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【外国人集客のポイント】外国人は絶対に「オレオレ詐欺」には騙されない

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私は外国人人材紹介会社の経営企画部で2年、外国人をアンケートモニターとして提供する会社で代表取締役として3年と外国人関連のマーケティングで約5年の経験がありますが、外国人は本当に日本人とは違うなといつも思ってきました。(違うのは当たり前ですが)

今回はその外国人をどうやって集客してきたのか、どんなポイントがあるのかについて書いてみたいと思います。あくまで日本在住の外国人を集めるときに考えたことなので海外現地でそのまま応用できるのかと言われるとそれは全く保証は出来ません。でも、多かれ少なかれ特徴はつかんでいると思います。なお、東アジア・東南アジアの方々を集客することを想定しています。ヨーロッパ・アメリカに関しては想定していませんのでご了承ください。

今後、外国人関連の仕事をする機会も多くなって来ると思います。その時に何らかのお役に立てれば幸いです。


1)外国の社会を理解する
外国人を集客しようとするとき、それは基本的に日本人とは違う事をまずは理解しなければなりません。
それは、外国と日本との社会の違いです。外国人は日本人以上に広告・宣伝や新聞・テレビのいわゆるマスコミ情報を信用しません。日本人は比較的マスコミへの信頼度が高いために、マスコミが言っていることは基本的に正しいというのが普通の考え方だと思います。しかし、外国人の場合は、マスコミの言っていることは基本的に何らかの目的や誰かの意図があってのことであるという考え方が普通です。つまり、何かの事件があったとしても、その報道内容にはいわゆる政治家や経営者の都合の良い部分しか見せていないと考えるのです。例えば、中国ではその傾向が顕著です。中国新幹線の事故の時には中国版ツイッターの情報の方がはるかに信用度が高いものとして考えられていました。一方、テレビや新聞で報道されていることは明らかに何かを隠そうとする報道に偏っていました。テレビや新聞では証拠隠滅のために新幹線を地中に埋めたことなど当初は絶対に報道されませんでした。それはつまり、強力な力によって報道が歪曲されていることの証明でした。

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そのようなことは、広告でも同じです。企業が公表しているスペックや広告表現は絶対と言っていいほど、信用されていません。最近やっと真面目に企業が公表し始めていますが、しかし、基本的には言っていることは信用出来ないというのが基本です。それは、今までの経験からとても信用出来ないことが多数起こっているからにほかなりません。企業が提供する製品やサービスが公表していることと全く違うという事は外国ではよくあることであり、そんなことにいちいち怒っている外国人はいないのです。それが日常だからです。

 

2)外国人の考え方を理解する
このようにマスコミ報道や広告などに対する不信感が中国を始めとする特にアセアンにおいては普通のことであるという事をまずは認識しなければなりません。じゃあ、どうやって外国人は製品やサービスの良し悪しを決めているのか?という事になります。日本人であれば、企業が言っていることを比較してどの製品・サービスがいいのか決めることでしょう。しかし、外国の場合はそんなことをやっても何の意味もありません。言っていることは信用出来ないからです。だから、外国人は製品・サービスの良し悪しを殆どの場合「口コミ」で決めているのです。友人・知人・家族からの話によって決めているのです。というよりそれ以外にないと言ってもいいかもしれません。日本でも口コミは強力な製品・サービスの良し悪しを決める一つの方法ですが、外国ではこの方法が唯一と言ってもいいほどの手段なのです。それはそのはずです。世の中に氾濫している情報は殆どが信用出来ないと考えているからです。そのため、外国人にどうやって口コミを発生させるかが重要な課題となってくるわけです。

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※中国や東南アジアで最も成功している外資系企業は「アムウェイ」だと言われています。中国においてアムウェイは認知度80%以上であり、信用度も高い企業として知られているくらいなのです。これはアムウェイのやり方が中国や東南アジアでの考え方や現状にマッチしていること以外のなにものでもないと思っています。日本ではこのようなやり方は胡散臭く誰もが敬遠するようなやり方ですが、外国ではこのやり方が信用に値するやり方なのです。

