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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

説明は読もう。聞くのはほどほどに

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 森美術館で開催している「万華鏡の視覚」を観に行った。最も印象的だったのは、ジャネット・カーディフの「To Touch(触ること)」。

 その展示のある部屋の入口には「机に手を触れることで音が出ます。体験してみてください」といった内容の案内があった。それから「壁にある突起物に注意」とも。よし、この作品は鑑賞者が触ることに意味があるのだなと理解して部屋に入ってみた。

 暗い部屋の中心には使い古された木製の机が配置されており、ぼんやりとライトが当たっていた。周囲の壁にはスピーカーがあり、鑑賞者がうっかり衝突しないような細工がしてあった。すでに部屋には何人かいたが、ただじっと机を見つめていた。手前の案内を読んでいなかったのか、遠慮してなのかは分からない。

 でもこれ、触らないとね。とはいえ普段「作品にはお手を触れないでください」というのを見慣れていると、ちょっと勇気が要る。まずは机の上に手をかざしてみた。机の上にセンサーかカメラか何かがあるのだろうかと上を見ながら。すると周囲から何か聞こえてくる。鑑賞者の手が机に触ることで音が出る仕掛けになっている。

 古びた机。手がそれに触れることで周囲に声や物音が響き、何かの記憶が呼び覚まされるかのような感覚。ゆっくり触ってみたり、素早く手を振ってみたり、あっちの端を触ってみたり、そのたびに違う音が聞こえてくる。ささやきだったり、騒がしかったり、日常的な物音だったり。どこかで聞いたような、聞いていないような。

万華鏡の中にカメラ  そんな不思議な体験の後にダンスのレッスンに。先生は曲ではなく、朗読やノイズのようなものを使うこともあり、その日も何かの声だった。英語で男性が話し始める。"We hear next, concert for two pianos and..."と、これから始まるであろうコンサートについて淡々と説明するもので、背後にオルガンの音がかすかに聞こえる。ううっ。今の自分にとってこの説明は聞く必要はなく、踊りに専念しなくてはならないのに、職業柄か性格か、はたまた美術館で声に耳を澄ませていたせいか、その声に意識が向いてしまう。な、なんてキャパシティのない私(笑)。

 あ、そういえばすっかり出遅れてしまったが、オルタナティブブログ4周年、おめでとうございます~

 追記:写真を変更。今回の森美術館ではなく、MoMAにあった万華鏡のようなオブジェ。中央にこれを撮影したカメラと私の手が写っている。

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