Windows XPの延命策としては採用しづらいデスクトップ仮想化[ソリューション・デザインの現場より]
数回に分けて、Windows XPサポート切れへの対応に関する話題を投稿していますが、特記しておきたいポイントが首記「Windows XPの延命策としては採用しづらいデスクトップ仮想化」です。
ここでは、2014年4月9日以降もWindows XPを使い続けることを延命と呼び、そのための方法を延命策と位置づけています。
この延命策に、デスクトップ仮想化技術を利用するという話がお客様からもSIerからも聞こえてきます。その理由は以下によるところが多いようです。
- Windows XP端末の老朽化による故障頻度上昇
- Windows XP端末の調達が困難
私は、以前記載したように、企業におけるWindows XPの利用継続は、セキュリティ・リスク増大とユーザーへの新規サービス提供にマイナスの影響が生じるため、移行推進の立場を取っています。進歩をし続けるIT業界と、ITへの依存度が益々増している社会を見ると、旧態のデスクトップ環境を今後も利用することは、最終的に社会の発展に貢献するビジネスの開発・提供には結びつかないと考えています。
したがって、XP環境をごく一部のみ残すことは考えられますが、新しいデスクトップOSへの移行を後回しにしたXPの延命策としてのデスクトップ仮想化は推奨しません。ごく一部の環境として、利用する場合には、条件が整えばWindows XPモードの利用が簡易的であると考えます。
【デスクトップ仮想化は新しいデスクトップ環境の提供にこそ、適用を】
デスクトップ仮想化は、PC上にて稼働するOSやアプリケーションをPCとは異なるハードウェア上で稼働させ、その実行画面をPC上に転送する技術を用います。予め、仮想化製品を用いてハードウェアのリソースを分割し、複数のOSから利用できるようにします。そのOSはWindows XPやWindows 7、8などが対象となります。
XPアプリの移行が完全に済んでいない状況で、Windows 7端末の導入を進めようとすると、従来のXP端末と合わせて1ユーザーが2台持つ事態が発生します。その際、ワークスペースや運用の観点から、2台持ちを避け、XP端末を仮想化する、という発想が生じます。
しかしながら、前述のWindows XPモードと異なり、この仕組みの構築は技術的に複雑であり、コスト的にも大きな投資です。旧OS(Windows XP)の延命のために新しいインフラを構築・提供することは、私は以下の観点から否定的です。
【Windows XP利用終了後のデスクトップ仮想化インフラ活用戦略の立てづらさ】
Windows XPを仮想化し、Windows 7などの新しい端末を導入している場面を想定しています。XPアプリの移行が進み、Windows XPの需要がなくなった場合、デスクトップ仮想化のインフラをどのように再利用するか不透明な状態に陥る可能性があります。物理端末で一旦、Windows 7を展開し始めている場合、後から仮想デスクトップとしてWindows 7を提供すると、同一OSについて二重のデスクトップ提供形態となります。今後のアプリの提供方法などの運用に課題が生じることになるでしょう。
【デスクトップ仮想化のメリットを十分に活用し切れない】
デスクトップ仮想化では、デスクトップ環境を利用する際にデバイスフリーであること、ロケーションフリーであることなどを始めとした各種のメリットが訴求されます。しかしながら、延命策として利用する場合、仮想化されたWindows XPとは別にメインとなる端末を利用することになり、結局は端末への依存が強く、デバイスフリーともロケーションフリーとも言えません。
私は、デスクトップ仮想化技術の活用を検討する際は、仮想化するOSはWindows 7などの新しいOSにすべきだと考えています。新しいインフラでは、新しい環境を提供する方が価値が高いと感じます。改修や切り替えを中心としたXPアプリの移行が完了するまでの間、Windows XP端末の利用を継続し、その端末からWindows 7などの新しいデスクトップ環境を利用することがより良い選択だと考えています。
そして、Windows XP端末は徐々に削減し、シンクライアント端末などの採用を進め、デバイスフリーを実現していく。OSやアプリケーションのバージョンアップが度々行われる現在の事情を考慮すると、端末とOS、アプリケーションの依存関係を少なくしていくことが将来の移行を踏まえた上では重要なことだと考えています。