3)外国の文化を理解する
このように外国人が置かれている状況や考え方は基本的に日本人とは異なります。しかし、さらに違う事があります。それは日本のように文字文化ではないという事です。仕事をしていても日本ではメールで済ませたり、大事なことはメールで送っておくという事をします。しかし、外国では違います。外国は基本的に会話でコミュニケーションするのが当たり前でメールで済ませることは基本的にしませんし、メールでのやり取りはコミュニケーションしたうちに入らないと考える人もいるくらいです。外国人モニターを扱っていると面白いことがよくあります。外国人モニターにメールで諸条件(謝礼・実施場所・時間等)を記載して送信するとすぐに電話がかかってくるのです。その内容は、このモニター調査の謝礼はいくらか?実施場所はどこか?時間はどのくらいか?という質問の電話です。全てがメールに記載されたものをわざわざ電話で聞いてくるのです。私から逆に全てメールに書いてあることを言うと、「あ、そうなんですか?」とか「メールは見ませんので、電話して下さい!」とか言われたりすることがよくありました。何のためのメールなんだ?と思いたくもありますが、しかし、それが外国人の日常なのです。直接の会話がコミュニケーションであり、知らない人同士のメール交換はコミュニケーションしたことにはならないと思った方がいいのです。

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日本人とビジネスをするときも同じですが、一度も会ったこともない人とビジネスをするなんて絶対にありえない事です。特に外国人は会って会話することで相手を見極めます。それは会話でありそれ以外の方法はあり得ないのは普通のことです。そして、すぐにビジネスをしたりもしません。何度も何度も会って話して時間をかけてその人がどれだけ信用に値する人間なのかを見極めていくのです。だから、海外では仕事が進まないことが沢山あります。しかし、それは当たり前と言えば当たり前なことなのです。日本では会ったこともない人でも、ある程度までは信用するものです。最たる例が「オレオレ詐欺」です。電話だけで人をあんなにまで信用する民族は日本以外には絶対にありえないことです。外国人であれば、絶対に信用しません。家族と言えども会って話さないなんてあり得ないのです。ある意味、日本が本当に平和な国であるという事でもあるのですが。


ともあれ、外国人集客をする際にまずは押さえておかなければならないポイントは基本的には以上となります。基本的にはというのは、国籍によって多少なりとも違うからです。その点は書ききれないので今回は書きませんのでご了承ください。しかし、このポイントは殆どの国籍の人に程度の差こそあれ当てはまることであると思っています。


■じゃ、どうやって集客するのか?
さて、それでは本題です。このような状況を踏まえてどうやって外国人を集客するのか。それはもうお分かりだと思います。それは口コミです。それ以外にはあり得ません。どんなに広告を出しても多くの効果は期待できないでしょう。至る所に広告を出して、話題にならないはずがないという程、出稿量を多くするなら話は別ですが、そこまで広告を出す余裕があるところは世界中探してもどこにもありません。日本でそんなことをする意味はありません。ただ、海外現地ではそのようにして伸びている企業は沢山あります。日本では考えられないような広告出稿を行う企業は山ほどあり、そうやって信用を得る手法ももちろんあるというわけです。しかし、今回はそんなことは出来ないということを前提に書いているのであしからず。

1)直接会う機会をどれだけ多く作れるか
これまで書いてきたように外国人は基本的に広告を信用しません。だから、広告を出してもムダと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。しかし、広告でどんなに会社の良い所とかメリットを書いても効果はありません。それよりも、実際に会う機会を広告で告知してあげるのです。外国人の反応は、広告などで興味を喚起される部分は日本人と同じだと思います。しかし、その後が日本人とは違うと思っています。つまり、外国人の場合、アンケートやグループインタビューに参加してお金がもらえるのであればそれはとてもあり難いことだと感じます。しかし、本当に謝礼をもらえるのか?という不信感がまずは最初に沸き起こるのです。そして、私の会社が本当に信用出来る会社なのかどうかを調べることを開始します。その方法は、もちろん友人・知人・家族に聞くことですが、殆どの場合は初めて私の会社を知ることになるので友人・知人には聞くことが出来ません。このような場合、外国人は殆どそれ以上の行為はしません。ネットで調べて私の会社が信用出来ると書いてあっても知らない人の言葉は信用することはあまりありません。しかし、それでは当社としては困ってしまいます。だから、私は広告を見た人に私の会社が信用に値する会社なのか確認してもらうための機会を作ったのです。それは、外国人人材紹介会社の場合であれば、「交流会の開催」であったり、「履歴書の書き方セミナー」であったり「面接対策セミナー」の開催です。このような機会があることを同時にお知らせすることで、私の会社が信用に値する会社なのかを調べて下さいと言ったのです。

(もちろん、そんな直接的に言ったわけではありません。そのような機会を提示すれば外国人は「その機会を利用して信用出来るかどうか確認できる」と考えるだろうと思ったのです。)

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つまり、実際に会う事が出来れば上記でも説明したように会話が出来ます。それはつまりコミュニケーションを取ることが出来るということであり、当社としては信用を得るための最大のチャンスになるわけです。当社としてはここが最大のポイントでした。ここでどれだけ私の会社を信用してもらえるかが、どれだけ集客できるかの分かれ道になったのです。先程も言ったように、外国人は会話をして本当に信用できるのかどうかを確認します。その機会を作り出したのです。

 

 

2)どのようにして信頼してもらうか?

