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今年一番のお気に入りBlu-rayタイトル

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 久々の更新になりますが、今年一番とも言える素晴らしいBlu-ray Discに出会えたので、エントリーを作っておきます。HDソフトのフォーマット統一されて1年を超え、一部に品質の低いディスクが増えてくるなどの問題も出てきていますが、一方でBlu-rayフォーマットの長所を活かしたタイトルが出始めてきました。

 ひとつはグラミー受賞ジャズ・トランペッターのクリス・ボッティの米ボストンでのライブを収めた「Chris Botti in Boston [Blu-ray] 」。もうひとつは70年の時を経て蘇った超絶技巧による修復が施された「ピノキオ 」です。我が家には仕事で評価したもの、個人的にコレクションしたものなど、合わせて500本ほどのBlu-rayタイトルがありますが、その中でもトップ10に入る良作。中でもChris Bottiのライブはトップ3、音楽ものの中では間違いなく最良の1枚だと思います。

 Chris Bottiはすでに、Blu-rayで「Live: With Orchestra & Special Guests [Blu-ray] 」というタイトルを2007年に出していました。その演奏と録音の質も大変に良かったのですが、今回のボストンでの録音はそれを遙かに凌いでいました。

 ボストンでの演奏も、前回のBlu-rayと同様にオーケストラをバックに、彼と彼のバンドが演奏、さらに多くのゲストを招いて様々な楽曲をコラボレートするのですが、Dolby TuerHD 7.1チャンネル(しかも24bit/96kHz)で収録されたトラックの質がものすごくいい。

 おそらく録音、ミックス、マスタリングのすべてがうまくいった証左なのでしょう。トランペットの音は、鮮度の高さを感じさせる鋭さ、ダイナミックに変化する表情の深さを保ちながら、しかしウルササや耳障りな音を全く感じさせず、ふんわりと柔らかい音場で包み込んでくれます。
 Blu-rayには、ロックやジャズはもちろん、オペラやバレエ、シンフォニーなど各種の音楽ソフトが増えてきていて、手元にあるだけでも40枚ぐらいのディスクがありますが、今年一番どころか、今出ている音楽ものBlu-rayの中で、圧倒的ナンバーワンの質だと思います。

 ゲストも幅広く参加しており、大の仲良しであるスティングが3曲に絡んでいるほか、ジョシュ・グローバン(クラシック系の曲を得意とするポピュラー歌手。シャルロット・チャーチとデュエットしたThe Prayerで有名)、ヨーヨー・マ(説明不要の世界的チェロ奏者)、ジョン・メイヤー(こちらも説明不要のブルース、ロックアーティスト)、ルチア・ミカレッリ(クラシックにとどまらず、プログレ系ロックの演奏もこなす情熱的なヴァイオリニスト)、スティーブン・タイラー(ご存じエアロスミスのヴォーカル)、キャサリン・マクフィー(アメリカンアイドル出身の女性ポップ歌手)、サイ・スミス(ソウル歌手)などが参加しています。

 ヨーヨー・マとの競演では、しっとりとした哀愁漂う演奏でホロリと涙を誘いますし、ルチア・ミカレッリとの競演もまた情熱的で見入るでしょう。サイ・スミスと競演するThe Look of Loveは、ものすごくファンキーで思わずからだが動く。

 一方、4年間連れ添ってきたバンドメンバーとの息はピッタリで、ゲストの参加しない楽曲もまた、ジャズ初心者からジャズマニアまで幅広く楽しめる円熟の完成度が高い演奏を楽しめますよ。ここまで完成度が高いコンサートとなると、果たしてこの先どうなることか。まだ若いのに本当にこの先の領域があるのか?と思わせる完璧なバランスです。

 同じ録音はCD でも発売されており、限定でコンサートDVDが付属するバージョン もありますから、Blu-rayプレーヤをもっていない人は、そちらを……となりますが、是非、ハイビジョン映像と一緒に楽しみたい。ライブ・コンサートならではの緊張感や演奏者同士の掛け合いは、映像ソフトならではです。また限定版に譜属すDVDも、仕様を見るとどうやら2チャンネル収録の模様。サラウンド環境をもっている人ならば、完成度の高いBlu-rayの7.1チャンネル音声はシステムをチェックするためのリファレンスとしても活躍してくれそうです。

 と、Chris Bottiのディスク紹介が長くなりましたが、もうひとつそろそろ発売の「ピノキオ 」についても触れておきたいと思います。ピノキオは1940年の公開で制作は1939年。つまり70年前に制作されたアニメーション映画ですが、以前に紹介した眠れる森の美女よりも、さらに進化した修復技術で、現代に蘇りBlu-rayタイトルになりました。

 "蘇った"というのは、決して極端な言い方ではありません。ディズニーの修復チームは眠れる森の美女で素晴らしい色を再現しましたが、一方で手書きの風合いが若干損なわれていることに不満を持っていたそうです。
 そこで手書きの映像を分析し、どのように筆を動かして描かれたのかなどを自動判別しながら、手書きによるプロセスをシミュレートするように映像を修復させたそうです。最終的には50人のスタッフがタブレットを使って手動の修正を行うのですが、その前段階の修復技術が進歩したことで、まるで新たに描き直したような美しい映像です。
 映像圧縮とオーサリングは、高画質との信頼が定着しているPHL(パナソニックハリウッドラボ)。担当者はナイトメア・ビフォークリスマスのBD版圧縮を担当とまったく同じ。安藤時枝さんがメイン、秋山真さんがサブのコンプレッション担当だったようです。

 4:3のスタンダードフォーマットですが、作画の丁寧さは眠れる森の美女よりも明らかに上で、コマ送りで見ると、あまりに丁寧に1枚1枚を描いていることに驚かされることでしょう。芸術的にも、技術的にも、高画質ソフトの事例としても素晴らしい出来。資料的な価値も含め、一度は見て欲しいソフトになっていました。お勧めです。

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