費?を考えるともう少し細いタイヤがついていてもいいのでは?と質問したところ、車重やボディサイズ(3ナンバー)から安全性やコーナリングなどの走行性能を考えると、このくらいをしっかり選択するのが日産のポリシーですというお答え。
エンジンは無いけど、モーターとインバーターが入っているボンネットを開けると、なんとなくヘッドカバーのようなものが目に入ってきます。
このあたりの仕上げは、先日このBLOGでも書いたベタープレイスのEVタクシーに較べてとても綺麗です。まあ、当然でしょうけど。。
写真では見えませんが、小ぶりなラジエータも入っています。これは、モーターとインバーターを水冷で冷却しているということです。
一方、バッテリーは、特に冷却はしていないとのこと。
パソコン用などで使われる18650型の民生用リチウムイオンバッテリーを多数組み込んでいるテスラロードスターの場合、熱対策でバッテリーの周りをウォータージャケットでくるんでいるそうですが、リーフの専用リチウムイオンバッテリーは、ラミネートパックされた平べったい電池を組み合わせるかたちにすることで、放熱性が高く敢えて冷却する必要は無いんだそうです。
汎用品を使ってコストを下げて、そのために発生する問題は別途解決するやり方と、あらかじめ想定される障害をクリアする専用品を自社開発するやり方、これから発展しようとする産業における各社の知恵の競い合いはとても興味深いところです。
そして、まずガソリン車のTIDAでコースを一周。
これはこれでよくできたクルマです(^_^;)
値段は半分くらいですから、比較対象にしてもいいものかどうか?という話もありますが、それはさておき。
次にリーフで同じコースを走ります。
回転が上がるにつれてトルクが出るガソリン車と異なり、回転し始めると同時に最大トルクが出るモーターならではの加速。
というのがひとつの特長と説明でもありましたが、印象としては思ったほど劇的ではありませんでした。
思ったほどというのは、実はこれまでにテスラロードスター、三菱のi-MiEV、市販車をEVに改造したコンバートEVと呼ばれるものなどを運転してきた経験からすると、おとなしい。
テスラロードスターの、言い方によっては粗削りな、別の言い方をするとスポーツカーのような加速とはかなり違う世界でした。
たぶん車格としては下になるiMiEVと較べても、ドカンというような加速をするわけではないように感じました。
モータの仕様がi-MiEVで最高出力64kW/最大トルク180N・mに対し、リーフのそれは、80kW、280N・m
車重はi-MiEVが1100kg、リーフは未公表
おそらくリーフは重量もそれなりではないかと推察されます。
とはいえ、これも考えようで、本気で量産車として年間何万台も販売しようとするクルマは、テスラのようなモーターの特性をまんま表に出したのでは、ガソリン車から乗り換えようという一般のユーザには違和感がありすぎるということかもしれません。
従来の自動車の概念を電気で駆動させるEVに上手に引き継いで、さらに新しい自動車としてのスタイルをつくっていこうというとするアプローチなのだと思います。
では、日産はスポーツカーや、オープンカーのEVを作る計画はあるんですか?
と聞いたことろ、将来はわからないが、現時点では未定ですとのこと。
近い将来で追加しようとしているのは、商用車やシティコミューターが先だそうです。
たくさん売ろうと思ったら、確かにそこらからですかね。
でも、スタッフの方も排気ガスの出ないクリーンなEVで窓を全開にして環八を走れるとか、山の木々の中をオープンで静かにドライブできるとしたら素敵ですよね、とおっしゃってました。
ちなみにこの方、自身ではフェアレディZ432を所有だそうです。キャブレター仕様だし、まあ環境性能は・・・ですけど、そういう人がEVに関わっているというのはとても素敵なことだと感じました。
最高速や限界性能を試すサーキット走行のようなテストドライブではなく、あくまで実際の利用シーンを想定した試乗なので、無茶したときのことはわかりませんが、40-50km/hでのコーナリングでもリーフの回頭性、安定性が高いことがわかりました。
また、首都高の継ぎ目を模した路面でのショックは明らかにTIDAよりもマイルドで、車体は水平のまま車輪だけが上下している感じがしました。これは足回りの違いというのも大きい要因のような気がしなくもないですが、低重心やボディ剛性が寄与しているのでしょう。まあ車重が重いというのもあるかも。。
総じて言うと、日産リーフはデザインも工夫はされているとはいえ、突飛なものではなく、走りの印象もオーソドックスに仕上げられている、EVの優等生。
世界トップクラスの大メーカーが現実的に世に問うとこういうクルマになるということでしょうか。
ただ、逆にEVの市場はこれからの新世界で、またライフスタイルや自動車そのものに対する考え方が変わっていく可能性があるのだとすると、もっと思い切った提案があってもいいのかも、とも思ってしまいます。
実際、日産の歴史の中ではいろいろな未来カーが提案されています。
大企業のメインストリームを考えるとビジネスには、優等生が重要なのはわかりますが、もしできることなら、別会社ででも突拍子もない新しいEVも登場させてくれると楽しいだろうな、などと勝手なことを考えてしまいました。
それも逆に、大会社だからこそできる、技術力とEVに対するコミットメントがあるメーカーだからこそできることかもしれませんから。
本日の試乗イベントでお世話になった日産のみなさん、また、貴重な機会をいただいた、LOVECARS 河口まなぶさん、一緒に参加されたみなさん、ありがとうございました。