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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

ガレの伝統主義と異国趣味

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 2010年4月17日から目黒区美術館にて「エミール・ガレの生きた時代-近代生活のエレガンス」が開催されている(5月いっぱいまで)。少し前にブロガー向け内覧会があるというので応募してみたら、運よく当選。エミール・ガレ(1846-1904)の大ファンというわけではないが「写真撮影可能」というところにひかれた。

ガレ展内覧会 美術館で写真撮影はそうそうできるものではない。ニューヨークMoMAなど海外では写真撮影を許可している美術館も珍しくないが、日本だと「写真撮影禁止」がまだまだ多い。写真撮影を禁止するケースの理由としては、著作権の侵害防止、作品の保護(フラッシュの光で傷める場合がある)、鑑賞者への迷惑防止(会場が混乱する)などが挙げられる。今回目黒区美術館が写真撮影を許可した理由を訊くと学芸員さんは「ブロガー向け内覧会なのに撮影を禁止しては意味がないので」と話してくれた。著作権や作品保護の観点からも問題ないからだろう。なお写真撮影は一般の展示終了後、ブロガーのみに許可された。そもそもブロガー向け内覧会自体も広報宣伝活動として初めての試みだそうだ。会場に集まったブロガーさんたちは世代もまちまち、カメラも一眼からケータイまでまちまち、それぞれの視点で感想と写真を公開することになりそう。アートにはど素人な筆者ではあるが、せんえつながら勝手に興味をもったところを紹介させていただく。

ガレ作品とその時代の作品とその時代の人 ガレというとガラスや陶芸などアールヌーヴォーを代表する作家だが、今回の展示では彼の作品だけではなく彼の作品に影響を与えた作品や、彼が生きた当時の作品も一緒に展示してある。ガレ作品の特徴には歴史主義と異国趣味があるそうだ。前者は幼少期に目にしていたネオロココ様式の家具や絵画など、後者はジャポニズムである。例えば森の中にいる人物を描いたタペストリー(19世紀)と、森で狩りをする人物がモチーフになっているガラス作品を見比べてみると影響を受けているのがわかる。右の写真は、手前に並んだガラスが主にガレ作品で(右端のみ違う)、その向こうにガレが生きた時代の家具が並べてある。

ロココお姉さん 会場にはロココ風のドレスを身にまとった女性がいて異彩を放っていた。特別ゲストだそうだ。なぜそこにいるのか最初全く分からず、「ガレとどういうゆかりが?」という意図で「どちらからいらしたんですか?」と訊いてみたら、ロココお姉さんは普通に「埼玉です」と答えたので笑った。私は「ガレの育ったナンシー地方から来ました。ガレの妻でございます」とか、そういう答えがくるものかと思ったのだが(笑)。お姉さんは普段は衣装を作る人だそうだ。スカートの幅は背後に展示してあるテーブルよりも広く存在感がある。見た目重そうな服だが意外と軽いらしい。それよりも重いのはカツラ、いや、髪型だそうだ。頭や胸元にはアザミが飾ってある。手元にはきれいな指輪もたくさんはめており、優雅な感じだ。彼女はもしかしたら埼玉の南市(ナンシ)あたりから来たのかもしれない(もちろんそんな市はない)。

ネコ足■勝手に見どころポイント1:家具の足

 家具を見るときは足フェチになろう。足の部分がたいてい曲線を描いている。ネコ科系の動物っぽい。これで肉球があれば最高。え?見えないだろうって。そうかも。家具の足がこうなっているのはこの時代の特徴だそうだ。

■勝手に見どころポイント2:ジャポニズム

北斎カエルを描いたガラス作品  この時代の芸術家らしく、ガレはけっこう日本が好きだったみたいだ。日本の浮世絵から家具など相当数の作品を見たらしい。ガラス製のコップに北斎漫画そっくりのカエルが描かれていたりする。ガレが今生きていたら日本アニメのコスプレしたり、作品にハルヒやミクを模したキャラとか描いていたかもしれないね。日本家屋にありそうな木製の家具も実はガレの作品だったりする。植物を描いた柄にも注目。そういえばアールヌーヴォーといえば植物。日本の植物とアールヌーヴォーの植物の関係に思いを巡らせてみるのも面白い。

 あと展示の目玉となっているのが「アルプスのアザミ」というガラス製の瓶。鏡で背面も見られるようになっているので、よく見てみよう。

ランプ  ガレはガラスに形をつけたり、模様をつけたガラスを一部溶かして貼り付けたり、いろんな技術を考案して特許も取ったそうだ。芸術家でもあり、技術者でもあったらしい。ただ残念なのはもう少し長生きしてもらいたかったこと。ガレ作品はランプもあるのだが、電球や電気が普及したのは彼の晩年。もう少し長生きしていれば、あるいは技術がもう少し早かったらもっとすてきなランプを世に出せていたかもしれない。

 またこういうイベントがあったら出かけてみたい。最後に写真を撮らせてくれて図録までくれた目黒美術館に感謝いたします!

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