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僕のこと夢想家だって言うのかな?★書評『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』

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ビジョン、理念、理想、目標、目的、理念、理想、夢…えーっと何だっけ?

これらの単語は、人が何かを行う上で根源的な行動規範になるような言葉であり、ある時はモチベーションを呼び起こすような言葉たちだ。

けれど残念なことにこれらは、あまりにも安易に使われすぎていて、例えば皆さんの会社で社長が「この夢を実現するために頑張ろう」みたいなことを言えば、陳腐な感すらしてフーンと聞き流してしまうこともあるだろうと想像する。

今回ご紹介する、『ビッグデータ・アナリティクス時代の 日本企業の挑戦』(著:大元隆志)は、この陳腐とも誤解されがちな言葉を一生懸命に忠実に、そして情熱をもってチャレンジし、ビジネスを創製してきた企業やプロジェクトにほ携わってきた人達の姿を生々しく描いた良書だ。

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本書ではIDC、ガートナーといったグローバルな調査会社による、IT環境やそれによって個人のライフスタイルすらをも変化を促すファクターとして、4つのキーワードを抜き出し、それに著者が予測するもう一つのファクターを加えた「4+1」というキーワード軸にに話が進められていく。

ここでいう「4+1」とは何か?それは

  • クラウド
  • ソーシャル(メディア)
  • モバイル
  • インフォメーション/データ

の4つと

  • IoT(Internet of Things)

を加えた「4+1」の5つの概念のことだ。このIoTとは何か?

例えば自動車における車載のGPS等から発信される位置情報、速度、ブレーキ回数、運転時間などの情報のことであり、コンビニエンスストアのPOSデータから収集される、購入したコーヒーの銘柄、価格、年代、性別といったデータのことだ。
すなわち、都内で言えばSuicaやPASMOなどの交通系電子マネー、家電など、従来の用途に関わらずインターネットなどを通じて、情報集積のデバイス・端末の類のことだ。先のように、今存在するものを数え上げるだけでも枚挙にいとまがない。

本書で著述されている範囲は、ITのプラットフォームから日本企業の体質的課題、今後スタンダードになっていくだろうテクニカルな話、組織論まで実に幅広い。

けれど、「4+1」の概念こそが次世代のITの形や企業、ビジネスのオペレーションをも変えていくポテンシャルある概念であり、また、ある意味通らねばばらない必然の道なのだ。本書ではそれに積極的に取り組んだ日本企業、そして組織や企業の枠を超えてビジネスにチャレンジした人物にスコープして、それを生々しく伝えている。

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その中のから一つの例として個人的にも思い入れの深いCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)社の話にスコープしてみようと思う。

ここではTポイントカードのビッグデータ・アナルティクスを通じた、価値構造の変革が語られている。
ユーザーの、常に手元にある携帯電話のアプリやWEBサービスを利用することによって、一般的にはリアル店舗に足が遠のきがちと思われていることに反駁し、リアル店舗の新たな存在価値の定義、その在り方の変容を示している。また、武雄市における図書館の民間企業としての運営委託の取り組みを通じてそれを語っている。

Tポイントサービスは元々「KITプロジェクト」として、当時カメラのキタムラ社との共通ポイントカードを作るというものだったハズだ。それが今日の広がりとサービスとしてソフィスケイトされている現在の様は、立ち上げ当時の誰の想像をも超えるものになっているだろう。

筆者はここに「4+1」に加えて、もう一つある種の力が働いたことでそれが強力に推進されたと記している。それが、プロジェクトに関わる「チーム」「個人」の高いパフォーマンスのことだ。そのパフォーマンスを創出していたものが「ビジョン」の共有だったという。

Tポイントに限らず、その企業としての強力な創造性は、そこにチームが共有するビジョンがあり、使命感があり、信念があるからこそ、CCCはCCCたり得るのだろう。

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これはCCCに限ったことではない。本書の中でも具体的な取り組みを紹介されている、トヨタ、凸版印刷、ヤフー、サイボウズなど、全て企業についてビジョンの重要性を説いている。

ビジョンの重要性は僕みたいな小僧が改めて言うまでもなく、古くは経済・社会学の古典であるバーナードの「経営者の役割」で「協働」という言葉を用いて、共通する目的が強く共有されることで組織や集団としてのパフォーマンスが高くなることを説いている。

FACEBOOK然り、Google、Amazonなど、これら現在のITのリーダー達は、既存の常識や枠組みをぶち壊すほどインパクトのあるビジョンを夢を現実のものにしてきた。そして、そこにはビジョンを強く共有しビジネスを創製するチーム、個人達がそこにいたハズだと思うのだ。

「You may say ”I'm a dreamer”」

本書の著者である大元隆志氏は当オルタナティブ・ブログのブロガーの一人でもあり、また気鋭のエバンジェリストであり、そして僕の尊敬する友人の一人でもある。

そんな彼もまた、dreamerの一人だと僕は思うんだけどな。

<了>

正林俊介


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