ワークプレース変革の好機「未来志向のWindows XPサポート切れ対応」(9)
やんごとなき事情により、更新が滞っておりましたが、今年最後の更新となりました。このシリーズも9回目を迎え、今回を最終回といたします。
さて、前回はXP延命時のセキュリティ・リスク低減策をご紹介しました。今回は、社内でXPサポート切れへの対応に関する投資に理解が得にくい状況において、どのように対応を進めていくかという話になります。
ジレンマに陥る企業
XPサポート切れについては、以前の投稿記事「Mobile First いまが好機! ワークプレース変革をモバイルが先導する(前編)」にも記載しましたが、 近年のIT投資の増減傾向を確認すると、直近3年はこれまでと比べて、非常に低い増加率となっています。Windows XPはベンダーによるサポート切れという状況ですが、現状は稼働しているWindows XPの移行に関して、このような状況下で投資を行うという判断がされにくい場合があります。
一方、最近はDevOpsという概念が注目されており、既存環境の維持や運用への過度な注力を見直し、運用負荷の低い新しいシステムを生み出していくことに投資を増やしていこうとする傾向が起き始めています。ワークプレース環境においても、Windows XPの維持や単純移行ではなく、本来の業務に集中でき、新たな価値を創出するワークプレース環境の提供を見据えた対応に積極的に取り組んでいくべき状況です。
未来志向のサポート切れ対応
そのような状況下で、ヒントとなるデータがあります。2011年にIBMは、日本、オーストラリア、中国、インド、英国、米国を拠点とす るさまざまな業種の大企業を対象として、675 名の CIO および IT マネージャーにアンケート調査を実施しました(Global CIO Study)。この調査では、CIO および IT マネージャーの 74% が、今後 12 カ月間で他の IT と比較し、Flexible Workplace への投資に対する優先順位を高めていくとしています。また、今後3〜5年で最も重要視している先見的なIT計画の核として、モバイル・ソリューションを挙げています。他の調査結果でも、ワークプレース環境に関連するITとして、モバイルを注目している企業がとても多いことが示されています。
私は、「Mobile First いまが好機! ワークプレース変革をモバイルが先導する(後編)」において、Mobile Firstを、ワークプレース変革をするならばモバイルから、という意味合いの言葉として使いました。XPのサポート切れへの対応についても同じことを言いたいと思います。
例えば、現在使っているWindows系アプリケーションをモバイル・デバイス(いわゆるiOS端末やAndroid端末)に提供する場合、クライアント仮想化技術を用います。サーバー基盤上にて稼働したアプリケーションを画面転送にて、モバイル・デバイスから利用できるようにします。
そのシステムの創出した利用上の価値が高ければ、クライアント仮想化技術の適用範囲を拡大することも理解されやすいでしょう。
XPサポート切れを迎えた端末の移行先として、新しいWindows OS環境(Windows 7/8)を、すでに構築されたインフラ基盤上の仮想デスクトップから提供するという新しいデスクトップ形態も採用しやすくなると考えています。その際、仮想デスクトップとして提供するのは、Windows XPではないことに注意です(参考:「Windows XPの延命策としては採用しづらいデスクトップ仮想化」)。
投資しやすいモバイル環境への整備を足がかりに、Windows XPの次のOS環境の提供を斬新な形態にて実現していくという算段です。
クライアント仮想化技術のもたらすメリットには様々な点があります。そのメリットを享受することで、いつでもどこからでもフレキシブルに業務が可能なワークプレースを実現することも可能になります。
このようなアプローチにより、XPサポート切れへの対応を、単純なOSの更改ではなく、モバイルへの対応も含めたワークプレース環境の抜本的な変革のタイミングと捉え直すことができると考えています。これがこのシリーズにおいて未来志向というタイトルを名付けた意味になります。
振り返ってみると、2013年はこのブログという情報発信の場を得られて非常に有意義でした。2014年はいよいよXPサポート切れの年です。価値のある情報が届けられるよう、今後も引き続き、情報発信に力を注ぎたいと思います。