VE世界大会(Value Summit)レポート ワシントン編 3日目 いよいよ本番!
さて、いよいよ Value Summit 最終レポート。テクニカルプレゼンテーション本番です。
と、その前に、「そもそも Value Engineering とは何ぞや?」ということをお話しておく必要がありますね。それがなければ、論文発表といっても何のことだかわからない。
Value Engineering とは?
Value Engineering (VE)とは、プロダクトやサービスの「価値(Value)」を向上するための系統だったプロセスを持つメソドロジー(方法論)です。
VEではこの「価値(Value)」を以下の関係式で捉えます。
ここでVEを特徴づけているのは、価値を「機能とリソースの比」で捉えているところです。VEでは、プロダクトやサービスの価値を向上するために、その「function(機能)」に着目します。これを「ファンクショナルアプローチ(機能的研究法)」といいます。
VE、そしてファンクショナルアプローチは、第2次世界大戦直後の1947年、当時、GEの調達課長であったLawrence D. Miles によって開発されました。開発された当初は、主に Value Analysis(VA)と呼ばれていました。
VAとして開発されたこの方法論は、大戦終結後の国防予算の大幅縮減という状況にありながらも、国防力の維持という課題に取り組んでいたアメリカ国防総省の目に留まることになり、Value Engineering と名づけられ導入されました。その後も、導入と発展は続き、1996年には、国防総省だけではなく、すべての調達においてVEの手続きとプロセスを行なうことが立法化されています。
なぜ、Value Engineering?
私の専門はもともと、プロセス設計・改善と、そこから展開するプロジェクトマネジメントです。なぜここで、VE、ファンクショナルアプローチなのでしょうか。
じつは、この VE や、Functional Approach は、他のさまざまな管理技術に大きな影響を与えています。たとえば、プロジェクトマネジメントの世界でも利用されることの多い「品質機能展開(QFD)」は、「機能」というワードが使われているように、ファンクショナルアプローチの考え方を導入して開発されたものです。
VE や、その特徴であるファンクショナルアプローチは、プロジェクトマネジメントやプロセス設計、意思決定プロセスなど、他の問題解決手法と組み合わせて展開することで、大きな相乗効果が生まれます。
また、顧客、プロジェクトオーナー、プロジェクトマネジャー、プロジェクトメンバーなど、すべてのステークホルダーが「function(機能)」という共通言語を持つことできるようになります。
ソフトウェア要件開発、業務分析、プロセス設計、プロジェクトマネジメントと、このファンクショナルアプローチは非常に相性がいいんですね。私自身、この考え方を適用して大きな成果を上げることができました。その結果をまとめたのが、去年、今年の論文ということになります。
発表当日
さて、むずかしい話はこれぐらいにして、ワシントン3日目。
いよいよ、発表本番です。目が覚めると朝4:00です。外はまだ真っ暗。サマータイムなので、日本で言えばまだ3:00ですから、当たり前。それでも、うっすら明るくなってきています。
私の発表は15:00〜17:00のブロック。3番手なので16:00ぐらい。
その前に、昼休みにはアジア大会のプロモーション、そして午後イチには、いっしょに参加している友人の発表があります。私はどちらもカメラマンを仰せつかっております。
その日に発表がある人は、朝7:00から Speaker Breakfast Meeting があります。その日プレゼンする人たちは、みんなより少し豪華な朝食が出るんですね。
去年のこの朝食がすごく美味しかったので、とても期待して行ったのですが、今年はイマイチでした・・・。まぁ、ホテルが違うんで、同じように期待しちゃいかんのですが。というわけで、写真も撮っておりませんw
Speaker Breakfast Meeting では、プレゼンターとしての注意点、話し方からポインターの使い方まで、細かく説明があります。さすがは、スピーチとプレゼンの国。そして、最後には「あなた達は、数多くの論文の中からとくに優秀であるとして選ばれた人たちです。自信を持ってプレゼンに臨んでください」とアゲることも忘れないのもアメリカンな感じ。
調印式
午前中は、アジア大会のプロモーションブースにいたり、部屋で最後のプレゼン練習。
そして、お昼になりランチの時間。この日のランチはすごく重要なイベントが。
日本VE協会と、SAVE International とのあいだで、日本で国際大会を開催することの合意、調印式があるのです。
調印式の会場に向かっている途中で、「Hidenori SHibamoto はあなたか?」と呼び止められる。Air Bus に務めている人で、発表テーマにとても興味があるとので教えてくれとのことでした。
プロセスフローダイアグラムの使い方と手順、考え方について説明。言いたいこととがパッと英語で出てこず苦戦。もっと英語の勉強しなきゃ。
そして、なんとか説明を終えて、調印式へ。
左から、大会実行委員長の佐藤嘉彦氏(VPM代表取締役社長)、SAVE International 会長のクレイグ・スクワイヤーズ氏(nwis代表)、国際担当のドリュー・アルガス氏
そして、このとき友人で、いっしょにVEを学んでいる内田佳代さんが、自分のプレゼン直前にも関わらず「浴衣美人」に扮して、「日本に来てね!」とアピール。
私はそのまぶしさに目が眩んでいますw
調印式のあと、アメリカ以外から参加しているメンバーが集まって、「VEを今後、より世界中に広めるためにはどうすればいいか」「国際的な交流を深めるには何が必要か」などを議論。
さっき、質問に来てくれた人は、スペインから参加されてました。
みんな熱い!
