Amazonは世界最悪のブラック企業!?-例えば良い経営者は人格者であるという幻想について-
世の中には風説、通説、信奉、の類はあまたあふれているけれど、「良い経営者=人格者」といのも、願望、先入観、希望的推測だと僕は思っている。
先日、以下のニュースが飛び込んできたのをうけてその思いを強くした。
労働組合の国際組織、国際労働組合総連合(ITUC)が5月に実施したアンケート調査で、「世界最悪の経営者」に米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏が選ばれた。(略)
とのこと。
>>『ぶっ飛んだ経営者』ジェフ・ベゾス氏の求心力とは?
AmazonのCEO、ジェフ・ベゾスの人格破綻、ぶっ飛びぶり、はつとに有名だ。
部下を罵倒し、過大なノルマを設定し、失敗した部下は吊るし上げ、強引な企業買収を独断し、今回の記事では物流倉庫の過酷な労働環境が指摘されている。あまりの、ぶっ飛びぶりにAmazonを去る重役たちがも多い。
けれどそんな環境にも関わらず、AppleやGoogleのように優秀な人材が集まってくるのは何故だろう。そしてビジネスとしての成功を勝ち取っているのは何故か。
それは、ベゾス氏が「Amazon」というビジネスモデルの将来に明確なビジョン、そしてそれをやり遂げる強い意志と行動力があるからだ。クリエイティブで革新的なビジョンを行動して指し示すこと、それを共有することがベゾス流の求心力なんだと思う。
経営学の古典「経営者の役割」(チェスター・バーナード著)によれば、組織を構成、維持するために最も重要なファクターは「協働」という概念であるとされている。後にこの「協働」という概念は多くの経済学者によって検証されていくもののだけれど、基本的な概念は、現在においてもなお通じるものだ。
バーナードによれば「協働」とは、組織を構成する要員が共通して認識する「目標」「目的」であり、そのための「行動規範」となるべきものだ。バーナードは「協働」を実現するためには、自己の人格や自由な行動が「協働」の範囲の中で規制される、とある。
ジェフ・ベゾス氏が打ち出す強力なビジョンは、Amazonという巨大な企業組織をまとめうる絶大な魅力を持った「協働」意識として働いているのだろう。だかこらこそ、優秀な人材がこぞってAmazonに集まってくるのだ。
>>消費者にとってのAmazonとは
僕個人はAmazonのサービスを快適に利用している。購入のプロセスは簡便だし、配送も早い。Kindoleは素晴らしいコンテンツを有したデバイスである。Amazonが国内で多くの利用者がいることからも、多く人は同じように感じているのではないか?
AppleやGoogleといったベンダーとの違いはクリエイティブな価値を提供する、という点においては同じ様だけれども、彼らは革新的なテクノロジーや技術を駆使して新たな価値を提供する。消費者が思いもよらなかったサービスを世の中に提供するという点において、Amazonの一歩先を行っている印象を受ける。
それに比して、Amazonのサービスというのは、「こんなことが出来たら良いな」とか「こんなことが出来たら便利だな」と僕らの日常に寄り添って思うことを愚直に、極端なまでに徹底的に追求し、生み出されてきているものだと、思うんだ。
ベゾス氏にこんな言葉がある。
顧客に対する執着も重要です。それは、競争相手ではなく、顧客を中心に戦略を考えると言うことです。競争相手の戦略を真似るのはアマゾン流ではありません。むしろ顧客にとって何が一番良いのかを考えて行動します。
まさに、消費者達の利便性を徹底して追求する、同社の姿勢を表すものだ。ベゾス氏にとってテクノロジーはそのための手段でしかない。
>>リーダーの条件
正しいリーダー像というのは、何だろう?
様々な書籍やセミナーで、取り上げられるテーマだけど「本当の正解」というのははっきり言ってよく分からない。腑に落ちない。
組織の文化的側面や構成するメンバーによっても、求められるスキルというのは異なるハズだから。
ジェフ・ベゾスの言わば「剛」のリーダーシップだけが正しい訳ではないだろう。
何も僕だって、従業員を必要以上に酷使することは間違っている、という常識くらいは持ち合わせている。
けれど、ただ言えるのは良い経営者、リーダーというのは常に「顧客」に対して、驚きや満足を提供できる人のことではないか?そしてそれを、利益として自身に還元できる人のことなんではないか?だから人格者であっても、会社に利益をもたらせなければ意味が無いし、「顧客」に価値提供できなければ、それは本末転倒だからだ。
「良い経営者=人格者」というのは、周囲の信頼を得やすいために正しいと思われがちだけれど、それは幻想に過ぎない。
顧客に価値を提供し、企業に利益を上げていけば、人格は関係なく信頼は得ることが出来る。例えばその信頼は銀行の融資をを引き出しやすくなるわけだし、顧客の満足を勝ち取ることが出来、企業が存続することが出来るからだ。
<了>
正林俊介