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ミラクルジャンプ

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 前回のエントリで書いた中国Linux事情だが、いつもディープな情報をさらりとメールで送ってきてくれるミスターX(都合により仮名)などから聞く限り、どうも合併というところまで具体的な話は進んでいないようだ。それでも今後十分に「合併」ということはあり得る話である。同じ北京系の企業であるRed FlagとCo-createがくっつくのは障壁も少なそうだし、Turbolinux Chinaについてもターボリナックスの出資比率は49%、中国企業であるHuadi Computerが51%持っているということから考えてもそれほど大きな問題は生じないかもしれない。

 中国でこの3社が合併したとなると、どう考えても中国最強のディストリビューターになるわけだが、Turbolinux Chinaが加わるとなると、薄まるとはいえ新会社にもターボリナックスの出資が残る形となる。政治的な部分を考慮すると合併後の会社が外資の出資を受けることは考えにくいが、ターボリナックスはすんなりとそれをクリアできることになる。現在、ターボリナックスはTurbolinux Chinaに対してディストリビューションを提供して数千万のロイヤリティーを受け取る立場だが、これを逆に統一中国ディストリビューションの提供をターボリナックスが受けるということになると、キャッシュの流れはターボリナックスには不利になるとはいえ、ミラクル・リナックスからAsianuxの称号を奪い取って、かなり筋の良いキーワードである「Asianux2」(もちろん仮称)を生み出すことができる。こうなるとAsianuxとか言ってるミラクル・リナックスの立場はない。

 さて、ここでミラクル・リナックスの企業概要を見ると、その出資比率は次のようになっている。

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 日本オラクル 58.5%
 NEC 14.0%
 サンブリッジ 4.0%
 オービックビジネスコンサルタント 3.0%
 大塚商会 2.0%
 その他 18.5%

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 次にこちらを見てほしい。こちらはミラクル・リナックス設立時のリリースだが、なかなか興味深いことに気がつくはずだ。当時ターボリナックスがNECと同様に14%の出資を行っていることが分かる。他の出資企業(とその割合)は設立当時とほぼ変わっていないようなので、「その他」はターボリナックスの可能性が高い。

 では、この14%は誰が現在持っているのだろうか。 後に米ターボリナックスの「Turbolinux」ロゴ、トレードマーク、会社名を含めた商標権と、Linux事業およびその運営に関わる知的所有権、米ターボリナックスが保有するターボリナックスジャパンの株式100%を取得したSRAだろうか、それとも株式交換でSRAからターボリナックスを手に入れたライブドアだろうか。もちろん可能性としては米ターボリナックスが破綻した際に流出したかもしれないし、可能性はかなり低いとはいえ買い戻しを行っているかもしれない。いずれにせよ、この14%がどのようになっているのかが1つのポイントとなる。

 仮にターボリナックスが現在でもこの14%を持っているとするとしよう。同社は今月IPOを予定しているが、その時価総額は80億円程度になると思われる。もしターボリナックスが「その気」になれば、IPOで得た財と14%を元手に日本オラクルから株式交換あたりでミラクル・リナックス株を買い取って吸収することも不可能ではない。Oracleとしてもミラクル・リナックスへの出資企業としても、認定の手間やその市場性を考えると、それほど大きな反発はないように思える。

 さらに言えば、ミラクル・リナックスに出資しているサンブリッジはベンチャーキャピタルである。時期的にはそろそろEXITを考えないとならないと勝手に考えるなら、IPO or 買収というメジャーなEXITの方法のどちらかを選択したいと考えているかもしれない。もし中国での話がTurbolinux Chinaも交えたものとなるなら、最強の新Asianixを演出し得るターボリナックスのIPO後に合併を発表することでそれに伴って発生するネガティブなイメージは最小限に押さえられるだろう。

 自分はすっかり忘れていたが、ターボリナックスのCEOである矢野広一氏は、ミラクル・リナックスの代表取締役社長を務めた時期もある。そういう意味では日本オラクルとサンブリッジにも当然コネクションはあるはずだ。IPO後、株価に対するライブドアからの圧力に応えるために、ミラクル・リナックスを吸収する、というオプションを考えているかもしれない。故に、今回報道されている中国動向を抜きに考えてもこれはあり得る話ではないかと思う。このあたり、同氏がブログを続けていればトラックバックを張ってレスポンスを期待したいところだが、残念ながら同氏はすでにブログをいったん休止しているため、ぜひアポイントを取ってお話を聞こうと思う。

 いずれにせよ、中国での合併話が現実となれば、マーケティング合戦と政治闘争が渦を巻く非常に香ばしいことになりそうだ。

 でもこうした一連の報道、実はライブドアがターボリナックスのIPO前に仕掛けた壮大な「釣り」だとしたら……。「中国」というキーワードは効きそうだしね……。

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