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プロセス、戦略、人間学の視点からプロジェクトを眺めます。

結果はマネジメントできない。マネジメントできるのはプロセスだけ。

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こんにちは。
プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。

きょうは「マネジメントのハンドル」についてです。

■ マネジメントできないものをマネジメントしようとする愚

プロジェクトは、あらゆる経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報)をインプットとして、それを加工し、価値を高めながら、最終的な価値を顧客にとどけるまでに、プロセスの連鎖です。

期待する成果を生み出そうとすれば、結果に至るまでの「プロセス」をマネジメントする必要があります。結果が出てから、「あーだ、こーだ」言っても仕方ないのです。結果は出てしまっているのですから、受け入れるしかありません。結果をマネジメントすることはできないのです。

成果を生み出せないマネジャーは、マネジメントできない「結果」を、マネジメントしようとします。結果が出てから「なんで、こんなことになってるんだ!!」と言い出すのは、プロセスをマネジメントできていないからです。

しかし、プロセスをマネジメントせず、マネジメントしようとするケースは、世の中には多くあります。

■ koboの失敗はプロセスにある

楽天のkoboが「アクティベーションできない」という不具合が続出し、苦情が殺到したようですが、この事態に対して執行役員が以下のようなコメントをしています。

ITMediaニュース 「大きなミスを犯してしまった」――楽天koboに何が起きたのか

発売までのスピードを重視したのは事実ですが、大事なプロセスはすっ飛ばしたわけではありません。事前の検証は十分にやっていたつもりでした。ハードウェアの製造についてはカナダのノウハウが、サプライチェーンは楽天グループの経験があり、不安はありませんでした。

 ですが、日本語対応、日本語組版で縦書き、かつEPUB3に合わせていくことに困難が伴いました。Koboのファームウェアはほかの国でも提供しており、日本語特有の問題を除いては、問題なく利用できるものでしたが、振り返ってみると、すべてにおいて、日本語特有の問題がありました。

「大事なプロセスをすっ飛ばしたわけではない」と言っていますが、一方で「日本語固有の問題があった」と言っています。こういったハード、ソフトは、日本語で問題が出るのはわかっていることです。「日本語環境で評価する」というプロセスをすっ飛ばしたから、もしくはうまくプロセスをデザインしなかったから、こういった事態になっているはずなのです。

プロセスに問題はなかった、日本語という特殊な条件が原因という認識ならば、問題は今後も続くでしょう。結果をマネジメントしようとしているからです。

■ マネジメントのハンドルを手放すな

ビジネスにおいては、スピードを重視しなければならない状況、品質よりも「まずは出すこと」を重視しなければならないことはよくあります。しかし、必要なプロセスをすっ飛ばしても「早くはならない」ことを、マネジメントはよく考える必要があります。

また、問題が起こったときに、それをプロセスに原因を求めず、条件に原因を求めるのであれば、条件が変わればまた問題が起こることになってしまいます。問題は条件ではなく、それを処理するプロセスにあるのです。

マネジメントできるのはプロセスだけです。プロセスをすっ飛ばすということは、マネジメントのハンドルを手放すということに等しいのです。

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