いよいよ、発表
午後イチは内田佳代さんのプレゼン。
私はカメラマンを言い渡されたので、会場を縦横無尽に歩き回るw
彼女の本業は「歯科衛生士」で、VEの分析手法のひとつ「感性VE」をつかって、億劫になりがちな歯科受診のハードルをいかに下げるかという研究(たぶん)について発表されました。
教え子の発表を見つめる横田尚哉氏。
VEの世界でも医療分野、かつ「感性VE」を使った研究はめずらしいので質問が飛ぶ。
いよいよ自分の発表が近づいてくる。一度、部屋に戻って、もう一度、通して練習する。何回もやるとさすがに飽きる・・・。
さすがにもういいかなと、発表を行なう部屋に向かう。
私と同じブロックには、プロジェクトマネジメントに関わる発表が集められている。カナダ、アメリカ、ハンガリー、そして日本と国際色豊かな発表。
ハンガリーの人の発表を聞いている私。次が自分なので、それなりに緊張している。
そして、いよいよ呼び出される。
たぶん、モデレータに紹介されているとき。
この発表では、
- これまでの「モデルベース」のプロセス改善の問題点
- VEを使ってどのように欠点を補うのか
- プロセスフローダイアグラムの活用によるVEのプロセス改善への適用
- プロセスフローダイアグラムを使ったVEの実施手順
について説明。
プロセスフローダイアグラムについて説明。
やっとこ、発表が終わると、カナダのプロジェクトマネジメントの専門家が、「ビジネスカードをくれ」とやってきてくれたので、それなりにウケたのかもと一安心。
会場には、次のSAVE International 会長の Jim Bolton 氏も来ていて、夕食のときわざわざ「Good Presentation!」と言いにきてくれたのは予想外で、非常にうれしかった。
発表が終わるとこれがもらえる。
Award Banquet
発表が終わったその夜は、Award Banquet がある。ディナーを食べながらの表彰式があったり、その後、みんなで踊ったりします。
そのバンケットで、横田尚哉氏が表彰されました。
Rising Star Award!
VEは1947年に開発され、1959年に SAVE International が設立されていて、もう60年以上の歴史があります。歴史あるVEの世界で、若手でかつVEの発展に貢献している者、つまり「Rising Star」として表彰されたわけですね。史上5人目、日本人では初とのことです。
後に続きたいものです。
表彰が終わると、会場の真ん中でダンスタイムです。私は踊れないので、逃げるのですが、去年モデレーターをしてくれた Renee に捕まりました。
はい、まったく踊れていません(笑)
とってもかっこいい Renee
「アメリカの彼女って言ってくれてもいいわよー。でも、ダンナには言わないでねぇーー」と言っておりましたw
Renee と SAVE会長 Craig 、内田佳代さん
たのしそうw
バンケットも終わり、次の日の朝に帰国しないといけないので、部屋にもどって荷造り。
でも、なんだか飲み足りないので、ホテルのバーにいって一杯飲む。
そのあと、次の日に発表を控えているメンバーの練習におつきあい。
帰国
次の日の朝は、5時半におきて準備をして、ロナルド・レーガン空港へ。
ニューヨーク経由で東京に戻るも、ニューヨーク行きの飛行機がなかなか来ない。結局1時間近く遅れて飛行機がやってきた。遅延したことにとくに悪びれるふうでもなく、ここらへんはアメリカン。
ニューヨーク JFK空港についたら、羽田行きまでには少し時間があったので、空港内をブラブラ。
少しお腹が空いたのでマクドナルドを買って、共用フロアで食べてたら、となりのテーブルの男の子の本の読み方がめちゃくちゃかっこよくてビビる。
未来のオバマを見た気がした。
そして、無事に飛行機に乗り込み、また13時間。
結局、羽田についたのが22時すぎ。
いそいでバスに乗りたかったけれど、荷物がなかなか来ない。結局、23時すぎのバスに乗って帰宅。
これで、1週間の日程がすべて終わり。
かなり疲れたけど、相当な充実感。今回のアメリカ行きで学んだこと、次への課題などはたくさんありますが、それはまた改めて。
いやー、たのしかった!