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【中国人に聞いた Vol.4】中国のマスコミの影響力ってどんな?

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中国は、共産党によりマスコミが発信する情報に検閲がかけられており、自由な表現が出来ないと考えている人が多いのではないだろうか。しかし、本当にそうなのか。私の知る限り中国人はそれぞれに様々な意見を持ち合わせており、誰ひとり同じ意見がないのではないかと思うくらい意見のバラエティーに富んでいる。しかも、言論の自由がない国とは思えないほどの自己主張の強さだ。これだけの自己主張の強さと意見の多様性は本当の意味で言論の自由が規制されている国では生まれてこないのではないだろうか。そこで今回は、中国人のマスコミへの接し方や考え方を実際に中国人に聞いてみた。

■検閲は数万人体制!?


-----中国では、マスコミやネットで流される情報に検閲がかけられていますが、実際どのようにしているのですか?

正直なところ、詳しくは知りません。友人等も知らない人が多く正確なことは分からないのですが、話によると検閲は、北京で行われていて数万人の人々が作業していると聞いたことがあります。ただ、あまりそのことに関しての情報は少ないですね。

-----最近では、ネット上ですぐに情報が流れてしまい検閲しきれていないと聞いたことがありますが。

ネット上の情報に関しては、長年ネットを使っているとどんな情報が削除されて、どんな情報がダメなのかが分かるようになります。だから、削除されそうだなと思った情報は、PCのローカルに保存しておいて再度アップしたり、USBメモリで友人に渡したり、削除されにくい形でネットで再アップしたりしています。特に削除されにくいように再アップする方法は本1冊書けるくらい多くのバリエーションがあるし、次から次へと新しい方法が考えだされるのでネット上の情報全てを検閲するなんて事実上不可能なんです。日本でも報道された中国の新幹線事故の時、ウェイボー(中国版Twitter)で共産党の対応の悪さが広まったのは有名ですが、その際にもすぐに検閲で削除されるも再アップされた情報が沢山あります。例えば、事故に関する情報をしないようにテレビ局や新聞局に共産党から書類で通達が来たのですが、それに怒った記者の1人がその書類を撮影してウェイボーに流したものがありました。あのおかけで共産党が情報規制をかけようとしたと海外メディアが知ることが出来たのです。また、アメリカで制作された天安門事件を扱った映画があるのですが、これはもちろん中国では放映は出来ませんし、本来であればネットでも流したくはないものです。でも、殆どの中国人はその映画を見たことがあります。これも削除してはアップされるの繰り返しなのです。やはり、ネット上で検閲をするのは難しいし、中国ですらまともに出来ていません。でも、最近ではウェイボー(中国版Twitter)も実名でないと利用できなくなったりしています。ウェイボーの運営会社は実名制にすることでより質の高いサービスになるって言っていますが、間違いなく共産党の指導があったのだと思います。



■中国人はマスコミの情報を信じてはいない


基本的に、テレビなどでやっている内容は昔から中国にとって良い事ばかりが流れています。しかし、今の時代ネットがあるためにその情報が良いことしか伝えていない事や誇大に表現されていることは中国人の誰もが知っています。だから、中国のテレビを見て、そのまま内容を信じる人なんて誰もいません。高齢者とかは信じる場合もあるかもしれませんが、基本的にマスコミの情報は信用に値しないというのが中国人の一般的な考え方です。例えば、中国の夜7時のニュース番組では、最初の10分間は、今日胡錦濤が何をしたのか、そして非常に頑張っていることを伝える放送が毎日必ずあります。それも、良いことばかりで都合の悪い部分伝えないため、信用に値せず、右から左に受け流す感じです(笑)。これは、あまりにも良い事ばかりを報道してきた共産党のツケです。都合の良いことばかりを報道していては誰でもおかしいなって思いますよ。そんなことをやっているから、だんだんと共産党のチカラが弱くなっているのです。だから、今では中国人の殆どは、外国は言論の自由があるとか色んなことを知ることが出来るようになりました。テレビや新聞は、見ていてもそれらは何らかの着色がされていることを前提に見ています。

あと、日本人は検閲されることが悪いことだと考えている人が多いと思いますが、私としてはそのように思っていません。13億もの自己主張の強い人間たちをある方向に向かわせるためには、ある程度上から押し付けることも必要だと思っています。その押し付けがあったからこそ、変な方向に暴走しないで済んでいると思います。中国にとっては必要なことなのです。事実、検閲はかなり効果があります。共産党の粗探しばかりしている人は別だと思いますが、特に意識せず普通に暮らしている人には、情報が伝わらなかったり、情報が届くのを遅くしたりすることが出来ています。



意外かもしれないが、他の中国人も共産党に対する意見は様々であったが、情報の検閲に対しては、殆どの人が賛成もしくは賛成に近い立場であった。中国の人口の10分の1しかない日本人にはあまり理解できない部分かもしれない。

■日本のマスコミも不正確なのは、同じようなもの


-----日本のマスコミに関してはどう思いますか?だいぶ中国への恐怖感を煽るような報道が多いような気がしますが。

しかし、今の日本のマスコミのビジネスモデルを考えると正確で客観的な報道というのは無理なのではないでしょうか。企業からスポンサー料をもらい経営している以上視聴率・読者を稼がなくてはならないという事です。そのために、恐らくは本来伝えなければならない内容を多少曲げることもあるように感じています。また、視聴率・読者を得るために視聴者・読者が大きく反応するテーマや話題を選んで報道しているように感じます。

