【書評】ズレずに生き抜く 山本一郎著
要するに山本一郎氏の本です。内容は「『多動力』とか『お金2.0』とか『僕たちはもう働かなくていい』みたいなファンタジービジネスポルノを逆方向にダッシュでグーパンチした本」と 思ってます。生々しい現実しか書いてません。文芸春秋オンラインの連載をベースに書かれた本ですが、けっこう加筆・修正をしており、現代社会の、オッサンの悲哀とか、 仕事のベンチャー業界の闇とか、高齢化社会とか、結婚とか、育児とか、人工知能とか、VTuberになっても人は何物にもなれない的な悲哀とかのコラムです。 さすが文春オンラインで毎度、ランキング1位をとるだけあって、世間的に流行に乗ったネタで、異様な執筆速度で、いろいろ書いててすごいなーと思います。
ただ、文春側の帯の語句や装丁に疑問が残ります。「時代と自分のズレを認識し、希望に変えるための必読書」という帯も誰が考えたんだろう。山本一郎のコラムを読んで、「なるほど現実は厳しいな」「そういう裏があったのか」と思う人が普通で、「希望」を感じる人間は、よほど日本語が読めないんじゃないだろうか。あんまり帯と中身があってないので気にはなりました。この帯を書いた人は本当に中身を読んでいるのか? 「励まされた」「自己改革」とかどうしたらこういう帯が書けるのか?そもそも、文春の記事で励まされる人類がいるのか?こんな帯を書くくらいなら流行りに乗って「売れなかったら編集者辞めます」のほうがいいのかもしれない。むしろ、この帯にいちいち突っ込みをいれて、景表法違反に抵触しないか議論するのも一考かもしれない。
あと、あとがきをよんで、この本が、「老父を施設に送り迎えする車いすを押しながら」フリック入力と音声入力で書かれたことをカミングアウトされてて、 びっくりしました。あの異様な執筆速度が全部スマートフォンで、文春レベルの原稿料がもらえるのかと思うとスゴイ時代だと思う。 ふしぶしに、介護と育児に追われる山本家のプライベートが垣間見えてたいへんそうでした。いろいろ大変なんだろうけど、介護や育児の問題はだれにでもある問題なので、 21世紀になっても人生は厳しいなと思わせる一冊です。
「好きなことで生きていく」とか「お金2.0」とか、なんてなかったんやと考えさせてくれます。