ドラえもんの闘病記を読んだら「のび太の恐竜」より泣けた(5年くらい前の本です)
Kindleでラーメン一杯より安い値段で売っているドラえもんの元声優「大山のぶ代」の闘病記を読んだ。539円。蒙古タンメン中本より人生への衝撃度は大きい一冊だった。
アメトークでドラえもん芸人の特集をやっていて、「そういえば、大山のぶ代の認知症の闘病記って有名だったけど、読んでなかったなぁ」と思って読んだらすごかった。すごすぎて一気に読んだ。生々しい。
大山のぶ代の夫が書いた半生と闘病記である。
結婚、流産、子供の死、夫婦生活、不倫、1日2箱ヘビースモーカー、大腸がん、心筋梗塞、脳梗塞、前頭葉出血、リハビリ、認知症、床に飛び散る糞便、突然の黒柳徹子、老老介護、などなど、はとばしるパワーワード。ドラえもんの世界から2億光年ほど程遠い世界観である。あのドラえもんの晩年がこんなものなのか、目頭が熱くなる。
ゲーム好きなら、ご存知のように、ダンガンロンパシリーズに大山のぶ代が出ていたんだが、あのときすでに闘病中だったらしい。いやまじですごい。
晩年の大山のぶ代は、もう自分がドラえもんであったことも覚えておらず、記憶を5分も保てない、風呂もトイレすらままならず床に糞便を落とす。目黒の豪邸で終わり無い介護が続く夫、国民的アニメである「ドラえもん」を介護するプレッシャーの辛さが描かれる。
ソフトカバー版と文庫本版があるが、ぜひとも安いほうの文庫本版のキンドルで読んでほしい。539円だ。
ソフトカバー本のときは、まだ希望があり「認知症の妻とともに、これからも生きていこう」という感じでいい感じにシメている。しかし、文庫本はその後、約2年後に起こった状況と心境の変化が力ない言葉で綴られている。進む認知症、悪化する筆者の体調。その行間にあふれる「認知症介護の報われなさと諦め」と「老老介護の限界」と「俺の人生なんなんだ的恨み節」が見えてくる。
御存知の通り、最後は大山のぶ代を残して、夫がガンで先にこの世を去ってしまう。一方で、施設に入った大山のぶ代は認知症は進行するが夫がいないほうが体調がどんどんよくなっていく上に、夫の存在をだんだん忘れていく。
こわい。すごい。これが現実だ。「タケコプター」も「もしもボックス」も「どこでもドア」も現実にはない。いつも目の前にあるのは残酷な現実だ。
胸が痛い。「のび太の恐竜」よりもつらい。ジャイアンもスネ夫も敵ではない。本当に敵は病と老化だ。これが現実だ。生々しい現実が数多く叩きつけられた一冊だ。