例えば、尖閣諸島の問題であるとか、中国人受刑者の脱走事件だとか、台湾人女性の殺害事件であるとか、これら事件が日本の視聴者・読者からの反応を得るための良い道具に使われていると感じています。尖閣諸島の問題は、船が現れると(領海侵犯したわけではないのに)とある某大手ポータルサイトのトップページに掲載されたり、多くのニュース番組で取り上げられたりするわけです。これは日本人の多くが中国に対する恐怖感を持っているという事をマスコミが良く理解しており、その恐怖感をさらに与えることで視聴率・読者を稼ごうとしていることがうかがえるわけです。マスコミとしては、報道することで、大きな反応を得ることが出来るわけですから、これらを報道するに決まっています。



また、別の人のインタビューではこう言っていた。

『以前、反日運動が中国で盛んになっていると日本のマスコミは騒ぎましたが、中国人からすればあんなのはないようなものです。デモは1時間もしないで終わってしまったし、人数も実際はとても少ない。テレビ画面で見ると人のいることろしか映さないけれど、もう少しカメラアングルを変えればガランとしている。友人もあっという間にデモが終わってしまって見ることが出来なかったと言っていました。それにデモの人数なら反共産党デモの人数の方がよっぽど多いです。』

確かに、マスコミというのは視聴者や読者が求めているものを選んで報道する傾向がある。報道すべきことがない場合、視聴者にとって興味のある内容を報道するのは当たり前なのかもしれない。ロシアの航空機や潜水艦が日本領海を侵犯したとしてもあまりニュースにはならない。なぜなら、日本国民の興味や関心はロシアの印象が明確ではないからだ。中国は「これが中国だ!」というイメージがあるのに対して、ロシアはイメージが非常に漠然としてしまっているため、報道しても視聴者・読者としてもどう反応ればよいのか分からない。一方、中国であれば分かりやすい反応を得ることが出来る。

また、これは某経済新聞最大手の表現手法ではあるが、こんな表現の仕方がある。「新興国で売り上げが伸びる」というポジティブな見出しをよく見てみると中国の記事だったりする。一方、「中国」という表記を直接的に使っている場合は「売り上げが減少した」などのネガティブな時に使用されている。これは、そうすることで、記事を読んでくれる人が明らかに増えるからなのだろう。実際、このブログにおいても中国のネガティブな部分にフォーカスを当てると非常にアクセス数が伸びる。アクセス数だけを追い求めるのであれば、中国のネガティブな部分にフォーカスを当てることで簡単にそれが達成されてしまうのだ。しかし、無意味にそして安易に中国への嫌悪感・恐怖感を煽る報道がとても多いというのが正直なところ気になるところである。

もっとも、中国人からは日本のマスコミへの嫌悪感や不信感は感じられなかった。おそらく、報道はそもそもそのようなものというイメージがあるのだと思う。中国のマスコミを知っているからこそ、日本の報道の偏りに関してもそんなものと考えることが出来るのだろう。『報道は参考にするが信じない。どう考えるか、どう行動するのかを決めるのは自分自身』という日本人にはない外国人らしいところはこんなことも原因なのかもしれない。日本のマスコミとしてもそれを前提に報道しているのだろうけど。



■報道に踊らされているのは日本人では?


-----日本人の反応についてはどう思いますか?
日本人の反応は、やはり中国とは違いますよね。日本人自身も分かっているかもしれませんが、報道を本当によく信じているように感じます。これも日本人の特徴だとは思いますが、立場のある人の意見に同調することで安心感を得ることが出来るからではないでしょうか。日本ではマスコミへの信頼度が高いから、マスコミが発信する内容は信じてもよいものであり、マスコミと同じことを言うことで間違えないという安心感があるのだと思います。



我々日本人はマスコミの言うことは信頼に値すると教わってきたようだ。昔から日本人はマスコミを信じるし、信じた結果特に悪いこともなかったのだろう。マスコミで働く人自身もその使命感を持って仕事をしているのだと思う。でも今では、日本のマスコミはより視聴率を求めるようになってきたのではないだろうか。それは価値観が多様化したことで、視聴率を求めた番組制作をせざるを得なくなってきたということもあるかもしれない。本当のことはよく分からない。前からそうだったのかもしれない。でも、今はっきりと分かるのは、マスコミが報道する内容は必ず誰かの色眼鏡を通して見た内容を流しているのであって、決して正確で正しいことではないという事だ。単に日本人が気付くのが遅かったのかもしれないが、そのことを肝に免じる必要がある。だから、これからは自分の意志と目的を持って媒体を選び、自分で考え、自分で行動するようにならなければいけない。

中国の報道官が尖閣諸島に関して言葉を発するとき、日本人の多くはそのことに不快感を抱く。しかし、その時、一般の中国人はそれが全てだとは思っていない。本当のところは分からないし、どう考えるのかは自分自身だと考えている。結局、一番共産党に踊らされているのは日本人なのかもしれない。





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