【1stホールディングスとセールスフォースが業務提携】-ケイパビリティについての考察-
皆様こんにちわ。鈴与シンワート株式会社の正林です。
4月16日に1stホールディングスとセールスフォース・ドットコムが業務提携に関する発表を行ないました。
1stホールディングス(以下「1st」)は、BIツール「Dr.SUM」や帳票作成ツール「SVF」、セキュリティ関連などの独自製品を有するPKGベンダーです。
セールスフォース・ドットコム(以下「SF」)は云うまでもなく米国のクラウドSFAソリューションを有する、グローバルにおけるクラウド・アプリケーション・ベンダーのリーダーとなるベンダーになります。
今回、この提携によって何が起こり、或いは何が起こらないのか?ということについて私見を述べていきたいと思います。
-提携の内容と狙い-
今回の提携は、1st社から第3者割当によりSF社への株式譲渡を行なうスキームとなります。
つまり、SF社の1st社への資本参加による業務提携ということになり、パートナーシップをベースとした業務提携に比して、強力なパートナーシップを目指した、とも捉えられます。
SF社としては、1st社の持つBI技術やレポーティング技術を同社のソリューションである「SalesForce」へのバンドルを行なうことで、製品競争力の強化を狙っているといえます。また、1st社としては「SalesForce」ユーザーのスケーラビリティに対して、自社製品の拡販を目論んでいることは間違い無いでしょう。
では、この提携によって得られるケイパビリティ或いはシナジーとはどの程度のものになるのでしょうか?
SF社が「SalesForce」に、「Dr.SUM」や「SVF」をグローバルで展開するスタンダードなツールとして捉えているかと云えば、それは「NO」と云わざるを得ないと考えます。SF社にとって1st社はあくまで日本国内ローカルで実績のあるツールベンダーとしての位置づけに過ぎないでしょう。
逆に1st社とすれば、国内市場だけであっても「SalesForce」ユーザーを市場として捉えることは魅力あることと思われます。この提携を、国内企業の海外進出を機にアジア圏への拡販を目論んでいるかもしれません。
上記のような概略からの考察をもってしても、今回の提携によるシナジーはそれほど見込めないのではないか?と考えます。
その理由として、
● SF社が本気ではないと思われること
>>これは今回の提携によって同社が取得する株式は「86,100株」となっており、発行株式に対する割合はわずかに0.25%に過ぎない点
● 「SalesForce」の製品特性
>>「SalesForce」には元々、アプリケーション開発用の独自のAPIが用意されており代替するものが出てくる可能性が高い点
● 1st社が負担するロイヤリティの問題
>>これに関しては、完全に想像の域を出ませんが、提携による主導権はSF社にあると仮定すれば、何らかのロイヤリティを1st社が負担することになることも考えられる。これによる負担または薄い利益で甘んじなければならないとすれば、投資回収から販管費の負担は相当に重いはずである点
など。3番目は全くの仮説に過ぎないので、これを除いたとしても提携関係が貧弱であることがボトルネックになってくると考えるのです。
今回の提携はSF社はリスクを負うことなく、1st社が負担するリスクは大きいと想像します。
1st社が「提携という事実」をいかに老練に活用するのか、どのような戦略を描いているかが興味深いと思うのです。
<了>
-正林 俊介-
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