そして、最大のポイントである交流会です。交流会の目的は信頼を得る事です。では、どうやって信頼を得るのか。それは特別なことはないと私は思います。当然のように世間話から自分たちのプライベートなことまで話すことです。それがまずなければ何にも進みません。そして、その上でそれが基礎となり、私たちが外国人の皆さんの就職活動についてどう考えているのか、どんなことが出来るのかを親身になって説明するしかないと思っています。特別なことをやればやるほど日本人もそうですが信頼を失うものです。そして、信頼を得るためには時間がかかるのです。その時間を惜しんでいては何も手に入らないと私は強く思います。

だから、何度も何度も交流会を開き、様々なセミナーを開きました。そうすることで何度も会社に訪れてもらって会社スタッフと話してもらうことを繰り返したのです。そして、その結果、信頼を得ることに成功すればそれは日本人以上の口コミの広がりが期待出来るのです。

1人でも信頼を得ることが出来れば、その人の周りにいる何十人もの人たちに対する強力な口コミが発生するのです。実際、多くの方を紹介してもらい、それらの方々が多くの実績となりました。この広がりは日本人ではあり得ないと私は思っています。それだけ外国人同士の横のつながりは日本人が想像出来ない程、強力で広いものであると実感しました。特に中国では人脈がなければ何もできないと言われる程です。人脈があるのかないのかによってどんな生活になるのか、どんな人生になるのかが決まってしまうほどです。ビジネスでもそうです。どんな人脈を持っているかどうかで会社が大きくなるのか潰れるのかが決まってくるのです。

余談ですが、中国や東南アジアの人々は「努力は報われるものとは考えていません」それは日本人でもある程度はそうでしょうが、中国や東南アジアの人々が思っている不公平感は日本人の持っているそれとは比べ物になりません。日本は比較的努力は報われる社会ですが、中国や東南アジアはそうではありません。その理由は、人脈がなければ何もできないからです。日本では人脈がなくてもある程度は勝負することは出来ます。本人の努力である程度まではいけます。しかし、中国や東南アジアでは、人脈を持っている人はどんどん成長していき、人脈を持っていない人間は何十年もかけて人脈を構築していくことが必要とされてしまい、いつになっても成長は出来ないのです。それを多くの人が知っているからこそ彼らは努力は報われるものではないと考えているのです。

日本でもその傾向はあります。私も一人で会社を立ち上げビジネスをしていると、本当に必要なのは信頼であると強く感じています。製品やサービスの良し悪しはもちろんですが、製品・サービスの良し悪しだけで大きな違いを生み出すことは殆どの場合出来ません。お客様がどうして当社を選んでくれるのかの最も大きな理由は信頼であると非常に強く感じています。しかし、外国人は私が思っている以上に信頼や人脈が大切であることを身をもって感じているのだと思います。というよりも、そんなことは当たり前だと言われてしまうでしょう。

これらの施策の結果として、数千人の登録者を集めることが出来ました。しかし、最も成果として大きかったのは、彼ら登録者が数万人の外国人相手に商売をしている会社を紹介してくれて、その会社とアライアンスを組めたことです。これにより、今までとは比べ物にならない人数にアプローチすることが出来るようになったのです。

外国人との仕事や外国人関連の仕事は本当に近道はありません。非常に昔ながらのやり方が最も効率的で効果的なのです。広告を出しても信用は得られません。実際に会ってみて確認するのが外国人の特徴なのです。そのような信用の獲得の仕方は現代の日本人にとっては苦しいと感じる人が多いかもしれません。それは高度に発達した社会だからこそなのかもしれませんが、私はこのような考え方はビジネスの本質であり、大切にしなければならないことだと思っています。また、海外進出する企業はこの点について悩んでいるところが多いように感じます。海外進出は本当に地味で時間がかかる。なぜなら、私たちは日本人という最も重要な人脈をもっていない外国人だからです。

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