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【TPPを考える】-そう簡単に輸出が増えるわけじゃない

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最近ニュースを賑わせているTPP問題。確かに、日本にとって大きな転換点になると思う。しかし、日本企業のメリットとなると言われている輸出産業に関して、そう簡単に事は運ばないと個人的には考えている。既に海外に何十年も前から進出し、大きな利益を出している企業にとっては魅力だろうが、それ以外の企業、特にアジアを市場として考えている消費財メーカー等にとっては本気度と能力を試されるものとなると考えている。今回は、海外で成功している企業の1つである資生堂の例を見ながら海外進出の大変さについて書きたいと思う。

先日、花王が19年かけてやっと黒字化したというニュースがあり、これを日本では苦節の19年間と表現したが、実際はそういうわけでもない。決して、やる気がなかったわけではなくつまりは、中国でもしくは海外で成功するのはそれだけかかってもおかしくはないということだ。同じ日本の化粧品会社である資生堂もすでに中国では30年間ビジネスをしており、今でさえ化粧品シェア4位を獲得し認知度も高くなっているが最初からこんな状態であったわけではない。他の大手外資系化粧品会社もすでに中国に進出して20年に達しようとしているし、多くの会社が当初は利益の出ない状態であったのである。

■異なる商習慣・消費者の考え方
当初、資生堂が販売した「オプレ」は全く売れず台湾資生堂のチカラを借りながらやっと売上を伸ばすようになった。しかし、手助けしてもらえれば大丈夫なんだなんて簡単なものでもなく、その裏には非常に地道な活動を長期間に渡り行ってきたことで編み出した独自手法の確立がある。

中国でモノを売る場合、売る人は腐るほどいる。そのため、売ること自体はそんなに難しいことではない。しかし、問題が2つある。一つは代金の回収であり、横流し等の問題だ。そして、もう一つはブランドの問題。代金を回収できずに撤退する企業というのは以外と多い。本当に信頼できる人間に任せる必要があり、そのため、人間関係構築のためのコミュニケーションは絶対に欠かせない。また、中国人は見ず知らずのブランドを買う傾向があまりない。ご存知の通り、偽物が中国では氾濫しており、ちゃんとした店で信頼できるブランド品を購入する。中国人が偽物ばかりを買っているわけではない。また、日本製だからといって無条件に良いものとは思わない。そもそも、本当に日本製なのか?と疑ったりもする。地道な努力が必要なのだ。

■独自手法の確立
資生堂は、当初から中国全土に5000店舗作り上げるとし様々な活動を行ってきた。まず、商品を販売してもらうオーナーを募集すると応募が殺到するのだが、契約するのは10社に1社程度なのだ。資生堂の理念や経営方針を理解し、共鳴してくれそうな経営者だけをピックアップする。そして彼らには資生堂オリジナルのスタイリッシュなディスプレイとセットで商品を前金で買い取ってもらう。そして、ここから違うところで資生堂は、各店舗に売れるための経営指導を行っている。高額の前金を払って「売れない」となったら大変だし、資生堂のブランドを消費者に認識してもらうために日本人社員自ら足を運んで、経営哲学・経理・人事マネジメント・日本流の笑顔で対応するなどの販売方法などを指導する。これらは日本人社員が中国に滞在し様々な試行錯誤の中から構築したシステムだ。他にも中国の物価に合わせた商品開発もしなければならないなど、様々な努力があってこその成功なのだ。一方、失敗する日本企業は、金で中国人社員を動かそうとし、任せっぱなしにして当の日本人は日本にいることが多いのです。

■海外進出には、決意と情熱が必須条件
海外進出で成功している多くの企業が、現地の状況に合わせて新しいビジネスモデルなり何らかの新しいことを1から開発していることが多い。それは、日本での成功モデルや考え方が中国では通用しないことの方が多いからに他ならない。文化が違う、考え方が違う状況では意外なところで問題となることがあるのです。

それらの問題に対して、中国人任せでは大きな成功は見込めません。自社製品に対する思いや熱意、中国人を知ろうとする努力。これらなくして海外での成功は考えられません。考え続け、試行錯誤を続け、地道に活動していかなければ、中国に限らず海外では大きな成功は得られないのです。

■TPP参加は、企業の情熱と能力が試される機会
TPPは、確かに海外でのビジネスを行うには有利です。しかし、「関税撤廃」=「売れる」というわけではないということがお分かり頂けるのではないでしょうか。これは、日本企業だけでなく日本に進出する海外企業にも当てはまります。日本がどんなに魅力的な市場でも、日本人にとって魅力的な商品でなければ売れるはずがありません。このTPPは、企業の情熱と能力が試される機会だと私は思っています。いつの時代も国が変わってもビジネスの基本は何ら変わるものではないのです。その国の人をよく知り、そのための体制づくりや考え方を変えていかなければならないのです。TPPは海外輸出産業にとっては有利ではありますが、だからと言って必ずもうかるものではありません。特にこれから海外進出しようとする企業にとっては情熱と能力がなければ難しいことは何ら変わらないのです。

■でも、中国はTPPに参加していない
TPPには中国が参加していません。今後は参加する可能性があるにしても、もし中国抜きで実施されるとしたらニュースで言われているような成長は本当に期待出来るのでしょうか。成長があっても一部なのではないかと考えてしまいます。ま、その一部の産業のすそ野が広ければ成長するという考えなのかもしれませんが。。。また、中国が参加するにしても無条件で参加するとも思えません。

【TPP締結済の国】
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド
【TPP参加表明国】
アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシア、コロンビア、日本、カナダ、メキシコ

冷静にTPPについて考える必要があるような気がしています。





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